京都ツウのススメ
第百六十六回 京の竹
京都における竹文化京都では質の良い竹を使った文化が数多く生まれました。
京都の竹について、らくたびの森明子さんがご紹介します。
基礎知識
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其の一、
- 古来、京都では家屋の建材などに竹を使用してきました
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其の二、
- 京都は竹の名産地として知られ、特別な竹を育てる竹藪があります
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其の三、
- 竹の持ち味を生かした工芸品が京都で多数生まれました
真竹(まだけ)と孟宗竹(もうそうちく)
竹は世界に約1,200種類、日本には600種類以上もあると言われています。中でも真竹と孟宗竹は、竹文化を語る上で主要な素材です。真竹は古来より日本に生育。粘りと色つやに優れていることから、床柱(とこばしら)のような建材や茶道具などに使われます。また、孟宗竹は筍(たけのこ)が有名ですが、建材などにも使用。原産は中国で、鎌倉時代に長岡京市の寂照院にもたらされたなど諸説あります。
京の風土が生み出す竹
平安時代以前から竹は生活用品や楽器、建材などに使われ、室町時代以降は茶道具に欠かせない素材に。都の文化の発展に伴い、竹を使った様々な竹工品は洗練され、竹垣や籠などを作る竹細工職人が活躍するようになります。また京都は山に囲まれた盆地で、寒暖の差が激しい気候と肥沃(ひよく)な土壌によって、良材な竹が育てられてきました。京銘竹を扱う竹材店が高品質な竹材を作り出し、京都の職人技術と共に、実用性と美しさを兼ね備えた伝統的な竹の文化を支え続けています。
滑沢(かったく)※で強く弾力性にも優れ、縦に割りやすく、
また乾湿にもゆがみがこない特徴を持つことから、京の竹は工芸品として発展。
今日まで継承されています。
※滑らかでつやのあること
京町家や数寄屋(すきや)建築の床柱・天井・網代(あじろ)・竹垣・犬矢来(いぬやらい)などに使われます。見える場所の装飾としてはもちろん、土壁の中にも竹は使用されています。
その中で、竹垣には「建仁寺垣」「金閣寺垣」「銀閣寺垣」「光悦寺垣」などと呼ばれるデザインのものがあります。これはそれぞれの寺院に由来することから名付けられた竹垣で、「京都は竹文化発祥の地」と言われる元になったとされます。

光悦寺垣(左)、建仁寺垣(右)
竹垣などの素材となる竹は、1年中管理された、竹が均等に密に生えた竹藪で筍のうちに選別。3年ほど育て、傷のない真っすぐな竹のみが材料となります。
全国のうちわの中でも、京うちわは骨が多く、優美な美しさを誇ります。上質な竹を細く割って竹ひごにした竹骨を、50~100本も使って作ります。また、竹骨が多いほど上級品となります。

茶の湯の世界では、柄杓(ひしゃく)や茶筅(せん)・茶杓(しゃく)・花入(はないれ)など、竹を使った茶道具がたくさんあります。専門の職人が腕を磨いて発展、現代に継承させ続けています。

茶筅
6月に行われる鞍馬寺の竹伐(き)り会(え)式では、大蛇に見立てた青竹を刀で切る速さを競います。また、7月の祇園祭でも、鉾の真木(しんぎ)に真竹が使われるほか、山鉾巡行の辻回しの際に、車輪の下に割り竹を敷きます。

竹伐り会式
京都では『京都式軟化栽培』と呼ばれる方法で、春の味覚の王者と言われる京の伝統野菜「京たけのこ」が育てられています。薄いクリーム色でずんぐりとした砲弾型で、京都でしか育たない形・味だと言われています。
『京都式軟化栽培』は200年以上続く筍の栽培方法で、「敷き藁(わら)」や「土入れ」をして土をやわらかくした専用の「たけのこ畑」で1年かけて丹念に育てられます。

京都の伝統技法「火炙(あぶ)り技法」によって生産された銘竹のうち、次の4種類のことを指します。和室の床柱や天井などの特別な建材、竹籠や竹垣といった京都の伝統工芸「京竹工芸」の材料として使われています。

左から白竹・胡麻竹・図面角竹・亀甲竹
白竹(しろたけ)
手作業で「火炙り」し、浮かんできた油を拭き取りながら磨く「油抜き」をした真竹を、1カ月ほど天日に干して象牙色にしたもの。
胡麻竹(ごまだけ)
立ち枯れの状態にした孟宗竹に、良質な菌によって細かな点々を発生させたもの。
図面角竹(ずめんかくちく)
孟宗竹を筍のうちに木の枠の中に入れ、四角く育て上げたもの。
亀甲竹(きっこうちく)
元は孟宗竹の変異種で、節が交互に斜めに流れ、亀の甲羅のように凸凹があるもの。
京の伝統技法の「火炙り」は火加減が難しく、経験と勘が必要とされます。
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- 第三回 祇園祭の楽しみ方
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- 第一回 池泉庭園の眺め方