京都ツウのススメ

第五回 仏像の見方

[個性あふれる仏像の不思議]長い歴史を誇る京都では、たくさんの仏像と出会うことが出来ます。今回は、分かると断然楽しい仏像のいろはを、らくたびの若村亮さんが紹介します。

仏像の基礎知識

其の一、
仏像とは信仰の対象である仏の姿を表したものです
其の二、
仏像は「如来」「菩薩」「明王」「天部」という大きく4つの種類に分けられます
其の三、
時代ごとの様々な仏像が、京都のいたるところで見られます

仏の世界の多様な仏像

仏像の始まりは、紀元前1世紀にもさかのぼります。釈迦が入滅したのち、まずは足形などをシンボル化したものが拝まれるようになり、その後に釈迦の姿をかたどった仏像が誕生しました。信仰の対象として具現化された仏像は、その見た目や持ち物が違い、役割によってそれぞれの方法で人々を教え、導いてくれます。

悟りを開いた者 如来

【1】肉髻(にくけい・にっけい) この中には人々を救うための知恵がぎっしり詰まっています

【2】三道(さんどう)「貪(むさぼ)り」「怒り」「愚痴」というこの世の煩悩を首のしわとして刻んでいます

【3】着衣 悟りを開いた如来は布をまとうのみのシンプルで潔い姿です

如来に出会えるところ
  • 平等院宇治駅下車
    南へ徒歩約10分
如来の役割

仏の世界では最高の存在
迷いを脱して悟りを開いた状態にあり、知恵や慈悲によって人々を救います。

ココがツウ 手に注目

阿弥陀如来の手もとのイラスト阿弥陀如来の手もとの輪は宇宙の意味で、博愛の心を表します

大日如来の手のイラスト大日如来の手は瞑想から行動に移る瞬間を表しています

※平等院鳳凰堂は平成26年3月31日(予定)まで、改修工事につき仮設素屋根に覆われ、内部拝観はできませんのでご注意ください。

悟りを求める修行者 菩薩

【1】結髪 ほとんどの菩薩は髪を頭の上で高く結っています。多くはその上から宝冠などをかぶっています

【2】救済の道具 往生者を乗せて極楽浄土へ誘(いざな)う蓮の華で作られた蓮台を持っています。宝珠(ほうしゅ)や、法輪(ほうりん)などを手にする菩 薩もいます

菩薩に出会えるところ
  • 広隆寺嵐電(京福)太秦
    広隆寺駅下車すぐ
菩薩の役割

如来の次の存在
悟りを開いて如来になるため、日夜修行に励む一方、苦しむ人々に救いの手を差し伸べます。

ココがツウ 手に注目

如来の左右に位置することが多く、あわせて「三尊」と呼ばれます。如来の種類によって脇の菩薩の種類も決まっています

邪悪を打ち砕く使者 明王

【1】武器 明王を代表する不動明王は、人間の煩悩を縛りとる羂索(けんさく)やそれを断ち切る利剣(りけん)を持っています

【2】台座 明王の多くは、力強さを表現する荒々しい岩に乗っています

明王に出会えるところ
明王の役割

如来の使者
如来の優しさだけでは救えない人々に対して、強い怒りで教えを説き、正しい道へと導きます。

目に注目

右目は上を、左目は下を向いていて、天地をまんべんなく見渡しています

仏教を守護する者 天部

【1】種類 他の仏とは違い、武神の他に「吉祥天」などの女神もいます。「梵天」「四天王」「十二神将」も天部です

【2】持ち物 天部は必ず持ち物を手にしています。「吉祥天」は真理を意味する蓮華を持つなど、役目によって持ち物も変化します

天部に出会えるところ
  • 鞍馬寺叡電鞍馬駅下車
    北西へ徒歩約30分(霊宝殿)
  • 三十三間堂七条駅下車
    東へ徒歩約5分
天部の役割

仏教の守護神
古代インドのバラモン教やヒンズー教の神を仏教に取り入れたもの。人々に福徳を授けます。

姿形に注目

もとは別の宗教の神々だったことから、他の仏像とは趣が異なります。象に乗るなど異国情緒が漂うものや、彩色された仏像が多く見られます

ぜひ見たいオススメの仏像
楊貴妃観音像の画像 美しい「楊貴妃観音像」

鎌倉時代以降、歴代天皇の菩提所(ぼだいじょ)となってきた泉潤寺。観音堂には、鎌倉時代に南宋から伝わったとされる聖観音菩薩が祭られています。ほっそりとした美しい女性を思わせるこの菩薩は、唐の玄宗皇帝が楊貴妃をしのんで彫らせたものと言われています。

泉涌寺(せんにゅうじ)

  • 9時~16時30分(閉門)
  • 大人500円・小中生300円
  • 075-561-1551 www.mitera.org
  • 東福寺駅下車 東へ徒歩約20分
泉涌寺の地図
制作:2008年8月
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第十一回 京菓子の歴史
第十回 枯山水庭園の眺め方
第九回 京阪沿線 初詣ガイド
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第七回 特別拝観の楽しみ方
第六回 京都の着物
第五回 仏像の見方
第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方