
第177回
京の有職文様(ゆうそくもんよう)

第177回
京の有職文様(ゆうそくもんよう)

葵祭〈路頭の儀〉
京阪的京都ツウのススメ
第177回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
千年の都に伝わる宮廷文化の文様
祭礼や伝統行事で見ることができる有職文様。その歴史や種類についてらくたびの若村亮さんがご紹介します。
京の有職文様(ゆうそくもんよう)の基礎知識
其の一、
平安時代から天皇や貴族が衣服などに用いた図柄を有職文様と言います
其の二、
宮廷文化の発展とともに広まり、日本の伝統文様の基礎になりました
其の三、
現代でも葵祭や時代祭など祭礼の装束で見ることができます
宮廷文化で磨かれた伝統文様
中国から伝わった律令制に従い、平安時代の京都では貴族が宮廷に勤める際の衣服は官位により色や柄が決められていました。この柄が有職文様の元と言われています。平安貴族が着た衣服は、次第に中国風から和風に変化。文様も日本独自の柄が多数生まれ、現代に伝わっています。文様は調度品や乗り物の装飾にも使用され、後に武家や庶民の生活に浸透して行きます。
祭礼には欠かせないおめでたい図柄
天皇や高位の貴族らが着た装束には、鳳凰や麒麟などの霊鳥霊獣、異国の珍しい草花や動物の文様が使われました。文様には長寿や運気上昇、夫婦和合など吉兆の意味があり、時代を経るにつれ様式化した立涌(たてわく)・亀甲(きっこう)・菱(ひし)なども、おめでたい文様とされています。文様は家柄特有の紋として使われるようになり、家紋のルーツとも言われます。約1400年前から続く葵祭や、各時代の歴史上の人物に扮する時代祭では、装束や乗り物などに有職文様が見られます。
有職文様とはどんなもの?
宮廷の儀式や行事などに関する知識や決まりごとを有職と言います。
それに従って、平安時代の京都で貴族が着た装束などに使われ始めた柄で、優美で格調高い伝統文様です。
天皇だけが用いた文様
桐竹鳳凰麒麟(きりたけほうおうきりん)

花が咲いた桐と竹を中心にして上に鳳凰、下に麒麟が向かい合う姿の意匠です。重要な祭礼や儀式の装束の文様になりました。
位の高い人が用いた文様
雲立涌(くもたてわく)

立涌という曲線の文様の間に、雲が描かれています。立ち昇る蒸気がやがて雲になることから、運気上昇などの意味があります。天皇や位の高い貴族が使用しました。

小倉百人一首をまとめた歌人の藤原定家(ていか)が装束に用いた「定家立涌」は、植物が水に流れているような文様です
生き物の文様
中国やインドなどから伝わった動物や宗教上の生き物、鶴・雀・蝶など日本で見られる鳥や昆虫などが用いられます。
鶴丸(つるのまる)

長寿を象徴する鶴が翼を大きく丸く広げたデザインです。2羽の鶴でひとつの文様にする場合は、夫婦円満を表すこともあります。
植物の文様
菊や藤の花、葵の葉やシダ、つる植物などをモチーフに、連続する模様や円紋などを組み合わせて均等に配します。有職文様の中で最も多いと言われるモチーフです。
八藤丸(やつふじのまる)

2房で1セットにした4組の藤の花で、中央の花を囲む柄です。平安貴族の男性が着た指貫(さしぬき)と呼ばれる袴などに用いられました。
小葵(こあおい)

ゼニアオイが茂った様子を表した柄で、同名の文様でも花や葉が異なる柄があります。神社の本殿内の設(しつら)いや神宝に用いられることもあるそうです。
幾何学的な文様
4本の直線で四角形や菱形に組んだもの、曲線で波打つようにパターン化したものなど、現代で見られるモダンなデザインが有職文様の場合もあり、バリエーションが多いことも特徴です。
亀甲唐花(きっこうからはな)

亀の甲羅(こうら)を六角形で表現する亀甲も有職文様で、これは中に唐花が入っています。衣の全面に使われることが多い文様です。
四つ菱(よつびし)

小さな菱を4つ合わせて大きな菱を形作っています。菱はアレンジが多く、菱形に花や鳥などをあしらう柄もあり、文様により名前も異なります。

市松模様も有職文様で「霰(あられ)」と呼ばれます。貴族が着る袴の柄になることが多く、『源氏物語』にも登場する文様です
京都で楽しむ有職文様

祭礼は装束などに使われている文様を見ることができる、またとない機会です。
葵祭(あおいまつり)〈路頭の儀(ろとうのぎ)〉

上賀茂神社と下鴨神社の祭礼である葵祭(賀茂祭)の路頭の儀は毎年5月15日に行われ、行列のヒロインとも言える斎王代など約500人が平安貴族の装束で京の町を練り歩きます。斎王代の十二単や、行列諸役の装束に小葵などの有職文様が見られ、女性には蝶や花などの華やかな文様が、また男性には四つ菱などの落ち着いた文様があしらわれています。
時代祭〈時代祭行列〉

毎年10月22日に催され、京都御苑から平安神宮へ向かう時代祭行列では、紫式部や清少納言の十二単など各時代の装束や有職文様も再現されています。

『源氏物語』を絵と文で表した『源氏物語絵巻』で、光源氏の直衣(のうし)などに描かれた「唐花丸」です。名前がわからない花の模様は、唐花と総称されます
取材協力:黒田装束店
文様イラスト(四つ菱・霰を除く):『平安文様素材CD-ROM』八條忠基著(マール社)より

ナビゲーターらくたび 若村 亮さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2023年05月

