京都ツウのススメ
第百二十三回 京の七不思議<通り編>
京の通りに伝わる七不思議京都には社寺だけでなく、通りに伝わる七不思議もあります。
そのひとつ、新京極通の七不思議をらくたびの渡部里保さんが紹介します。
基礎知識
其の一、
- 特定の場所で起こる奇妙な出来事を7つ集めたものを七不思議と言います
其の二、
- 七不思議は歴史的な伝承や怪奇現象など様々です
其の三、
- 社寺には、ご利益に通じる七不思議もあります
七不思議の「七」の由来
不思議とは、ある特定の地域や場所にまつわる説明のつかない現象や言い伝えを集めたもののことで、その内容は歴史的な伝承や自然現象、怪奇現象など様々です。7つを取り合わせることの由来は定かではありませんが、七福神や七草など7つをまとめる習わしはほかにも見られます。また仏教では「七」が「忌み」を払い、良い方向へ導く数字とされています。日本において「七」は、古くから特別な数字として扱われてきたことも理由のひとつだと考えられます。
京都で伝えられている七不思議
京都にはたくさんの七不思議があります。その多くは社寺に伝わる物語や伝承ですが、名所や旧跡の多い京都では、七不思議として数えることでその場所を際立たせるという、言わば観光案内のような役割を兼ねているのかもしれません。また、新京極通、出水通、堀川通など通りに伝わる七不思議もあります。今回は、いつも多くの人でにぎわう新京極通の七不思議を紹介します。
いつもにぎわう新京極通には、
いろいろな“フシギ”が隠れています。
新京極通とは…
河原町通のひと筋西を南北に走る通りで、三条通から四条通までの約500mを結んでいます。室町時代から縁日の舞台としてにぎわい、1872(明治5)年に通りとして整備されました。
現在は、飲食店や土産物店などが軒を連ね、観光客や修学旅行生が多く訪れています。
タラタラ坂
三条通から南へ向かうと、「タラタラ坂」と呼ばれる緩やかな坂道が現れます。東側の河原町通にも西側の寺町通にも坂はなく、新京極通にだけこの傾斜が見られます。
坂を下る時に草履のかかとの当たる音が「タラタラ」と聞こえたことから、この名が付いたと言われます
誓願寺(せいがんじ)の道しるべ
通常、道しるべには行き先が刻まれているものですが、誓願寺門前の道しるべは「迷子みちしるべ」。右側に「教ゆる方」、左側に「さがす方」と彫られており、左側に探しているものを書いた紙を貼ると見つかるとも言われています。
このような石碑は、不思議な縁を取り持つ石という意味で「奇縁氷人石(きえんひょうじんせき)」とも呼ばれ、八坂神社などでも見られます
誓願寺の阿弥陀如来
かつて誓願寺には、胎内に五臓六腑を持つ阿弥陀如来があったと伝わります。それは、日本で初めて人体解剖を行った医学者・山脇東洋が、解剖したある囚人の霊を弔うために寄進したものでした。実はその囚人は無実の罪で死刑になったと東洋の夢に現れて訴えていたそうで、寄進後、東洋の枕元に囚人の幽霊が立つことはなくなったと言われています。
倒蓮華(さかれんげ)の阿弥陀如来
安養寺の本尊は、逆さまの蓮台に立つ阿弥陀如来。平安時代に本尊を造る際、蓮台が何度も割れるので、逆さまにしたところ割れなくなったのだとか。それ以来、安養寺は倒蓮華寺と呼ばれ、女人往生・守護のご利益があると言われるようになりました。
毎月の洛陽六阿弥陀功徳日(7月は14日)に参拝可
仏教において、蓮の花は仏の悟りを表す特別な花だと考えられています。当時、女性は業が深く、心の蓮華が逆さになっているため往生できないと言われていました。この仏像は、自らが逆さの蓮華の上に立つことで、その誤りを諭しているとされています
未開紅(みかいこう)の梅(通常非公開)
誓願寺の塔頭・長仙院には、つぼみの間は紅色ですが、なぜか白い花を咲かせるという梅の花があります。
和泉式部の塔
誠心院の境内にある宝筐印塔は「和泉式部塔」と呼ばれ、和泉式部の墓だと伝えられています。これは和泉式部が誠心院の初代住職を務めたとされることから。しかし、和泉式部の晩年については未だ謎に包まれたままです。
染殿(そめどの)地蔵(通常非公開)
染殿院の本尊は、京都ではここでしか見られないという裸の地蔵菩薩。平安時代、文徳天皇の妃・藤原明子(ふじわらのめいし)が子供を授かるようにこの地蔵菩薩に願ったところ、たちまち懐妊し、無事に皇子を出産したそう。この言い伝えから、染殿院は子授けのご利益で知られるようになりました。
※言い伝えには諸説あります
- 第百九十三回 秋の京菓子
- 第百九十二回 京都の植物
- 第百九十一回 京都の風習
- 第百九十回 幻の巨椋池(おぐらいけ)
- 第百八十九回 京都と魚
- 第百八十八回 京都とお花見
- 第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
- 第百八十六回 京都の地ソース
- 第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
- 第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
- 第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
- 第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
- 第百八十一回 京都の中華料理
- 第百八十回 琵琶湖疏水と京都
- 第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
- 第百七十八回 京都と徳川家
- 第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
- 第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
- 第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
- 第百七十四回 京の難読地名
- 第百七十三回 京の縁日
- 第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
- 第百七十一回 京都の通称寺
