
第97回
言いまわし・ことわざ

第97回
言いまわし・ことわざ

京阪的京都ツウのススメ
第97回 言いまわし・ことわざ
京都発祥の雅な表現の世界
歴史背景を知るとさらに興味深い、京都発祥の言いまわしやことわざの世界を、らくたびの田中昭美さんが紹介します。
言いまわし・ことわざの基礎知識
其の一、
教訓などを伝える巧みな表現を、言いまわしやことわざと呼びます
其の二、
言いまわしやことわざの中には、京都に由来するものがあります
其の三、
京都の長い歴史や出来事、人物がモチーフとなっています
京の歴史が生んだ言いまわしやことわざ
「埒(らち)があかない」「清水の舞台から飛び降りる」「玉の輿(こし)」など、日常会話でよく使われるこれらの言いまわしやことわざは、人に何かを伝える際、わかりやすくするために生活の知恵として例えを用いたことに始まります。かつて都であった京都には、歴史上の出来事や要人も多く、言いまわしやことわざが生まれやすかったと考えられます。社寺にゆかりのものや、当時の貴族や武家の社会、庶民の生活が垣間見えるものがあり、今も親しみをもって使われています。
日常会話にも頻繁に登場
「清水の舞台から飛び降りる」「弘法にも筆の誤り」などは小学校の教科書にも登場するなじみのある言葉。日常に起こった事柄を、ユニークかつわかりやすく伝える言葉として子供の頃から教えられています。また、京都特有の物事をストレートに言わないという気質は、京都発祥の言いまわしやことわざが多数あるということにも表れていると言えるでしょう。日頃よく使う言いまわしの中で、京都発祥のものをご紹介します。
京で生まれた言いまわし・ことわざ
堂々巡り

意味:話し合いが前に進まないこと
清水寺では本堂の周りを繰り返し回るお百度参りが行われていました。お参りの際、何度も同じ場所を回ることから転じ、話が先に進まないという意味に。
本堂の側面には、真っ暗で辺りが見えない夜にお参りする際、目印とした傷が今も残っています
埒(らち)があかない

意味:物事に決着がつかない様子
上賀茂神社では古くから競馬(くらべうま)という行事が行われています。この行事では敗者が勝者に苦情を申し立てるのが恒例で、その決着がつくまで「埒」と呼ばれる馬の通用門が開かないことからこの意味に。
弘法にも筆の誤り

意味:どんな名人でも失敗することがある
今昔物語の中の逸話で、嵯峨天皇の命令で弘法大師が京の大内裏の応天門に掲げる額の字を書きました。流麗な字で「應天門」と記しましたが、「應」の字の点をひとつ書き忘れてしまいます。弘法のような書の名人でも書き誤ることがあるという意味。
後で間違いに気付いた弘法大師は、慌てることなく筆を額に投げつけ、足りなかった点を打ったと言われています
清水の舞台から飛び降りる

意味:決死の覚悟で物事を実行すること
清水寺には高い崖に張り出して造られた、いわゆる「清水の舞台」があり、そこから飛び降りてけがをしなかったら望みが叶うと言われ、身を投げる者が絶えませんでした。それぐらいの覚悟を持って物事を実行するという意味。
後の祭り

意味:時機を逃して手遅れになること
かつて祇園祭では、山鉾が華やかに巡行する「前(さき)の祭り」と、山鉾が少なく地味な「後の祭り」が行われていました。にぎやかさに欠ける後の祭りを見に行っても意味がない、時機を逃した、ということからこの意味に。
2014年、48年ぶりに「後祭」が復活し、今では華やかな山鉾巡行が行われています
玉の輿

意味:女性が結婚して裕福になること
江戸時代初期、西陣の八百屋の娘・お玉(後の桂昌院)は、江戸城で侍女として仕えていたところを将軍・徳川家光に見初められ側室となりました。お玉が豪華な輿に乗る身分になったことから「玉の輿」という言葉が生まれました。
※由来には諸説あります

ナビゲーターらくたび 田中 昭美(たなか かずみ)さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2016年4月

