
第87回
夏の京菓子

第87回
夏の京菓子

水無月
京阪的京都ツウのススメ
第87回 夏の京菓子
涼を感じる京菓子
職人の技と心遣いから生まれた、京都の夏を涼やかに演出してくれる京菓子と名店を、らくたびの森明子さんが案内します。
夏の京菓子の基礎知識
其の一、
平安時代、職人によって年中行事や四季折々の京菓子が作られました
其の二、
江戸時代、茶の湯が盛んになり、創作の京菓子が発展しました
其の三、
寒天など、涼しさを連想させる材料が使われます
四季と京菓子の歴史
平安時代、宮廷に献上される和菓子は神と人をつなぐものとして神前に供えられていました。京都で作られた、年中行事や四季を表現したお菓子などを総称して京菓子と呼び、色彩や形はもちろん、器や盛り付けにまで細かい決まりがありました。江戸時代には民衆の間で茶の湯が広がり、茶会で振る舞う京菓子が飛躍的に発展。季節を表現した職人による京菓子が一般的になりました。
知恵から生まれた夏の京菓子
京都は盆地のため、夏の蒸し暑さは厳しく、昔から京都の人は暑さをしのぐために、生活の中で様々な知恵を絞ってきました。京菓子もそのひとつで、冷たい水や氷を連想させるものとして、職人は透明感のある寒天や葛(くず)粉、わらび粉といった材料を使い涼を感じさせる工夫をしました。中でもよく使われている寒天は、奈良時代から食べていたトコロテンが元になります。1685(貞享2)年の冬、伏見の旅館の主人が外に捨て時間が経った乾物のトコロテンを再び利用したところ、臭みの無い上質な味のものになったそうです。これが後に寒天と呼ばれ、江戸時代後期から菓子の材料として広まりました。
涼菓と老舗の味
職人の知恵から生まれた夏の京菓子の代表を名店の味とともに探ります。
くずきり

鍵善良房「くずきり/950円」
鎌倉時代、中国・宋から禅僧が点心として葛菓子を持ち帰ったのが始まり。室町時代中期には麺状のくずきりが作られていたそうです。
創業約300年、祇園に本店を構える鍵善良房は、昭和初期に社寺やお茶屋などへの出前で評判を呼び、くずきりの名店として知られています。
わらび餅

先斗町駿河屋「ひと口わらび/6個入り・1,456円」
ワラビの根から取れるわらび粉を使った菓子。京都では古くから、こしあんを入れた丸い形が親しまれてきました。
花街にある、創業約110年の先斗町駿河屋では、昔ながらの作り方を守り、プルッとしてとろけるような上品な食感が特徴。土地柄、舞妓さんや芸妓さんのお客さんが多いのも京都ならではです。
醍醐天皇の好物であったため、食べ物では珍しく太夫(たゆう)の地位が与えられたと伝わります。このことから別名「岡太夫」と呼ばれます。
水ようかん

二條若狭屋「竹水羊かん/3本入り・1,198円」
江戸時代中期は葛粉や小麦粉を材料としていましたが、後に栄養価の高い寒天を使うようになりました。冬に食べる風習でしたが、冷蔵技術により夏の菓子の定番になりました。
京都では清涼感ある竹を器に見立てた形状が多く、1917(大正6)年創業の二條若狭屋では毎日届く京都の青竹を使っています。
黄檗宗の隠元禅師が「寒晒(かんざら)しのトコロテン」の意味から寒天と名付けたそうです
鮎菓子

永楽屋「若鮎/1個・216円」
清流を泳ぐ鮎の姿を模した、京都発祥の菓子。求肥(ぎゅうひ)を包んだ中国の調布(ちょうふ)菓子が原型とされ、アユ漁が解禁になる6月に販売されます。
各地ではあんを包みますが、1946(昭和21)年創業の永楽屋をはじめ京都では主に求肥のみです。
麩まんじゅう

麩嘉「麩まんじゅう/1個・237円」 ※要予約
日持ちしないため、昔から生麩を食べる習慣があった京都で作られ、食べられていた菓子。
江戸時代後期創業の京生麩専門店・麩嘉では、生麩にのりを練り込んで京都の熊笹で包み、爽やかな磯の味と涼やかな笹の香りが清涼感を引き立てます。
夏の風物詩と京菓子
京都の年中行事とつながりのある京菓子をご紹介します。
水無月(みなづき)
夏越(なごし)の祓(はらえ):6/30小豆をのせた三角形のういろう。半年の息災を祈る夏越の祓が行われる、旧暦で夏の最後の月に当たる6月に食べる風習があります。
水無月の形と色は、夏に冷たいものを口にできなかった民衆が、氷のかけらに見立てて作ったとされています
あんころ餅
土用の入りの日:今年は7/20
夏の土用の入りの日に食べるあんころ餅。精が付いて暑さが乗り切れるとされ、別名「土用餅」と言います。
したたり
祇園祭:7/13〜16
菊水鉾は、菊の露のしたたりを飲んで長寿を保ったという中国の故事にちなんで作られました。祇園祭のお茶席で、菊水鉾へ献上する菓子として京菓子店・亀廣永によって考案されたのがしたたりです。黒砂糖と寒天を主にした琥珀色のようかんで、八坂神社の宮司が菓銘を付けました。

ナビゲーターらくたび 森 明子(もり あきこ)さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2015年7月