- 第百七十回 京都とキリスト教
- 第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
- 第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
- 第百六十七回 京の城下町 伏見
- 第百六十六回 京の竹
- 第百六十五回 子供の行事・儀式
- 第百六十四回 文豪と京の味
- 第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
- 第百六十二回 京都のフォークソング
- 第百六十一回 京と虎、寅
- 第百六十回 御火焚祭
- 第百五十九回 鴨川の橋
- 第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
- 第百五十七回 京都とスポーツ
- 第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
- 第百五十五回 京都の喫茶店
- 第百五十四回 京の刃物
- 第百五十三回 京都の南蛮菓子
- 第百五十二回 京の社家(しゃけ)
- 第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
- 第百五十回 京のお雑煮
- 第百四十九回 京の牛肉文化
- 第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
- 第百四十七回 明治の京都画壇
- 第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
- 第百四十五回 ヴォーリズ建築
- 第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
- 第百四十三回 京の人形
- 第百四十二回 京の社寺と動物
- 第百四十一回 鳥居(とりい)
- 第百四十回 冬の食べ物
- 第百三十九回 能・狂言と京都
- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
- 第百三十六回 京都とビール
- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
- 第百三十四回 精進料理
- 第百三十三回 明治時代の京の町
- 第百三十二回 皇室ゆかりの建物
- 第百三十一回 京の調味料
- 第百三十回 高瀬川
- 第百二十九回 蹴鞠
- 第百二十八回 歌舞伎
- 第百二十七回 京都に残るお屋敷
- 第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
- 第百二十五回 京の学校
- 第百二十四回 京の六地蔵めぐり
- 第百二十三回 京の七不思議<通り編>
- 第百二十二回 京都とフランス
- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
- 第百十八回 京都の路面電車
- 第百十七回 神様への願いを込めて奉納
- 第百十六回 京の歴食
- 第百十五回 曲水の宴
- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
- 第百十三回 パンと京都
- 第百十二回 京に伝わる恋物語
- 第百十一回 鵜飼(うかい)
- 第百十回 扇子(せんす)
- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
- 第百七回 幻の京都
- 第百六回 京の家紋
- 第百五回 京の門前菓子
- 第百四回 京の通り名
- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
- 第百回 夏の京野菜
- 第九十九回 若冲と近世日本画
- 第九十八回 京の鍾馗さん
- 第九十七回 言いまわし・ことわざ
- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
- 第九十一回 京の庭園
- 第九十回 琳派(りんぱ)
- 第八十九回 京の麩(ふ)
- 第八十八回 妖怪紀行
- 第八十七回 夏の京菓子
- 第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
- 第八十五回 新選組
- 第八十四回 京のお弁当
- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
- 第八十回 義士ゆかりの地・山科
- 第七十九回 京の紅葉
- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
- 第七十六回 京のお地蔵さん
- 第七十五回 京の名僧
- 第七十四回 京の別邸
- 第七十三回 糺(ただす)の森
- 第七十二回 京舞
- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
- 第六十回 京狩野派
- 第五十九回 京寿司
- 第五十八回 京のしきたり
- 第五十七回 百人一首
- 第五十六回 京の年末
- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
- 第五十三回 観月行事
- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
- 第五十回 京の暖簾
- 第四十九回 大原女
- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
- 第三十六回 京都御所
- 第三十五回 京の通り
- 第三十四回 節分祭
- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
- 第二十七回 京の納涼床
- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
- 第八回 顔見世を楽しむ
- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方