京都ツウのススメ
第百七十回 京都とキリスト教
聖アグネス教会(上京区) J.M.ガーディナー設計
写真提供:学校法人 平安女学院
京都のキリシタンの足跡初めて京都にキリスト教が伝えられた室町時代から
明治時代にかけての歴史を、「らくたび」の森明子さんがご紹介します。
基礎知識
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其の一、
- 京都では室町時代にキリスト教が伝えられました
-
其の二、
- 京都にはキリシタンが集う町「だいうす町」が作られました
-
其の三、
- 明治時代には、キリスト教系の学校が設立されました
将軍に謁見(えっけん)し布教を開始
日本にキリスト教が伝来したのは、宣教師フランシスコ・ザビエルが鹿児島県に上陸した1549(天文18)年です。京都で布教が始まったのは、宣教師ガスパル・ヴィレラが室町幕府の第13代将軍足利義輝から布教の許可を得た1560(永禄3)年。京都で実権を握っていた織田信長がキリスト教を保護したこともあり、市内には「南蛮寺」と言われる教会が建てられ、「だいうす町」というキリシタンが集まる町も作られました。
明治時代、再び宣教師が京都に
しかし、豊臣秀吉により宣教師が国外追放を命じられたり1612(慶長17)年から1873(明治6)年まで続いた幕府の禁教令によりキリスト教は弾圧。京都でも多くのキリシタンが処刑されました。幕末の開国を経て明治時代に入ると、京都に再び多くの外国人宣教師が訪れます。同志社大学のルーツとなった同志社英学校をはじめとするキリスト教系の学校が設立され、キリスト教各派の教会も開かれました。
都で布教を行うために、
多くの宣教師が京都を訪れました。
フランシスコ・ザビエル
1551(天文20)年~
ザビエルは、日本の都で布教の許可を得るため京都を訪れます。しかし当時の京都は応仁の乱などで荒廃。後奈良天皇や第13代将軍足利義輝に謁見できないまま、京を離れました。
ガスパル・ヴィレラ
1560(永禄3)年~
ザビエルの意思を継いだヴィレラは、足利義輝への謁見がかない布教の許可を得ます。現在の四条烏丸の近くなどに居を構え布教を行いましたが、人々の抵抗感もあり活動は難航しました。
ルイス・フロイス
グネッキ・ソルディ・オルガンティーノ
1569(永禄12)年~
フロイスが織田信長より布教を許可され、活動は本格的に。1570(元亀元)年に来日したオルガンティーノは、京都で約30年活動を続け、宇留岸伴天連(ウルガンバテレン)という愛称で親しまれました。
フロイスが信長と対面した旧二条城は、1569(永禄12)年、信長により築かれました。現在、平安女学院(上京区)がある一帯に、わずか70日間ほどで完成。築城の様子はフロイスの著書『日本史』に詳しく記されました
室町時代から江戸時代にかけての、
キリシタンの信仰を伝えます。
1576(天正4)年、姥柳(うばやなぎ)町(中京区)に南蛮寺が建てられました。オルガンティーノが設計に関わった建物は和風の3階建て。1階に礼拝堂があり、教会としての役割を果たしていました。都の名所となり、多くの見物人が訪れますが、後のキリスト教弾圧により破壊されました。
南蛮寺の礎石は、同志社大学(上京区)に寄贈されています。また妙心寺春光院(右京区)には、南蛮寺の鐘が伝わります。鐘が作られたとされる年代「1577」の数字と、イエスが人類の救世主であるという「IHS」の文字が刻まれています
キリシタンの墓碑の多くは弾圧により破壊されましたが、京都市内では20基ほどの墓碑が発見・保管されています。禁教令が発令されるまでの慶長年間に作られたものがほとんどで、十字架や洗礼名などが刻まれています。
四条堀川に近い旧妙満寺跡(下京区)の一帯や、油小路通元誓願寺(上京区)周辺に、キリシタンの町「だいうす町」が作られました。「だいうす」はラテン語で神を表す「デウス」に由来すると言われています。
秀吉や徳川幕府は様々な理由でキリスト教を迫害。1619(元和5)年に52名のキリシタンが処刑された場所を示す「元和キリシタン殉教の地」の碑は、七条駅からほど近い、川端通沿いに建てられています。
明智光秀の娘・玉〈細川ガラシャ〉は、父が本能寺の変を起こしたことで苦難の人生を送る中、夫の細川忠興の友人であるキリシタン大名・高山右近らを通してキリスト教と出会い、洗礼を受けました。大徳寺塔頭の高桐院(北区)には忠興とガラシャの墓があります。また、高山右近は、伏見の城下町で1604(慶長9)年に伏見教会を建てたと言われます。幕府を刺激しないよう、町家に囲まれた人目につきにくい場所でした。
キリスト教系学校の開校
明治時代に開かれたキリスト教系の学校のひとつが同志社英学校。アメリカでキリスト教を学び帰国した新島襄(じょう)が、1875(明治8)年に設立しました。新島は、京都府顧問の山本覚馬(かくま)から京都御所北の薩摩藩邸跡地を購入したと言われています。
教会の建設
西京第二公会〈現:同志社教会〉(上京区)や、京都聖三一教会〈現:聖アグネス教会〉(上京区)などが建てられました。
京都聖三一教会は1930(昭和5)年に中京区に移転
1903(明治36)年に完成した京都 生神女福音大聖堂〈通称 京都ハリストス正教会〉(中京区)を設計したのは、京都出身の建築家・松室重光。ハリストスはギリシャ語でキリストを表す言葉です
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