京都ツウのススメ
第十三回 宇治茶
- 其の一、
- 鎌倉時代、茶種(ちゃだね)が京都の栂尾(とがのお)に伝えられ、やがて宇治へと茶畑が広まりました
- 其の二、
- 江戸時代、徳川将軍家により「茶の最上は宇治」と称されました
- 其の三、
- 煎茶の手もみ製法は、宇治の技法が元になっています
宇治茶の歴史
日本にお茶が伝わったのは奈良時代。唐に留学した僧が持ち帰った「団茶(だんちゃ)」と言う蒸した茶葉を固めたお茶で、当時は一部の貴族や僧侶しか口にできず希少なものでした。宇治茶の始まりは鎌倉時代。1191(建久2)年、栄西(えいさい)禅師が宋から喫茶の風習とともに茶の木の種を持ち帰りました。栂尾・高山寺の明恵上人(みょうえしょうにん)に贈り、その苗が宇治へ。室町時代には幕府の奨励を受けた茶園が開かれ、全国にその名が広まります。江戸時代になると、茶業家・永谷宗円により煎茶製法が、茶師・山本嘉兵衛によって玉露の製法が誕生。現在では、京都・奈良・滋賀・三重の茶畑で生産され、宇治地域に由来する製法を用いて京都府内で加工されたものを「宇治茶」と呼びます。
将軍家のお墨付き
良いお茶が育つ条件は、降雨量が多く昼夜の温度差が大きい気候、肥沃(ひよく)な土壌で水はけが良く、霧が発生しやすい風土であること。宇治はぴったりの土地で、都に近かったこともあり、茶の研究・産業が発展しました。「茶の最上は宇治」と賞賛した将軍家は、1633(寛永10)年に宇治茶の献上を命じ、新茶の季節には、幕府御用の宇治茶を茶つぼに入れて江戸へ運んだ「御茶壺道中」が230年以上行われたのでした。
お茶の生産は京都以外でも古くからありましたが、「お茶を飲む」という風習は都の文化として栄えたもの。庶民へ広まったのは江戸時代と言われています
1738(元文3)年に永谷宗円が考案したお茶の作り方「手もみ製法」が全国に広まり、現在の煎茶へと発展しました。生葉約3kgは、約4~5時間かけてもまれ、約600gの茶葉に仕上がります。
現在は機械で作業されていますが、この技術は京都府指定無形民俗文化財に指定され、手もみ技術保存会により伝えられています
生葉を蒸し、焙炉(ほいろ※1)の上に置いた助炭(じょたん※2)に入れ、茶葉をかき上げて振り落としながら、表面の水分を飛ばします。
〈約25分〉
※1…助炭の下から炭などであぶる装置
※2…柿渋を貼った専用の茶もみ台
葉を軽く転がすようにもみ、葉が乾燥するにつれ力を加え、最後の約20分は十分に力を入れます。
〈約90分〉
横まくりの時にできた葉の固まりを小さくするために、力を弱めて手早く葉をほぐします。
〈約5分〉
いったん茶葉を助炭から取り出して冷やします。この時、茶葉に含まれる水分量は最初の半分程に。
〈約10分〉
片手まくり・もみ切りという作業を交互に行います。この工程で茶葉が細くよられていきます。
〈約30分〉
茶の香りを良くするために行う作業。茶葉のむれや乾燥を防ぎつつ、葉を軽く持ち上げるように、手を交互に動かしてもみます。
〈約20分〉
茶葉の形を整え、色や香りを良くするための最終作業。焙炉の端に板を付け、こすり付けるようにもみます。
〈約50分〉
助炭の上に薄く茶葉を広げ、時々反転させながら乾燥させます。
〈約40分〉
まろやかな味が特徴。茶葉を粉にして飲むため、茶に含まれる成分をまるごと取り入れられます
口に含むと、とろんとまろやかな味。うまみ成分アミノ酸(テアニン)を多く含んでいます
一番多く飲まれている定番のお茶。さわやかな香りとすっきりとした後味。ビタミンCが豊富です
注いだ時の香ばしい匂いは格別。カフェインがごく少量なため、赤ちゃん・お年寄りにオススメです
燻(いぶ)した香りと、クセのない味。番茶の中でもとりわけ大きな葉が特徴で、もまずに乾燥させます
宇治茶が人気なのは、高級葉が多く、昔からの信頼できるブランド力を持つため。茶道の発展もあり、京都では特に宇治茶が重用されてきました
煎茶園での茶摘み体験、「宇治茶道場 匠の館」日本茶インストラクターによるお茶のいれ方教室(700円)、手もみ製茶見学、家庭でできる製茶法、製茶工場の実演・体験などが楽しめます。
- ●5/2(土)10時~15時 ●0774-23-7713(京都府茶業会議所)
- ●宇治駅から無料シャトルバス (8時30分~13時30分まで約15分間隔で運行)
宇治川のほとりにある、宇治茶専門の喫茶室。抹茶・玉露など(各550円)を、日本茶インストラクターに教わりながら自分でいれて味わえます。
- ●11時~16時30分(L.O.) 水曜休業
- ●0774-23-7713 ●www.ujicha.or.jp/匠の館/ ●宇治駅下車 南東へ徒歩約5分
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