京都ツウのススメ

第四十五回 京の町家〈内観編〉

[先人の営みを伝える京町家の生活空間] 端正な外観の京町家。一歩中に入れば、さらに機能美あふれる生活空間が広がります。そんな京町屋の「内側」をらくたびの佐藤理菜子さんがご紹介します。

京の町家の基礎知識

其の一、
通りに面して間口が狭く、奥行きのある造りから“うなぎの寝床”と呼ばれます
其の二、
「通り庭」に沿って「店の間」「台所」「奥の間」を一列に並べた間取りが一般的です
其の三、
「箱階段」や「坪庭」など、機能的で優美なしつらえが特徴です

うなぎの寝床と呼ばれる京町家

細長い敷地に建てられた京町家は“うなぎの寝床”と呼ばれ、間口が狭く奥行きの深い造りが特徴です。これは江戸時代に、間口の広さによって決められていた税金を少なくするため、また、通りに面して並ぶ店の数を増やして町並みににぎわいを持たせようとしたためとも言われています。町家は職住一体を基本としながら、内部は商いの場と住まいを機能的に区別しており、玄関から奥に行くほどプライベートな空間になります。

先人の暮らしの知恵が息づく生活空間

町家の間取りは時代とともに少しずつ変化してきましたが、多くは「通り庭」と呼ばれる細長い土間、それに沿うように「店の間」「台所」「奥の間」の3室が並ぶ「1列3室型」が基本です。また、光や風を通すために設けられた「坪庭」や、空間を有効に使う「箱階段」など、優れた機能を持つしつらえも特徴。建具や調度品など、住む人の美意識が反映された様々な意匠とともに、先人の暮らしの知恵が受け継がれています。最近は、古い京町家を改装した飲食店なども多く、実際に訪れて京の居住文化に触れるのも楽しみ方のひとつです。

[しつらえに秘められた機能と美 町家の中をのぞいてみよう] 先人の知恵や暮らしぶりを現代に伝える京町家の内側に注目してみましょう。

1 店の間
2 台所
3 通り庭
4 奥の間
5 坪庭
階段
走り庭

4 奥の間

一番奥にある、格式の高い座敷。書院造りが多く、大切な客をもてなす接待の場として使われたため、床の間や天井などに住む人の好みやセンスが表れています。

ココがツウ

京町家では年に2回「建具替え」と呼ばれる室内の“衣替え”が行われます。夏の初めになると、秋から春にかけて使用していた襖(ふすま)や障子を外して風通しの良い葦戸(よしど)や簾(すだれ)に取り替え、畳の上には網代(あじろ)や籐むしろを敷きます

1 店(見世)の間

通りに面した部屋で、店舗や商談の場、または職人の作業場として使われます。公的な場であるため、質素な造りが特徴です。

ココがツウ

祇園祭で山や鉾を出す町内の家々では、店の間の表に取り付けられた格子を外し、家宝の屏風や美術品を一般に披露する「屏風祭」が行われます

2 台所

炊事場の向かいにあり、家族や親しい人が出入りするダイニング兼リビング。

京町屋クローズアップ [箱階段]

3 通り庭

通り庭

入り口から奥まで続く細長い土間。通りに面した「見世庭」、通り庭の中間にある「走り庭」などを総称して「通り庭」と呼びます。戸を開け放すと風の通り道にもなります。

京町屋クローズアップ [走り庭]

ココがツウ

流しのことを「走り」と呼ぶことから「走り庭」と呼ばれます。主婦が忙しく、走り回るように働くことから「ハシリ」と言われるようになったとも

坪庭

5 坪庭

建物の奥や中ほどに設けられた一坪程度の庭。風通しと採光の役割を兼ねていて、夏には打ち水をして蒸し暑さをしのぎました。石灯ろうや常緑樹、手水(ちょうず)鉢などが配され、見た目の美しさも重視されました。

実際に町家を訪れてみよう

半兵衛麩

京の食文化と住文化を堪能
江戸時代創業の京麸や湯葉の製造販売店。
昭和初期築の京町家で営む茶房には、おくどさんや井戸が残る通り庭、坪庭などがあり、往時の暮らしぶりがうかがえます。茶房での食事(「むし養い/3,150円」のみ)は要予約。

茶房:11時~14時30分(入店)
075-525-0008   www.hanbey.co.jp   清水五条駅下車すぐ

清水五条[半兵衛麩]

