貴族の装いには多くの決まりがあります。男性は日常では狩衣(かりぎぬ)などの簡素な服、正式な場では束帯(そくたい)を着ました。また女性は単(ひとえ)と長袴(ながばかま)の単袴姿が基本で、朝廷に出仕する際の正装は、単袴姿に袿(うちき)などを何枚も重ね約10kgにもなる女房装束(十二単)でした。
京都ツウのススメ
第六十九回 平安京
- 其の一、
- 平安京は、794(延暦13)年に桓武(かんむ)天皇によって誕生しました
- 其の二、
- 千年以上にわたって京に置かれた都です
- 其の三、
- 貴族の国風文化が花開きました
平和で安らかな都
794(延暦13)年、桓武天皇によって長岡京から山背国(やましろのくに)(現在の京都市)に都が遷(うつ)され、永遠に平和で安らかであるようにとの願いを込め“平安京”と名付けられました。幅85mもの朱雀大路は、道の中央で右京と左京に分けられ、朱雀大路の北端には天皇が住む内裏や儀式や政務を行う施設のある大内裏(だいだいり)を造り、南端には羅城門(らじょうもん)を設置しました。やがて、左京に人々が集中し、都の北側や東側にも市街地が形成されます。平安京は、姿を変えながら、1869(明治2)年に東京へ遷都されるまで千年以上の間、天皇や貴族が住む日本の首都として、政治・文化の中心的役割を果たしました。
人々の暮らし
平安京の全盛期には、東西約4.5km、南北約5.2kmという土地に、推定十数万もの人々が暮らしていました。貴族たちは内裏や周辺の役所で宮仕えをし、季節の移ろいや年中行事を大切にした生活を送ります。その中で、寝殿造の邸宅や雅な衣装など、日本らしい国風文化が栄え、暮らしも豊かになっていきました。
中国で発展した風水思想に基づき、東西南北を司る神獣らに守られた「四神相応の地」に都を建設。東の青龍は水が流れる場所の鴨川、西の白虎は大きな道がある山陰道、南の朱雀は広く開けた土地の巨椋(おぐら)池、北の玄武は山や丘がある船岡山にあたるとされています。
都の周囲には災いを防ぐため、多くの王城鎮護の社寺が設けられました。北東は鬼神が出入りする鬼門とされ、比叡山に延暦寺、そのふもとに赤山禅院が置かれました。一方、北西は怨霊や災いが入る天門と呼ばれ、その守護として愛宕神社が置かれました。
平安京は左右対称が徹底された都市で、朱雀大路を挟んで東は「左京」、西は「右京」と呼ばれました。左京と右京には、それぞれ対称となる位置に東寺と西寺、東市と西市が配置されました。
唐の都の名から、左京は「洛陽」、右京は「長安」とも呼ばれました。やがて左京が都の中心となって栄えたので、都全体が洛陽と呼ばれるようになり、洛中、洛外、上洛(京都に行くこと)などの言葉が生まれました
食事は原則10時と16時の2回。食材は、米や穀物、野菜に加え、猪や鹿の肉、魚介類の干物など種類豊富でしたが、味はほとんど付いておらず、好みで塩などの調味料を付けて食べました。1月15日に食べる小豆粥(あずきがゆ)や9月9日の重陽(ちょうよう)の節句に飲む菊酒のように、季節や儀式に関わる食習慣もありました。
平安貴族の邸宅は寝殿造と呼ばれる建築様式で、一町四方(120平方メートル)の大きさが基本です。築地塀(ついじべい)で囲まれた敷地に池泉庭園と、庭を囲むように「コ」の字型に建物が配置されました。寝殿には壁がほとんどなく、これは蒸し暑い京都の夏に、池からの涼風を取り入れるための工夫でした。
平安京の一般庶民は、貴族の従者や商工業者などがほとんどで、激しい労働に従事する人々は1日2度の食事に加え、間食(かんじき)という昼食をとりました。職業に合わせた活動しやすい服装で、住居は間口が狭く、隣家と軒を接する長屋で暮らしていました。
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現在も正月の“鏡餅”として続く風習。
丸く平たい餅を2~3個重ねます。神様に供えるもので食べませんでした。
- 庭園の小川で酒杯が流れてくる前に詩歌を作り、歌ができたら杯を取り上げ酒を飲む遊び。現在は「きょくすいのえん」と呼ばれ、城南宮や上賀茂神社で再現されています。
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下鴨神社と上賀茂神社の祭礼。当時、祭りとは賀茂祭をさしました。葵祭として、今も5月15日に行われています。
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年2回、夏と冬の装束を着替える行事が行われていました。
現在も一般的に制服などの衣替えを6月と10月にします。
- 月初めの午(うま)の日という意味でしたが、疫病の流行しやすい5月をさすようになり、香りの強い菖蒲(しょうぶ)を屋根にふいて邪気を払いました。今は菖蒲の湯に入る風習が残ります。
- 茅の輪をくぐり、人形(ひとがた)に罪やけがれを移して水に流し、厄除、長寿を祈願。夏越祓(なごしのはらえ)とも言い、現在も様々な神社で続いています。
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月が最も美しい日とされ、舟遊びや歌を楽しむ宴を催しました。今も「中秋の名月」として月を見る風習が残ります。
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1年の最後に宮中で行われた鬼払いの儀式。
豆まきで鬼を追い払う節分の元になったとされています。
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- 第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
