京都ツウのススメ
第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
京都で生まれた言葉や言い回し普段使っている言葉や言い回しには京都にゆかりのあるものがあり、その背景を知ることで、かつての京の暮らしを垣間見ることができます。
そんな言葉や言い回しをらくたびの森明子さんがご紹介します。
基礎知識
其の一、
- 普段使う言葉や言い回しには、京都にゆかりのあるものが多く見つかります
其の二、
- 言葉の背景には、宮中行事や地名、史実などがあります
其の三、
- 京都生まれの言葉から、当時の人々の暮らしを想像することができます
京都から生まれた言葉や言い回し
普段使っている言葉や言い回しの由来を調べてみると、京都にゆかりのあるものが多く見つかります。京都は、長い期間、都として多くの人々の注目を集めた都市でした。そのことも京都にゆかりのある言葉や言い回しが多くある理由のひとつでしょう。また、祭りや史実、伝説から生まれたものもあります。当時の人々の多くが知っていたことから、日常にまで広まったのではないかと考えられます。
言葉や言い回しの背景に見えるかつての風景
思い切った決断を表す「清水の舞台から飛び降りる」という言葉は、江戸時代に清水寺の本堂前の舞台から心願成就を祈って実際に多くの人が飛び降りたことから生まれました。このように、言葉や言い回しには人々の生活や当時の流行、出来事などから生まれているものがあります。そのため、語源からかつての京都の町の風景が想像できることも。今回は、京都ゆかりの言葉をルーツとともにご紹介します。
京都の祭りは有名なものばかり。
言葉の由来になりやすかったのかもしれません
【埒(らち)があかない】
上賀茂神社では、元々宮中行事であった競馬(くらべうま)が古くから行われています。埒とは、馬場の周囲に巡らされた柵のことで、競馬の終了時に埒が外されることを「埒があく(あける)」と言いました。かつては物事が決着したことを表す言葉でしたが、現代では否定の意味で使われることが多くなり、物事が終わらない、決着がつかないことを表すようになりました。
賀茂競馬は中世に著された『徒然草』にも登場しています。著者・吉田兼好が「埒のきはに寄りたれど、殊(こと)に人多く立ち込みて…」と記しており、当時から多くの人が見物に訪れていたことがわかります
古くから伝わるしきたりに登場する言葉が転じました
【露(つゆ)払い】
相撲で、土俵入りの際に横綱を先導する力士のことを露払いと言います。この言葉のルーツは宮中行事・蹴鞠(けまり)にあります。蹴鞠の際、最初に鞠を蹴って周囲の木々の露を落とす人のことを露払いと言い、それが転じて相撲の先導役や行列の先頭に立つ人のことを指すようになりました。
誰でも知っている大きな出来事はものの例えにぴったりです
【天王山(てんのうざん)】
勝負を決める大事な局面や勝敗の分岐点を指す言葉です。天王山とは、京都府・大山崎町にある山で、羽柴(豊臣)秀吉と本能寺の変を起こした明智光秀が戦った山崎合戦の舞台です。天下統一を目指したふたりの武将による戦が勃発した場所であることから、この言葉が誕生したと考えられます。
京都の地名が用いられた言葉もあります
【白川夜船(しらかわよふね)】
「ぐっすり眠っていて気付かない」、または「知ったかぶりをする」というふたつの意味があります。白川とは現在の京都市左京区にかつてあった地名ですが、それを知らない人が川の名前と勘違いして「夜に船で通ったからよくわからない」と答えたことから、これらの意味になったと言われます。
白川は、鴨川に注ぐ小川だったという説もあります。この小川もとても川幅が狭く、いずれにせよ船で通ることはできないのです
語り継がれる伝説の一部が言葉となって
広まったと考えられます
【くわばら、くわばら】
災難や雷を避けるために唱えるおまじない。平安時代の貴族・菅原道真は死後、雷神となり、京の町にたくさんの雷を落としたと言われています。しかし、自身の邸宅があった桑原町だけには雷を落とさなかったとされ、それにあやかった言葉だという説があります。
桑原町は今も存在しています。京都市中京区の京都地方裁判所前の道路だけを桑原町と言い、人は住んでいません
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- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
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- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
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