
第193回
秋の京菓子

第193回
秋の京菓子

鶴屋𠮷信「月兎/1個・486円」「月見だんご/1個・324円」
京阪的京都ツウのススメ
第193回 秋の京菓子
秋の訪れを告げる京菓子
9月はまだまだ暑さが残る時期ですが、早くも秋の趣を漂わせる京都の和菓子をらくたびの谷口真由美さんが紹介します。
秋の京菓子の基礎知識
其の一、
京菓子は京の四季の風景を生菓子や干菓子の味や見た目で表します
其の二、
9月初旬から京都の秋の行事にちなんだ京菓子が次々と登場します
其の三、
平安時代の宮中行事から生まれた秋の京菓子もあります
京都の人の営み、風景が表現される京菓子
「京菓子」とは京の職人が京都で作る和菓子のこと。小さな菓子の中に京都の文化や人の営み、自然の風景などが、素材・味わい・食感・見た目で表現されます。長い歴史の中で、社寺との関わりや茶の湯の発展、中国をはじめとする諸外国との交流に支えられながら、職人は技を磨いてきました。生菓子・干菓子ともに品格と芸術性のある京菓子を作り上げ、今もなお創意工夫を続けています。
菓子に映し出される、四季の移ろい
京菓子は、四季折々の植物の姿や受け継がれる年中行事などをモチーフにして、京都の風情を映し出します。秋の京菓子の中には、綿を被った菊の花の姿を模した「着せ綿」など、平安時代に始まった宮中行事ゆかりの菓子もあります。また、秋は豊穣の季節。新小豆、新大豆、新米の粉など菓子の材料になる素材の収穫期で、1年のうちでも菓子の味わいがより豊かになると言われています。その味わいを満喫できる秋らしい京菓子の数々をご紹介します。
秋の和菓子は菊月栗で楽しむ
菊着せ綿(きせわた)

亀屋良長「着せ綿」 ※写真はイメージです
重陽の節句に行われていた風習・菊の被(き)せ綿に由来する菓子。餡と粉を混ぜて蒸した生地・こなしや練り切りで菊の形が作られ、綿に見立てた白餡が上にのせられています。古くは江戸時代中期の京都に、色や形は不明ですが、「着綿」という和菓子があったという記録が残っています。菊の被せ綿は、現在はあまりなじみのない風習ですが、菓子の「着せ綿」は今も毎年、京菓子店にお目見えします。
重陽(ちょうよう)の節句とは
重陽とは最も数の大きい陽数(1ケタの奇数)が重なる9月9日のこと。この日は平安時代に節句の行事となり、宮中では長寿を願い菊花の宴が催されていました。現在は新暦9月9日に車折神社や市比賣神社などで祭りや神事が行われます。

菊の被せ綿は、平安時代からの宮中の風習です。重陽の節句の前日に、菊の花の上に綿を被せて長命の効能があるとされた菊の露と香りを移し、当日に無病息災を祈ってその綿で身を拭いました
月きぬかつぎ

俵屋吉富 烏丸店「月見団子/5個入り・1,404円」
京都では月見団子を、きぬかつぎ(衣被)とも呼びます。平安時代以降の女性が頭に衣を被った姿から、皮ごとゆでた里芋と、里芋を模した京都の月見団子がそう呼ばれるようになりました。団子は米粉や餅粉などで作られ、白団子だけでなくよもぎ団子も。外側の餡も粒餡やこし餡、抹茶餡などお店ごとのバリエーションが豊富です。
十五夜の芋名月(いもめいげつ)
江戸時代、京都など上方では旧暦8月15日の十五夜の月は、新しく収穫された里芋や里芋を模した団子を供えていたことから芋名月とも呼ばれるようになりました。
月見団子として想像されがちな、積み上げられたまん丸の白い団子は関東式。京都をはじめ関西では豊穣を願って、皮がついた里芋を模した、餡に包まれた楕円形の月見団子が古くから作られてきました
栗きんとん

京菓子司千本玉壽軒「栗きんとん/1個・540円」
新栗が収穫される10月頃から店頭に並び始める栗きんとん。栗は収穫期が晩秋になるほど色も味も濃さを増していくので、同じお店の栗きんとんでも時季により色味・風味が変わります。その変化を楽しむのも京菓子の味わい方のひとつです。
十三夜の栗名月(くりめいげつ)
旧暦9月13日の十三夜の月は「後(のち)の月」と呼ばれ、栗が収穫される時季でもあるため栗名月とも言われました。
京都の人々は茶巾(ちゃきん)絞りで成形したものではなく、裏ごしした栗のそぼろを餡玉に添え付けた上生菓子を「栗きんとん」と呼びます。茶巾絞りの菓子は「栗茶巾」と呼ばれます
京菓子に映す秋の自然の情景
松露(しょうろ)

亀屋友永「三色松露/200g・1,188円」

キノコのショウロ
春と秋に松林に生える丸いキノコから名付けられた京菓子。砂糖を煮詰めて白くなるまでかき混ぜた「すり蜜」を餡玉にまとわせ固めたものです。蜜をきれいに付けるには技術を要しますが、特に京都の職人が作る松露は蜜のまとわせ方が均一で秀逸だと言われます。
紅葉

鶴屋𠮷信「秋襲(あきがさね)/1棹・1,512円」
10月下旬頃から京菓子店のショーケースを彩る、紅葉をイメージした細工羊羹。お店ごとの職人技と創作力によって、都の紅葉の姿を様々に表現します。古くから紅葉の名所が多い、京都らしいひと品です。
※販売期間限定・販売未定の菓子もあります 取材協力:京菓子協同組合

ナビゲーターらくたび 谷口 真由美さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2024年09月

