
第148回
京の雲龍図(うんりゅうず)

第148回
京の雲龍図(うんりゅうず)

建仁寺 双龍図
京阪的京都ツウのススメ
第148回 京の雲龍図(うんりゅうず)
雲龍図と寺院で見られる様々な龍
禅宗寺院でよく見られる雲龍図。なぜ、龍が描かれるのでしょう。らくたびの谷口真由美さんが、その意味を解説します。
京の雲龍図の基礎知識
其の一、
禅宗寺院の法堂(はっとう)などで見られる大きな龍の絵を雲龍図と言います
其の二、
龍は、仏の教えを守る八神のうちの一神とされています
其の三、
京都では近世以降のものを中心に、著名な絵師の雲龍図が見られます
僧侶たちの修行を見守る仏法の守護神
お寺を訪れると、厳(いか)めしい表情の大きな龍の絵に出会うことがあります。これは雲龍図と呼ばれ、多くは禅宗寺院の法堂の天井に描かれています。法堂とは、修行僧が仏法の教えを学ぶための場所。龍は仏教を守護する異教 8種の神・八部衆の一神に数えられ、法の雨(仏教の教え)を降らせると言われています。この龍に修行の場を見守ってくれるようにとの願いから、法堂の天井に描かれているのです。また、龍神は水をつかさどることから、寺院を火災から守るとも伝えられています。
著名な絵師の大作が見られる京都
龍は想像上の生きもの。世界各地に龍の伝説があります。最も古い龍の伝説がある国のひとつ・古代中国では、龍の背には81枚のウロコがあり、頭頂部に飛ぶための突起があるなどの特徴が伝えられています。禅宗各宗派の本山がある京都では、名だたる絵師による雲龍図を見ることができます。絵師たちはどのような龍を描いたのでしょう。そのいくつかをご紹介します。
京都で出会える雲龍図
雲龍図は禅寺の中でも特に臨済宗の寺院に多く見られます。
臨済宗東福寺派本山東福寺 蒼龍図(そうりゅうず)

12/13(月)まで特別公開中
1934(昭和9)年、近代日本画の大家・堂本印象が描きました。鋭くとがった角と細かく描かれたウロコが見る人の目を引きつけます。昭和の木造建築としては最大を誇る法堂の天井一面に描かれた大きな龍は、わずか17日で仕上げられたと言われています。
通常、法堂には入れませんが、現在は「京都非公開文化財特別公開」で拝観が可能。蒼龍図制作に使われた大きな筆も見ることができます
臨済宗建仁寺派本山建仁寺 双龍図

通常公開
2002(平成14)年、開創800年を記念して奉納されました。筆を取ったのは日本画家・小泉淳作で、108畳の天井いっぱいに阿吽(あうん)の龍が描かれています。法堂が建立されたのは1765(明和2)年。200年を超える新旧のコラボレーションが見事です。
建仁寺には、法堂だけでなく方丈の襖にも雲龍図(複製)があります。安土桃山時代から江戸時代にかけて活躍した絵師・海北友松(かいほうゆうしょう)の作品です
臨済宗妙心寺派本山妙心寺 雲龍図

通常公開
1656(明暦2)年、狩野派の絵師・狩野探幽がおよそ8年の歳月をかけて描き上げたと伝えられます。直径約12mの大きな円の中に描かれた龍は、どこ位置から見ても目が合うことから、別名「八方睨(にら)みの龍」とも呼ばれています。
江戸時代に刊行された『都林泉名所図会』によれば、妙心寺の雲龍図の制作途中、目を描き込もうとした途端、雷雲が立ち込め、嵐が起こったそうです
寺院に隠された様々な龍
仏法を守護する龍は、雲龍図だけでなく、様々なもののモチーフに使われています。
萬福寺

伽藍
本堂の蛇腹(じゃばら)天井など、伽藍のあちこちに龍をモチーフにしたものが見られます。正方形の平石を角同士付き合わせて並べ、左右を石條(せきじょう)で挟んだ参道は龍の背をイメージしています。
永観堂

上り廊下
開山堂へとつながる上り廊下・臥龍廊(がりゅうろう)は龍がモチーフ。山肌に龍が体をうねらせているような曲線美は、木を巧みに組み合わせて作られています。
※11/7(土)~12/6(日)は通行不可
高台寺

上り廊下
臥龍廊(がりょうろう)と呼ばれます。せり上がる屋根瓦がまるで龍のウロコのよう。龍が水神とされていることから、廊下の下にある池は臥龍池(がりょうち)と言います。
※臥龍廊は現在通行不可

龍の特長と逆鱗(げきりん)
想像上の存在である龍とは、どんな生きものなのでしょう。住処は主に、水や土の中で、鳴き声で雷や嵐を起こし、竜巻となって自在に飛翔することができるとされます。口元には長いヒゲ、頭頂部には博山(はくさん)と呼ばれる山状の突起があり、これによって自由に飛ぶことができるのだと言います。中国の戦国時代の思想書によれば、体のウロコの数は81枚で、そのうち1枚が逆さまに付いているそう。1尺四方のそのウロコは「逆鱗」と呼ばれ、それに触れると龍は怒り狂い、触れたものを必ず殺すと伝えられています。

ナビゲーターらくたび 谷口 真由美さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2020年11月

