京都ツウのススメ
第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
祇園祭(神幸祭)
厄除けと伝わる名物のお菓子夏には、厄除けを祈る祭礼があります。今回は、厄除けの祭礼にちなむ名物として伝わる京都のお菓子をらくたびの森明子さんがご紹介します。
基礎知識
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其の一、
- 夏の京都では、各所で厄除けの祭礼が行われます
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其の二、
- 厄除けにご利益がある神社や祭礼にちなんだお菓子があります
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其の三、
- 和菓子の餡(あん)にも厄除けの意味があるとされています
厄除け祈願は夏に欠かせない祭礼
昔から夏は疫病のまん延や台風などによる風水害が発生しやすい季節でした。平安時代の京都では災いは悪霊や疫神(えきじん)によるものと考えられており、京都の夏を代表するとも言える八坂神社の祇園祭も、全国で疫病が流行した際に災厄をはらうため祈願した、祇園御霊会(ごりょうえ)が始まりと伝わります。邪気をはらい罪(つみ)や穢(けが)れを清める厄除けの祭礼は、春のやすらい祭のように季節の変わり目などにも行われます。
厄除けと伝わる名物のお菓子
神社の門前菓子には、祭礼で「神饌(しんせん)」という神様へ捧げる供物になるものがあります。特に疫病や災厄除けの祭礼のお菓子は、御祈祷を受けた後に参列者へお下がりとして配られ、食べると厄除けになると伝わり、「厄除け菓子」とも呼ばれます。また、赤い色は魔をはらうと言われ、赤い小豆を原料とするまんじゅうなどの餡を使ったお菓子も厄除けのご利益があるとされるようになりました。
病や災いをはらう厄除けの祭礼や、厄除けのご利益があるとされる神社があります。
その祭礼や神社ゆかりのお菓子には、食べると厄除けになると言われるものがあります。
稚児餅(ちごもち)二軒茶屋 中村楼(にけんちゃや なかむらろう)[東山区]
稚児餅は7月13日に行われる長刀鉾(なぎなたほこ)稚児社参と久世駒形(くぜこまがた)稚児社参の儀に供えられる神饌のひとつで、心身を清めた主人が早朝から稚児餅を作り、自ら神前に奉納します。稚児は社参の後、中村楼で主人から稚児餅のもてなしを受けます。
祇園祭/八坂神社
疫病が流行した869(貞観11)年に、神泉苑へ祇園社(八坂神社)の神輿を送り疫病退散を祈ったことが祇園祭の発祥と伝わります。稚児社参も祇園祭の儀式で、八坂神社を参拝した稚児は神の使いとされます。
「柏屋光貞」が7月16日限定で販売する「行者(ぎょうじゃ)餅」は、山伏だった先祖が修験道の開祖・役(えんの)行者からの夢のお告げで作った厄除け菓子です
唐板(からいた)水田玉雲堂(みずたぎょくうんどう)[上京区]
疫病が猛威をふるった863(貞観5)年に御霊会を行った際、神へ供えられた煎餅が唐板でした。応仁の乱で途絶えた唐板を、御靈神社の境内で茶店を営んでいた水田玉雲堂の先祖が復活させ、現在も厄除け煎餅として知られています。
御霊祭(ごりょうまつり)/
上御霊神社(かみごりょうじんじゃ)〈御靈神社〉
平安京遷都の際に無念の死を遂げた早良(さわら)親王の御霊を鎮めるため、神としてまつったことが上御霊神社の始まりとされます。5月の御霊祭の還幸祭は、最古の御霊会の様子と伝わります。
みたらし団子加茂みたらし茶屋(かもみたらしちゃや)[左京区]
みたらし団子は、下鴨神社境内の御手洗社から清水とともに湧き上がる泡を模して作られたという御手洗祭の神饌です。昔は下鴨神社の氏子が、神様に供えた後の団子を持ち帰り厄除けを願って食べました。5つの団子のうちひとつだけ離して串に刺す独特な形は、人の頭と手足を表すという説もあります。
御手洗祭(みたらしまつり)/下鴨神社
お祓いの神様をまつる御手洗社の祭礼。疫病除けや無病息災を祈願する儀式で、「足つけ神事」とも呼ばれ、みたらし池に足を浸して祈ると病難除けのご利益があると言われます。
糺(ただす)の森にある『休憩処さるや』の「申(さる)餅」は、葵祭の申の日に作られていた神饌を復活させたもの。食べることで心身が清められるとされていました
あぶり餅一文字屋和輔(いちもんじやわすけ)[北区]
神饌の餅と奉納された竹を今宮社からいただき、竹串に刺した餅を参拝者に振る舞ったのがあぶり餅の由来です。これを食べる事で「やすらい祭の花傘に入れば災厄を防ぎ1年を健康に過ごせる」という伝承と同じご利益が受けられると言われています。
やすらい祭/今宮神社
平安京遷都の前から、北区にある紫野には疫神をまつる社があり、994(正暦5)年に災厄鎮静を祈る紫野御霊会を営んだことが今宮神社の起こりです。4月の第2日曜に行われる「やすらい祭」では、桜や椿で飾った花傘に疫神を集めて疫社へ鎮め、無病息災を祈願します。
和菓子の餡(あん)も魔除け食
中国から伝来した餡は魔除けの意味がある食べ物とされ、京都の嵐山は小倉餡の発祥地と伝わっています。
餡の歴史と魔除けの理由
餡は飛鳥時代に遣隋使によって中国から伝来し、当初は肉や野菜の詰め物を餡と呼びましたが、後に小豆を使う餡ができました。中国や韓国では小豆の色に魔除けの力があると信じられ、その考えは日本にも伝わりました。
嵐山は小倉餡の発祥地
嵐山の小倉山周辺で、空海が中国から持ち帰った小豆の種が栽培され小倉餡が作られたという説があり、ふもとの二尊院には「小倉餡発祥之地」の石碑があります。
半年の穢れをはらい無病息災を祈る6月末の「夏越(なごし)の祓(はらえ)」の日に食べる、甘く炊かれた小豆が上にのった「水無月」も厄除菓子です。三角の形で暑気払いの氷を表現しています
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