京都ツウのススメ
第五十一回 錦市場
- 其の一、
- 一般家庭から老舗料亭まで、京都の食文化を支える“京の台所”です
- 其の二、
- 延暦年間(782~806年)にはすでに 魚屋があったと言われています
- 其の三、
- 錦市場の地下には、上質な地下水が流れています
錦市場の歴史
延暦年間(782~806年)に魚屋が開かれたのが、その起こりだと言われている錦市場。市場として本格的に活気づくのは江戸時代に入ってからで、幕府から魚問屋としてお墨付きを得ると、朝廷や社寺などへ献上品を納めるようにもなりました。現在でも錦市場のある錦小路通沿いには「東魚屋町」「中魚屋町」「西魚屋町」などの町名があり、これは当時の名残と言えます。
明治時代に都が東京へ移り、独占的な魚問屋としての特権がなくなると、錦市場は一時衰退します。しかし、時代のニーズに合わせて青果や乾物などの取り扱いを増やし、小売市場として再出発。またにぎわいを見せるようになりました。
江戸時代の絵師・伊藤若冲(じゃくちゅう)は、錦市場の青物問屋の長男として生まれますが、家督を弟に譲り絵の世界へ。晩年には町の自治にも携わったそうです
発展のカギは「錦の水」
錦市場の発展を語る上で、名水「錦の水」の存在は欠かせません。錦市場の地下を流れるこの水は、夏でも冬でもそ の水温は15~18℃とほぼ一定。かつては市場の各店に井戸を通して引き込まれ、魚などを保存するための冷蔵庫のような役割を果たしていたそうです。形こそ変わりましたが、今でも多くの店に地下水が引かれています。
毎日多くの人が訪れる錦市場ですが、時間帯によってその客層が変わります。午前中は板前さんなど、プロの料理人が買い付けに、午後になると主婦が夕食の買い出しにやって来ます。さらに、夕方には仕事帰りのビジネスマンがお総菜などを足早に買い求める姿がみられます。錦市場を訪れるなら、ゆっくり見て回れる、主婦の時間帯がおすすめです。
名水「錦の水」なしでは錦市場の発展はなかったといっても過言ではありません。錦の水はくせのない軟水で、この軟水には 大豆のうまみを引き出す作用があると言われます。豆腐やゆばなど、水がおいしさの決め手となる食材を売る店が多いのはそのせいだとか。
錦市場の東側には、この錦の水が湧き出る錦天満宮が あり、誰でも自由に汲むことができます
京都の人々に「にしき」と親しまれるこの市場は、京都のメーンストリート・四条通から1筋北にある錦小路通にあります。東端は寺町通、西端は高倉通で、その長さは約390m。鮮魚や漬物、乾物といった食料品店をはじめ、およそ130の店舗がぎっしりと立ち並んでいます。
075-211-3882(京都錦市場商店街振興組合) www.kyoto-nishiki.or.jp 祇園四条駅下車 北西へ徒歩約10分
「錦小路通」という呼び名は平安時代からのもので、それ以前は、具足(ぐそく:家具や調度品のこと)を売る店が並んでいたことから「具足小路」と呼ばれていました。その後、いつしか「錦小路」と呼ばれるようになります。具足小路がなまって“くそ小路”と呼ばれていたのをあんまりだと、時の後冷泉天皇が「錦小路」と改めたとか、四条通の南にある「綾小路」に 対して「錦小路」と呼ばれるようになったなど、その由来は諸説あります。
八坂神社の祭礼・祇園祭。その八坂神社の神紋がキュウリの切り口に似ているため、氏子の中には「恐れ多い」と、祭り期間中にはキュウリを食べない人もいるそう。そのため、かつてはこの時期、代わりに瓜(うり)が店頭に並んだそうです。
祇園祭は、“ハモ祭”とも呼ばれます。祇園囃子(ばやし)が聞こえる頃になると、錦市場の店先に、真っ白いハモが並ぶことからこう呼ばれるのでしょう。
ハモはとても生命力の強い魚。 京都は海から遠いため、輸送に耐えるハモは 大変貴重な魚でした
マダラの干物、棒ダラ。この棒ダラと京野菜の海老芋(えびいも)を炊き合わせた「いもぼう」は、京都のおせち料理に欠かせません。お正月準備の買い物 客でごった 返す錦市場の様子は、京都の年末の風物詩です。
棒ダラはとても固く、使う時には何日も水に浸して戻します。手間はかかりますが、 海から遠い京都の大切な保存食だったのです
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