京都ツウのススメ
第五十三回 観月行事
- 其の一、
- 中国から伝わった風習で、日本では平安時代に宮廷や貴族の間で広まりました
- 其の二、
- 観月の様子は、平安時代に生まれた書物にも多く描かれています
- 其の三、
- 豊作を祈願する祭りとして、江戸時代に庶民にも定着しました
秋の月を愛でる観月の宴
平安時代、観月行事は宮廷や貴族の間で盛んに行われていました。1年のうち、最も空気が澄んでいて月がきれいに見える旧暦8月15日の中秋の日の夜(十五夜)は、夜空に浮かぶ月を観賞しながら和歌を詠み、宴を催すなどして楽しみました。『日本紀略』に、909(延喜9)年に醍醐天皇が月を愛でながら詩歌を楽しむ宴を催したと記されているのを初めとして、平安時代中期までに、30例近くの記録が様々な書物に見られます。有名な『枕草子』や『源氏物語』にも観月の宴の記述があり、平安貴族にとって、季節の移ろいをしみじみと感じる大切な行事のひとつとして定着していたことがうかがえます。
京都で生まれた風習「後の月」
旧暦の8月のことを「仲秋」、その真ん中の日である8月15日を「中秋」と言いますが、この中秋だけでなく、約1カ月後の9月にも月を愛でる習慣があり、この月は「後の月」と呼ばれました。中秋の名月を見る風習は唐の時代の中国から伝わったものですが、後の月を見る風習は、平安時代に宇多法皇が始めたと言われ、京都で生まれた日本独自の風習です。今でも京都の旧家などでは、その習わしが残っています。
空の月を見るのではなく、池に浮かべた舟から水面に映った月を愛でたり、また杯に月を映して酒を飲んだりして、中秋の名月を楽しみました。「雪月花」という言葉があるように、月は、花や雪と並ぶ、日本の自然美の代表格。水面で様々に表情を変える月の美しさに、貴族たちは秋の風情を感じたのでしょう。
当時、中秋の月を見て、後の月を見逃すことを「片見月」と言い、縁起が悪いとされていました。しかし、中秋に空と水面の両方の月を見ることで2つの月を見たことになり、後の月を見なくてもよいという習わしがありました
平安時代、嵯峨天皇は大沢池に舟を浮かべ、貴族たちと月を愛でました。今でも、龍頭鷁首(げきす)舟などを浮かべて月を愛でる「観月の夕べ」が行われています。
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● 9/28(金)~30(日)
17時~20時30分(受付) -
●大人500円・小中高生300円
※舟席券は別途料金必要 - ●075-871-0071
- ●www.daikakuji.or.jp
- ●三条駅から京都バス 64系統 大覚寺下車すぐ/嵐電(京福)嵐電嵯峨駅下車北へ徒歩約20分
平安貴族にとって、和歌を詠んだり、楽器を奏でたりすることは重要なたしなみのひとつ。観月の宴の際にも、月を題材に即興で和歌を詠み、その出来栄えを評価し合うなど、当時の人たちにとって和歌は大切なコミュニケーションの手段だったようです。
宴の場でも、演奏を聴くだけでなく、管弦曲や雅楽を互いに演奏し合い、
腕前を競うなどしたそうです
かがり火がたかれ、社殿では雅楽とともに舞楽が奉納されます。平安時代以来の伝統を守る、雅やかな行事です。
- ●9/30(日) 17時30分~21時
- ●075-781-0010
- ●www.shimogamo-jinja.or.jp
- ●出町柳駅下車 北へ徒歩約10分
十五夜は、秋の収穫を感謝する祭りの日でもあります。欠けたところのない満月は豊かな実りの象徴とも言われ、この時期に収穫される里芋を供えたことから、中秋の名月を「芋名月」と呼ぶことも。京都ではかつての芋の面影を残し、楕円(だえん)の団子に、雲に見立てた餡(あん)を巻いたものを供えます。
京都には、昔のように里芋を皮付きのまま蒸して衣被(きぬかつぎ)にし、お供えする風習が残ります。十六日の昼には、“お下がり”として白みそ仕立てのおつゆに入れて食べます
『枕草子』には「八月十余日の月明き夜」として、中宮・藤原定子が、女房たちとともに月を愛でるシーンがあります。当時、すでに父である関白・道隆は亡くなり、時流は道長の世へと移りつつありましたが、月見はそんな中での楽しいひと時だったのでしょう。
- 第百九十三回 秋の京菓子
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- 第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
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- 第九十二回 京の冬の食習慣
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- 第四十六回 京料理
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- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
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- 第四十一回 おばんざい
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- 第十六回 京のお盆行事
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- 第十四回 京都の路地
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- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
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- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方