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- 第百六十六回 京の竹
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- 第百六十四回 文豪と京の味
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- 第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
- 第百五十回 京のお雑煮
- 第百四十九回 京の牛肉文化
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- 第百四十七回 明治の京都画壇
- 第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
- 第百四十五回 ヴォーリズ建築
- 第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
- 第百四十三回 京の人形
- 第百四十二回 京の社寺と動物
- 第百四十一回 鳥居(とりい)
- 第百四十回 冬の食べ物
- 第百三十九回 能・狂言と京都
- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
- 第百三十六回 京都とビール
- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
- 第百三十四回 精進料理
- 第百三十三回 明治時代の京の町
- 第百三十二回 皇室ゆかりの建物
- 第百三十一回 京の調味料
- 第百三十回 高瀬川
- 第百二十九回 蹴鞠
- 第百二十八回 歌舞伎
- 第百二十七回 京都に残るお屋敷
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- 第百二十五回 京の学校
- 第百二十四回 京の六地蔵めぐり
- 第百二十三回 京の七不思議<通り編>
- 第百二十二回 京都とフランス
- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
- 第百十八回 京都の路面電車
- 第百十七回 神様への願いを込めて奉納
- 第百十六回 京の歴食
- 第百十五回 曲水の宴
- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
- 第百十三回 パンと京都
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- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
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- 第百五回 京の門前菓子
- 第百四回 京の通り名
- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
- 第百回 夏の京野菜
- 第九十九回 若冲と近世日本画
- 第九十八回 京の鍾馗さん
- 第九十七回 言いまわし・ことわざ
- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
- 第九十一回 京の庭園
- 第九十回 琳派(りんぱ)
- 第八十九回 京の麩(ふ)
- 第八十八回 妖怪紀行
- 第八十七回 夏の京菓子
- 第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
- 第八十五回 新選組
- 第八十四回 京のお弁当
- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
- 第八十回 義士ゆかりの地・山科
- 第七十九回 京の紅葉
- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
- 第七十六回 京のお地蔵さん
- 第七十五回 京の名僧
- 第七十四回 京の別邸
- 第七十三回 糺(ただす)の森
- 第七十二回 京舞
- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
- 第六十回 京狩野派
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- 第五十八回 京のしきたり
- 第五十七回 百人一首
- 第五十六回 京の年末
- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
- 第五十三回 観月行事
- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
- 第五十回 京の暖簾
- 第四十九回 大原女
- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
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- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
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- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
- 第八回 顔見世を楽しむ
- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方