京都ツウのススメ
第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
柚子湯に浸かって
邪気を払う冬至体を清めて温める柚子湯など、京都における冬至の風習について
「らくたび」の森明子さんがご紹介します。
基礎知識
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其の一、
- 冬至は、季節を春夏秋冬からさらに6つに分けた二十四節気(にじゅうしせっき)のひとつです
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其の二、
- 冬至の日には、1年間風邪をひかないように柚子湯に入る風習があります
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其の三、
- 「水尾(みずお)の柚子」は京都の食文化を支える重要な存在です
伝統的な冬至の風習
北半球では1年で1番昼が短く夜が長い日である冬至。冬至の日の過ごし方は特徴があり、「ん」がふたつ付くもの(=運の付くもの)を食べることで運を呼び込むという考え方があります。京都では、なんきん(カボチャ)・れんこん・かんてん・ぎんなん・にんじん・きんかん・うんどん(うどん)を冬至の七種(ななくさ)と呼び、これらを食べることで厄除けや様々な病気の予防を願う意味もあります。
柚子の栽培は京都発祥
風呂に柚子を浮かべる「柚子湯」も冬至の風習です。奈良時代、中国から伝わった冬至の行事を、聖武天皇が宮中行事として定着させました。柚子湯もそのひとつで、天皇や貴族の間では邪気を払う冬の入浴法に。また、柚子の多くは貴族の邸宅に植えられていましたが、鎌倉時代に花園天皇が水尾に柚子を植えさせたことから農業としての栽培が始まりました。以来、京都では柚子を柚(ゆう)と呼び、京料理など京の食文化に必要な食材として育てられ、水尾の柚子農家では柚子風呂なども楽しめます。
冬至は年によって12月21日または22日に変動します。2022年は12月22日(木)です。太陽の力が1番弱い日であるため、「死に1番近い日」とされ厄を払うために体を温めて無病息災を祈る風習が生まれました。昼が最も長い夏至以降、毎日短くなっていた日照時間が、この日を境に長くなっていくことから、昔の人は太陽の力が再びよみがえっていくと考え、冬至のことを「一陽来復」とも呼びました。これは、万物の生成を陰と陽のふたつの気に分ける古来の考え方に由来します。冬至だけでなく、冬が去りまた春が来ることや、新年を迎える場合も「一陽来復」と言います。
「冬至の七種」のうち、なんきん(カボチャ)の煮物である『おかぼの炊いたん』は、京都の代表的な冬至の食べ物です。夏の野菜ですが、長期保存ができ、カロテンやビタミン類が豊富であるため、食料の乏しかった冬に重宝しました。加えて、カボチャの黄色が「太陽と同じ色のものを食べると力が蓄えられる」、「魔除けの色」と考えられていたことから、古くから縁起の良い食べ物とされていました。また、冬至の日に無病息災を祈願し、甘く炊いたカボチャが振る舞われる社寺もあります。
柚子の産地としては、江戸時代から栽培が始まった高知県や埼玉県などが有名ですが、京都の柚子はさらに歴史が古く、鎌倉時代に第95代花園天皇が都の郊外にある水尾に柚子を植えさせたのが始まりとされています。1日の寒暖差が大きく、標高約250~270mの寒冷な気候と、愛宕山からの良質な伏流水によって育てられます。昔から大きな実となり、香り高く、味も濃く、京料理や京菓子に欠かせない食材です。9月に青柚子が、12月には黄柚子が収穫され、箱からあふれんばかりに山積みされた様子が各家の軒先で見られます。
かつて、日本の柚子といえば水尾の柚子と言われ、水尾は「柚子栽培発祥の地」とされています。鎌倉時代以降、種から育てる実生(みしょう)栽培にこだわっています
京都市右京区の愛宕山(あたごやま)のふもとにある、柚子畑が集落を囲む山里です。京都市と亀岡市の間に位置し、昔は山城・丹波の両国を結ぶ要所となる村でした。平安時代より、東の八瀬・大原に対する西の清浄幽邃境(せいじょうゆうすいきょう=世俗を離れた清浄な地)として、宮中の人々に知られていました。
水尾では例年10月頃~3月頃まで、7軒の柚子農家で「柚子風呂」に入り、「鶏すき」か「水炊き」を楽しむことができます。柚子農家による特産品を使ったおもてなしとして、昭和30年代に始まりました。要予約。
※詳しくは水尾保勝会のホームページをご覧ください
鶏すきには大根おろしに柚子を、水炊きにはしょう油に柚子の果汁を絞り入れて味わいます
今や「冬至の日は柚子湯に入る」ことが冬の風物詩となっていますが、庶民に広まったのは江戸時代。昔は風邪も邪気のひとつとされ、柚子の強い香りが邪気を払うと考えられていました。「柚子湯に入ると風邪を引かない」と言われています。実際、柚子湯に入ると血行を促進して体が温まり、肩こり・腰痛・冷え性・むくみが緩和されるとされ、健康的に冬を越すための昔ながらの知恵とも言えます。
京都の銭湯では、毎年冬至の日に柚子風呂を実施。冬至が定休日と重なると、その前後の日に行う銭湯もあります
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