京都ツウのススメ
第百四十一回 鳥居(とりい)
京都で見られる様々な鳥居神社の参道などに必ずと言っていいほど立っている鳥居。同じように見えますが、実は違いがあるのです。鳥居の見方と京都で見られる珍しい鳥居をらくたびの若村亮さんが解説します。
基礎知識
其の一、
- 神社に立つ鳥居は俗世と神域との境界を表すものです
其の二、
- 鳥居の形状は、神明系と明神系のふたつに分けられます
其の三、
- 神社の多い京都では様々な珍しい鳥居が見られます
神社の入り口で神域との境界を示す
神社の境内に見られる鳥居。その語源は諸説あり、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天の岩戸に隠れた際、神々が鳴かせた鶏が止まった木が始まりとする説や、「通り居る」という言葉が転じたとする説、インドの寺院に見られる門・トラナから来たという説などがあります。鳥居は、俗世と神域との境界を表しており、複数ある場合には「一の鳥居」、「二の鳥居」と呼ばれ、数が大きくなるほど神殿に近くなります。
素材も形状も様々な鳥居
日本には、約8万社以上の神社があると言われています。それぞれに鳥居があることを考えると、国内にはとてもたくさんの鳥居がありますが、その素材は実に様々。木や石をはじめ、金属や陶器で作られているものもあります。形状も多様ですが、笠木と呼ばれる一番上の横木の反りの有無などによって神明系と明神系の2種類に大別できます。京都で見られる鳥居のいくつかをご紹介しましょう。
鳥居は形状によって大きくふたつのグループに分けることできますが、そのバリエーションは様々。
ひとつの神社で異なった形状の鳥居を見ることもあります。
- 笠木に反りがない
- 島木がない
- 柱が垂直
鳥居の原型と考えられるもの。
笠木と貫の2本の横木を垂直に立てられた2本の柱で支えるシンプルな構成で、笠木に反りはありません。また、多くはそれに添えられる島木や地面との境目に置かれる台石もありません。
- 笠木に反りがある
- 島木がある
- 藁座や台石がある
笠木に反りがあり、また島木が添えられていることが特徴。2本の横木を八の字になった2本の柱で支える、最もポピュラーな形状です。柱の下には台石と呼ばれる土台石が置かれ、その上を藁座で補強します。
神社の多い京都では珍しい鳥居も見ることができます。
野宮神社 (ののみやじんじゃ) [右京区]
古い!
神明系鳥居の典型的な形状で、日本最古の形式の鳥居だと言われています。白木ではなく、皮付きの自然木を使用することから黒木(くろき)鳥居と呼ばれます。
御金神社 (みかねじんじゃ) [中京区]
金色!
金属の神様をまつる御金神社の鳥居は、祭神を象徴するかのように金色をしています。金色の鳥居は全国的にも珍しいものです。
八坂神社 [東山区]
大きい!
正門に当たる南楼門に立つ石の鳥居は、明神系鳥居の代表格。高さは約8m、自然石で作られた鳥居としては日本最大級だと言われています。
用いられているのは花崗岩(かこうがん)。2本の石柱を継ぎ足して作られており、高さ3m程のところに石の継ぎ目があります
錦天満宮 [中京区]
不思議!
境内にある日の出稲荷神社の鳥居は島木と貫の間に三角の装飾があります。奴禰(ぬね)鳥居と呼ばれており、全国にふたつしかないと言われています。
「奴禰」という言葉の意味や形の意味など、今なお不明な点が多い鳥居。もうひとつは伏見稲荷大社が鎮座する稲荷山の荷田社神蹟にあります
伏見稲荷大社 [伏見区]
多い!
奥社手前の二股に分かれた参道に立ち並ぶ鳥居を千本鳥居と言います。これらは稲荷大神を信仰する人々から奉納されたもの。「千本」とは実際の数ではなく、たくさんという意味だと言われています。
千本鳥居だけでなく、稲荷山一帯にも多くの鳥居が立っています。
その数は約1万基とされます
社家 (しゃけ) [北区]
家にも!
上賀茂神社の周辺には神職が暮らしたという社家の町並みが残っています。日常の出入りのための内玄関の鴨居は鳥居のような形状になっており、神職の家ならではの造りと言えます。
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