京都ツウのススメ
第百六十一回 京と虎、寅
京都ゆかりの虎たち今年の干支は寅です。京都ゆかりのある様々な虎についてらくたびの田中昭美さんが解説します。
基礎知識
其の一、
- 平安京の東西南北を守護した四神のひとつが西の方を守った白虎(びゃっこ)です
其の二、
- 毘沙門天をまつる鞍馬寺などでは、狛虎(こまとら)を見ることができます
其の三、
- 元離宮二条城の襖(ふすま)絵には、将軍家の権力を示す虎が描かれています
平安京を西から守護した白虎
2022年の干支は寅です。京都に縁のある虎と言えば、平安京の東西南北を守護した四神のひとつ・白虎が挙げられます。古代中国で発展した風水では、空想上の動物である四神に守られた土地が都にふわしいと考えられていて、白虎は都の西方を守りました。その名を冠した建物・白虎楼があるのが、平安京遷都1100年を機に創建された岡崎の平安神宮です。境内では、手水舎や神苑の池にも白虎の名を見ることができます。
珍しい狛虎が鎮座している寺も
虎は毘沙門天の使いで、その足の速さを生かし、毘沙門天の代わりとなり民衆の願いを聞いて回ったと伝えられます。このように虎は毘沙門天と関わりが深いことから、毘沙門天を本尊としてまつる鞍馬寺などでは、狛虎を見ることができます。また、京都御所の守護と将軍上洛の際の宿として築城された元離宮二条城の来訪者の控えの間には、虎が描かれた襖絵があります。将軍家の威厳を虎で表現したものと言われています。
空想上の動物・四神のひとつ
風水により、四神に守られた土地とされた京都。平安京における四神はそれぞれ川・道・池・山に相当するとされ、白虎が守護する西には大きな道があると良いとされました。
平安神宮にも白虎が
平安京への遷都1100年を記念して創建された平安神宮。境内には、都にあった朝堂院(大内裏の政庁)の様式を模して造営された建物・白虎楼があります。また境内西側の手水舎では白虎の像が迫力ある表情を見せています。
京の四方と中央を守護する5つの社をお参りする「京都五社めぐり」。東の八坂神社、西の松尾大社、北の上賀茂神社、南の城南宮、そして平安神宮を詣でます。平安京の西の守り神である松尾大社(西京区)には、白虎のおみくじがあります
虎は毘沙門天の使い
勝利の神や福徳の神である毘沙門天の使いは虎。
また、毘沙門天がこの世に現れたのは寅の年、寅の日、寅の刻などの言い伝えがあります。
鞍馬寺(左京区)
奈良時代末期、鑑禎(がんちょう)上人が、正月四日の寅の夜に見た夢のお告げと白馬の導きにより鞍馬山に登山。鬼女に襲われたところを毘沙門天に助けられたことから毘沙門天を安置する草庵を作ったのが、鞍馬寺のはじまりです。
両足院(東山区)
建仁寺の塔頭寺院・両足院には毘沙門天堂があります。本尊の毘沙門天は元は鞍馬寺の毘沙門天の胎内仏だったと言われています。境内には阿吽(あうん)の狛虎があり、虎みくじの授与もあります。
毘沙門堂(山科区)の本尊の毘沙門天は、天台宗を開いた最澄の作で、寅の日には縁日が行われます。2022年最初の寅の日は1月1日。3日まで初寅参りが行われ、虎に乗った毘沙門天が描かれた絵馬や張り子の虎が付いた福笹が授与されます
強面も、愛嬌たっぷりも
虎は権力の象徴として絵画のモチーフにもなりました。
また、豊臣秀吉にまつわるエピソードを持つ虎の絵もあります。
『虎の間』元離宮二条城 二の丸御殿 遠侍
二の丸御殿最大の建物である遠侍は、来訪者の控えの間。一の間から三の間は「虎の間」とも呼ばれ襖絵に虎や豹(当時は雌の虎だと思われていました)が描かれています。猛獣の虎を描くことで、将軍家の権力を示したのです。
世界遺産二条城の早春
「国宝・二の丸御殿〈遠侍〉一の間(虎の間) 特別入室」
会期:1/24(月)まで
会場:元離宮二条城
『竹虎図』 尾形光琳筆 | 京都国立博物館
江戸時代の終わり頃まで、多くの日本人にとって虎は絵や物語の中でのみ触れられるものでした。江戸時代中期の画家・尾形光琳が描いた虎は、愛嬌たっぷりに表現されています。
新春特集展示 「寅づくし ─ 干支を愛でる ─」
会期:1/2(日)~2/13(日)
会場:京都国立博物館
「なきとら」の通称を持つ報恩寺(上京区)には、寺宝の虎の絵「鳴虎図」があります。豊臣秀吉は、中国の画人が描いたこの絵を気に入り持ち帰りましたが、絵の中の虎が夜ごと吠えたため、寺に返したと言われています。「鳴虎図」は寅年の1月1日~3日のほか、2022年は1月8日(土)〜3月18日(金)に「京の冬の旅」でも公開されます
※1/17(月)からは複製を展示
古代中国では、1月から12月を十二支にあてはめて数え、次第に寅の年や寅の日、寅の刻のように年や日、時刻も十二支で数えました。やがて、漢字が読めない人も理解できるように、十二支それぞれに動物をあてはめるようになったと言われます。
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