京都ツウのススメ
第百五十七回 京都とスポーツ
京都にゆかりのあるスポーツ雅やかで静かなイメージのある京都ですが、 意外にもスポーツも盛んに行われてきました。
今回は、らくたびの谷口真由美さんと一緒に、 京都と深い関わりがあるスポーツを見ていきましょう。
基礎知識
其の一、
- 軟式野球に使われるボールは、京都の文具商が考案しました
其の二、
- 日本で初めて行われた駅伝のスタート地は京都でした
其の三、
- 京都にはスポーツに欠かせない必勝祈願の神社が多くあります
軟式野球のボールは京都生まれ
ゴム製のボールを使用する軟式野球は、京都で生まれ、全国へと広がったスポーツです。京都の文具商が子供たちのためにやわらかいボールを考案したことがきっかけで、1919(大正8)年には初の軟式少年野球大会が京都で開催されました。また、1917(大正6)年には日本初の駅伝「東海道駅伝徒歩競走」が行われました。この大会は東京遷都(せんと)と50周年を記念して開催された博覧会の協賛事業で、スタート地点は京都の三条大橋でした。
多くの人が必勝祈願に訪れる勝運の神も
バスケットボールは、アメリカから日本にもたらされました。同国に留学経験のあった旧制京都一中(現・洛北高校)の英語教師によって日本初のバスケットボールチームが結成されたことから、日本でのバスケットボール競技の始まりは京都だとも言われています。また、京都にはスポーツに欠かせない勝運の神をまつる神社も多くあり、選手やチームが必勝祈願に訪れることも。今回は、京都にゆかりのあるスポーツをご紹介します。
軟式野球をはじめ、京都にゆかりの深いものを紹介します。
軟式野球― 子供たちのために京都で生まれた軟球
明治時代にアメリカから伝えられた野球。大正時代には日本でも人気スポーツとして定着し、子供たちも軟式テニスのボールを代用するなどして、野球遊びを楽しんでいました。そんな中、京都では子供が安全に野球を楽しめるようにと「京都少年野球研究会」が発足。メンバーのひとりで、文具商を営んでいた鈴鹿栄(すずかさかえ)がゴムボールに靴底を張り付けて、手が滑りにくいボールを試作。これを改良して軟球が完成しました。
最初の軟式野球大会が行われた京都第二高等小学校跡(下京区)に立つ「軟式野球発祥の地」の記念像
鈴鹿が考案したボールは、1919(大正8)年に子供用が製品化。同年夏には京都第二高等小学校(後の元・成徳中学校)の校庭で、軟球を用いた日本初の少年軟式野球大会が開かれました
駅伝― 初めての駅伝は京都からスタート
1917(大正6)年に行われた「東海道駅伝徒歩競走」が日本で初めての駅伝で、そのスタート地点は京都・三条大橋。東京・上野の不忍池(しのばずのいけ)までの約500kmを23区間に分け、関東組・関西組の2チームで争いました。3日間かけて行われたレースは、関東組が勝利しました。
三条大橋東詰の記念碑。背後の「駅伝発祥百年記念」の碑は最初の駅伝から100年後の2017年に建立
「東海道駅伝徒歩競走」のスタート地点に三条大橋が選ばれたのは、東京遷都の際に天皇が行幸した道筋をたどり、走破しようとしたからだと言われています
バスケットボール― 日本初のバスケットボールチームを結成
バスケットボールは、キリスト教の理念に沿って教育・スポーツ事業などを展開するアメリカのYMCAによって日本に紹介されました。各地に普及する中で、旧制京都一中の英語教師・佐藤金一が京都YMCAで日本初のチームを結成しました。
京都YMCA三条本館(中京区) の敷地に立つ記念モニュメント
関西ラグビー― 親戚間で伝えられたラグビー
日本にラグビーが伝えられたのは1899(明治33)年。イギリス人・E.B.クラークが慶應義塾大学で指導したことに始まります。慶應義塾大学チームの真島進が、京都に下宿していた親戚の旧制三高(現・京都大学)生・堀江卯吉らを訪ね、下鴨神社境内の糺の森で一緒に練習したのがきっかけで、1910(明治43)年、三高にラグビー部が誕生しました。
糺の森にある雑太社のさい銭箱はラグビーボールの形
下鴨神社の摂社・雑太社(さわたしゃ)には「第一蹴の地」の碑があり、2019年のラグビーW杯の組み合わせ抽選会が京都で行われた際、各国の代表がこの地を訪れました
スポーツをする前には訪れたい!
