京都ツウのススメ
第十一回 京菓子の歴史
- 其の一、
- お菓子のルーツは、果物や木の実の「菓子(かし)」でした
- 其の二、
- 室町時代末期、ポルトガル人によって伝えられた南蛮菓子が、京菓子に影響を与えました
- 其の三、
- 江戸時代に、茶の湯の発展に伴い、芸術性の高い京菓子が大成しました
京菓子と季節
京菓子とは一般的に京都で作られるお菓子を総称して言うもの。これは江戸時代に、江戸を中心とする関東地方において、「都」である京の菓子を地方のものと区別して呼び始めたからだと言います。
その京都では、宮中や公家、社寺や茶家(ちゃけ)などに献上される「献上菓子」を「上菓子(じょうがし)」と言い、庶民が口にする菓子とは区別されていました。
また、四季の移ろいを楽しむ茶道と深く関わり合ってきたことから、季節を感じるお菓子としても発展しました。京菓子では“季節を先取りする”という決まりがあります。例えば、「桃の花が咲いてから桃の花の菓子を作るようでは本物の美しさに負けてしまう」。しかし、季節を先取りして店に並べたりお茶請けとして出せば、「春を待つ楽しみを客人とともに分かち合い、会話も弾む」。このような京菓子にまつわる心遣いが、都における『おもてなし』の精神として受け継がれてきたのです。
「さわらび/有平糖(ありへいとう)4個入・347円」(左)
「桃の花/生砂糖(きざとう)8枚入・295円」(右)〔甘春堂〕
清浄歓喜団(せいじょうかんきだん)/1個・525円〔亀屋清永〕
唐の文化とともに伝わったのが「唐果物」。米の粉など穀類を加工し、果物の形にして油で揚げる製法が多く、平安時代には20種類ほど作られていたそうです。宮中の宴や、神仏のお供え物として作られました。
現在でも密教の儀式に供える唐果物として受け継がれています
平安饅頭/1個・100円〔平安殿〕
茶を服しながら饅頭(まんじゅう)や羊羹(ようかん)などを食べる、「喫茶」や「点心」の風習が広まりました。点心とは、決まった時間に食べる食事以外の簡単な間食のことを言います。
当時は砂糖が貴重品であったため、甘みのない饅頭や羊羹が一般的でした
春庭良(かすてら)/1本・1,155円〔大極殿本舗〕
ポルトガル人によって、カステラ、ボーロ、カルメラ、金平糖(こんぺいとう)などの「南蛮菓子」が伝えられました。卵や油、当時貴重品の砂糖をたっぷりと使った濃厚な甘みが人々を魅了しました。
キリスト教の宣教師が、布教の際に南蛮菓子を振る舞ったことから一気に普及したとか
女雛(前)・男雛(奥)/
各357円〔甘春堂〕
桃の花/落雁6個入・243円〔甘春堂〕
上流階級のみが食していた菓子が庶民の間にも普及。茶の湯の文化も広まり、蒸し菓子や生菓子など濃茶用の「主菓子」や、落雁(らくがん)やせんべいなど薄茶用の「干菓子」が生み出されました。
季節感や花鳥風月などを表現。高い芸術性が込められた、日本独自の菓子文化です
引千切/1個・357円〔甘春堂〕
「あこや」とも呼ばれ、平安時代、宮中における祝いの儀式に用いられた戴餅(いただきもち)がルーツとされています。女の子のいる家庭では配り物としても使われます。
一般的な引千切は、餡(あん)に薯蕷(じょうよ)粉などを加えて蒸した「こなし」を土台にし、きんとんや餡の玉をのせています。餅を土台にするものなどもあります。
宮中の儀式の際、人手が足りず、餅を丸める手間を惜しんで引きちぎったことから「引千切」と言われるようになったそうです
1617(元和3)年創業の老舗で、四季を彩る菓子も豊富。唐果物の「清浄歓喜団」を作っているのはこの店のみ。
- ●8時30分~17時 水曜休業
- ●075-561-2181 ●www.kameyakiyonaga.co.jp
- ●祇園四条駅下車 南東へ徒歩約5分
平安神宮へと続く神宮道沿いにある店。周辺の古跡にちなんだ菓子が多く、洋菓子の要素を取り入れた平安饅頭は人気の商品。
- ●9時~18時
- ●075-761-3355 ●www.heianden-wagashi.jp
- ●三条駅下車 北東へ徒歩約15分
1885(明治18)年創業。長崎でカステラの製法を学び、貴重なお菓子であったカステラを庶民にも手の届くお菓子として広めたそうです。
- ●9時~19時30分
- ●075-221-3323
- ●祇園四条駅下車 西へ徒歩約15分
1865(慶応元)年創業。干菓子・主菓子など季節感のある菓子を求め、遠方からはるばる訪ねて来る人も。
- ●9時~18時
- ●075-561-4019 ●www.kanshundo.co.jpp
- ●七条駅下車 北へ、清水五条駅下車 南へ徒歩約5分
- 第百九十三回 秋の京菓子
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- 第百四十回 冬の食べ物
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- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
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- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
- 第百三十四回 精進料理
- 第百三十三回 明治時代の京の町
- 第百三十二回 皇室ゆかりの建物
- 第百三十一回 京の調味料
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- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
- 第百十八回 京都の路面電車
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- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
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- 第百十一回 鵜飼(うかい)
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- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
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- 第百五回 京の門前菓子
- 第百四回 京の通り名
- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
- 第百回 夏の京野菜
- 第九十九回 若冲と近世日本画
- 第九十八回 京の鍾馗さん
- 第九十七回 言いまわし・ことわざ
- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
- 第九十一回 京の庭園
- 第九十回 琳派(りんぱ)
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- 第八十八回 妖怪紀行
- 第八十七回 夏の京菓子
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- 第八十五回 新選組
- 第八十四回 京のお弁当
- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
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- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
- 第七十六回 京のお地蔵さん
- 第七十五回 京の名僧
- 第七十四回 京の別邸
- 第七十三回 糺(ただす)の森
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- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
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- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
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- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
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- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
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- 第三十九回 京の七不思議
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- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
- 第二十七回 京の納涼床
- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
- 第八回 顔見世を楽しむ
- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方