Kyoto 生 chocolat Organic Tea House

町家でいただくショコラスイーツ
平安神宮近くのチョコレート専門店。
築100年以上の町家を生かしたカフェからは、緑が美しい坪庭が眺められます。

12時~17時(L.O.) 月・火曜休業
075-751-2678   www.kyoto-namachocolat.com
神宮丸太町駅下車 東へ徒歩約20分

神宮丸太町[Kyoto 生 chocolat Organic Tea House]

制作:2011年12月
バックナンバー
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第百九十二回 京都の植物
第百九十一回 京都の風習
第百九十回 幻の巨椋池(おぐらいけ)
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第百八十八回 京都とお花見
第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
第百八十六回 京都の地ソース
第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
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第百八十回 琵琶湖疏水と京都
第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
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第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
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第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
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第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
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第百五十四回 京の刃物
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第百五十二回 京の社家(しゃけ)
第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
第百五十回 京のお雑煮
第百四十九回 京の牛肉文化
第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
第百四十七回 明治の京都画壇
第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
第百四十五回 ヴォーリズ建築
第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
第百四十三回 京の人形
第百四十二回 京の社寺と動物
第百四十一回 鳥居(とりい)
第百四十回 冬の食べ物
第百三十九回 能・狂言と京都
第百三十八回 京都と様々な物の供養
第百三十六回 京都とビール
第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
第百三十四回 精進料理
第百三十三回 明治時代の京の町
第百三十二回 皇室ゆかりの建物
第百三十一回 京の調味料
第百三十回 高瀬川
第百二十九回 蹴鞠
第百二十八回 歌舞伎
第百二十七回 京都に残るお屋敷
第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
第百二十五回 京の学校
第百二十四回 京の六地蔵めぐり
第百二十三回 京の七不思議<通り編>
第百二十二回 京都とフランス
第百二十一回 京の石仏
第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
第百十九回 生き物由来の地名
第百十八回 京都の路面電車
第百十七回 神様への願いを込めて奉納
第百十六回 京の歴食
第百十五回 曲水の宴
第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
第百十三回 パンと京都
第百十二回 京に伝わる恋物語
第百十一回 鵜飼(うかい)
第百十回 扇子(せんす)
第百九回 京の社寺と山
第百八回 春の京菓子
第百七回 幻の京都
第百六回 京の家紋
第百五回 京の門前菓子
第百四回 京の通り名
第百三回 御土居(おどい)
第百二回 文学に描かれた京都
第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
第百回 夏の京野菜
第九十九回 若冲と近世日本画
第九十八回 京の鍾馗さん
第九十七回 言いまわし・ことわざ
第九十六回 京の仏師
第九十五回 鴨川
第九十四回 京の梅
第九十三回 ご朱印
第九十二回 京の冬の食習慣
第九十一回 京の庭園
第九十回 琳派(りんぱ)
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第八十七回 夏の京菓子
第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
第八十五回 新選組
第八十四回 京のお弁当
第八十三回 京都の湯
第八十二回 京の禅寺
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第八十回 義士ゆかりの地・山科
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第六十六回 京の女流文学
第六十五回 京の銭湯
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第六十二回 能・狂言
第六十一回 京の伝説
第六十回 京狩野派
第五十九回 京寿司
第五十八回 京のしきたり
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第五十六回 京の年末
第五十五回 いけばな
第五十四回 京の城
第五十三回 観月行事
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第五十一回 錦市場
第五十回 京の暖簾
第四十九回 大原女
第四十八回 京友禅
第四十七回 京のひな祭り
第四十六回 京料理
第四十五回 京の町家〈内観編〉
第四十四回 京の町家〈外観編〉
第四十三回 京都と映画
第四十二回 京の門
第四十一回 おばんざい
第四十回 京の焼きもの
第三十九回 京の七不思議
第三十八回 京の作庭家
第三十七回 室町文化
第三十六回 京都御所
第三十五回 京の通り
第三十四回 節分祭
第三十三回 京の七福神
第三十二回 京の狛犬
第三十一回 伏見の酒
第三十回 京ことば
第二十九回 京の文明開化
第二十八回 京の魔界
第二十七回 京の納涼床
第二十六回 夏越祓
第二十五回 葵祭
第二十四回 京の絵師
第二十三回 涅槃会
第二十二回 京のお漬物
第二十一回 京の幕末
第二十回 京の梵鐘
第十九回 京のお豆腐
第十八回 時代祭
第十七回 京の近代建築
第十六回 京のお盆行事
第十五回 京野菜
第十四回 京都の路地
第十三回 宇治茶
第十一回 京菓子の歴史
第十回 枯山水庭園の眺め方
第九回 京阪沿線 初詣ガイド
第八回 顔見世を楽しむ
第七回 特別拝観の楽しみ方
第六回 京都の着物
第五回 仏像の見方
第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方