京都には勝運や技術上達のご利益がある神社が多くあります。
八大神社(左京区)
江戸時代に活躍した剣術家・宮本武蔵が1604(慶長9)年、京都の兵法家・吉岡一門と決闘する前に参詣したと伝えられ、武蔵の勝利にあやかって必勝祈願に多くの人が訪れます。
白峯神宮(上京区)
蹴鞠の宗家・飛鳥井(あすかい)家の邸宅跡に立つ神社で、鞠の神である「精(せい)大明神」をまつります。サッカーや野球をはじめとする球技の上達や勝利を願う人が足を運びます。
藤森神社(伏見区)
菖蒲(しょうぶ)の節句の発祥として知られる神社。菖蒲が「勝負」に通じることから勝運の神として有名で、例年5月に行われる藤森祭の際に奉納される駈馬(かけうま)神事にちなみ、馬主や騎手・競馬ファンの参拝も多くみられます。
- 第百九十三回 秋の京菓子
- 第百九十二回 京都の植物
- 第百九十一回 京都の風習
- 第百九十回 幻の巨椋池(おぐらいけ)
- 第百八十九回 京都と魚
- 第百八十八回 京都とお花見
- 第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
- 第百八十六回 京都の地ソース
- 第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
- 第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
- 第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
- 第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
- 第百八十一回 京都の中華料理
- 第百八十回 琵琶湖疏水と京都
- 第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
- 第百七十八回 京都と徳川家
- 第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
- 第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
- 第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
- 第百七十四回 京の難読地名
- 第百七十三回 京の縁日
- 第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
- 第百七十一回 京都の通称寺
- 第百七十回 京都とキリスト教
- 第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
- 第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
- 第百六十七回 京の城下町 伏見
- 第百六十六回 京の竹
- 第百六十五回 子供の行事・儀式
- 第百六十四回 文豪と京の味
- 第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
- 第百六十二回 京都のフォークソング
- 第百六十一回 京と虎、寅
- 第百六十回 御火焚祭
- 第百五十九回 鴨川の橋
- 第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
- 第百五十七回 京都とスポーツ
- 第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
- 第百五十五回 京都の喫茶店
- 第百五十四回 京の刃物
- 第百五十三回 京都の南蛮菓子
- 第百五十二回 京の社家(しゃけ)
- 第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
- 第百五十回 京のお雑煮
- 第百四十九回 京の牛肉文化
- 第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
- 第百四十七回 明治の京都画壇
- 第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
- 第百四十五回 ヴォーリズ建築
- 第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
- 第百四十三回 京の人形
- 第百四十二回 京の社寺と動物
- 第百四十一回 鳥居(とりい)
- 第百四十回 冬の食べ物
- 第百三十九回 能・狂言と京都
- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
- 第百三十六回 京都とビール
- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
- 第百三十四回 精進料理
- 第百三十三回 明治時代の京の町
- 第百三十二回 皇室ゆかりの建物
- 第百三十一回 京の調味料
- 第百三十回 高瀬川
- 第百二十九回 蹴鞠
- 第百二十八回 歌舞伎
- 第百二十七回 京都に残るお屋敷
- 第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
- 第百二十五回 京の学校
- 第百二十四回 京の六地蔵めぐり
- 第百二十三回 京の七不思議<通り編>
- 第百二十二回 京都とフランス
- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
- 第百十八回 京都の路面電車
- 第百十七回 神様への願いを込めて奉納
- 第百十六回 京の歴食
- 第百十五回 曲水の宴
- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
- 第百十三回 パンと京都
- 第百十二回 京に伝わる恋物語
- 第百十一回 鵜飼(うかい)
- 第百十回 扇子(せんす)
- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
- 第百七回 幻の京都
- 第百六回 京の家紋
- 第百五回 京の門前菓子
- 第百四回 京の通り名
- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
- 第百回 夏の京野菜
- 第九十九回 若冲と近世日本画
- 第九十八回 京の鍾馗さん
- 第九十七回 言いまわし・ことわざ
- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
- 第九十一回 京の庭園
- 第九十回 琳派(りんぱ)
- 第八十九回 京の麩(ふ)
- 第八十八回 妖怪紀行
- 第八十七回 夏の京菓子
- 第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
- 第八十五回 新選組
- 第八十四回 京のお弁当
- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
- 第八十回 義士ゆかりの地・山科
- 第七十九回 京の紅葉
- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
- 第七十六回 京のお地蔵さん
- 第七十五回 京の名僧
- 第七十四回 京の別邸
- 第七十三回 糺(ただす)の森
- 第七十二回 京舞
- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
- 第六十回 京狩野派
- 第五十九回 京寿司
- 第五十八回 京のしきたり
- 第五十七回 百人一首
- 第五十六回 京の年末
- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
- 第五十三回 観月行事
- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
- 第五十回 京の暖簾
- 第四十九回 大原女
- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
- 第三十六回 京都御所
- 第三十五回 京の通り
- 第三十四回 節分祭
- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
- 第二十七回 京の納涼床
- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
- 第八回 顔見世を楽しむ
- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方