
第106回
京の家紋

第106回
京の家紋

京阪的京都ツウのススメ
第106回 京の家紋
継承される家紋
家紋は、先祖から伝わる大切な印。
家紋にはどのような意味が込められているのか、らくたびの若村亮さんが紹介します。
京の家紋の基礎知識
其の一、
平安時代、公家が牛車(ぎっしゃ)に独自の文様を付けたのが始まりです
其の二、
家紋は名字に代わるものとして、様々な場所で用いられました
其の三、
代々受け継がれ、現在、約24,000種類あると言われています
家紋の起源
平安時代、公家たちを乗せた牛車で内裏(だいり)は混雑していました。それを見分けるために、独自の文様を付けたのが家紋の始まりとされています。建保・承久年間(1213~21年)の書物「大要抄(だいようしょう)」にもその時の様子が記され、名字に代わるものとして図形で一族を表す家紋が普及していたことが分かります。また、当時は“家の紋”や“紋所”、“ご紋”などと呼ばれていたそうです。
家紋の役割
平安時代、公家の衣服や調度品に付けられていた家紋は、花鳥風月など写実的なものが描かれていました。鎌倉時代から室町時代になると、武家が戦の際に敵味方を見分けられるように簡単で明快な図案のものが多くなり、次第に家紋の種類も増えていったそうです。戦国時代に入ると戦意などを表すという意味も加わり、個性的な図案になりました。江戸時代には庶民にも広がり、先祖から譲り受けて子孫につなげることや家を守る意味を込めて、表札や墓石にも用いられるようになりました。その後バリエーションも増え、多種多様な家紋が現在に伝わっています。
京都ゆかりの家紋を知る
家紋は名字と同じように、子孫繁栄を願う先祖の思いとして、代々一族に受け継がれています。
その形や種類、京都と深い関係のある家紋について探ります。
家紋の種類
家紋には様々なモチーフと由来があります。ここでは代表的な分類を紹介します。
植物

花や草木など、植物をモチーフにした紋は最も種類が多く、自然の美しさが上品に描かれているため公家に好まれました。
動物

鳥や蝶、鷹の羽などを用いた動物紋は、武士が武勇を誇示する意味で使いました。
建造物

井戸の枠(=井桁や井筒)や庵、社寺の建造物などを表しています。
調度品

武具やくし・銭などの生活用品をモチーフにした紋です。
文様

直線や曲線を幾何学的に図案にした文様紋は、巴や鱗(うろこ)、亀甲などがあります。
文字

名字やゆかりのある字などから用いたものが多く、幸福や繁栄の願いが込められています。
自然

太陽や月、波などの自然がモチーフ。昔は自然を利用した吉凶占いが行われており、信仰の対象であったこれらを紋として使用しました。

紋に関わる職業 紋上絵師(もんうわえし)とは
着物に家紋を描く職人を「紋上絵師」と呼びます。伝統芸能や茶道、華道などの装束、衣装にも用いられるため、京都には技術の高い紋上絵師が多く集まりました。
京都の社寺などで見られる紋
菊紋(きくもん)

菊が群生した沢の水を飲むと長寿が得られるという中国の伝説や、菊の花弁が太陽の光に似ていることから、日本では皇室が菊紋を用いるようになりました。
鎌倉時代初期に後鳥羽上皇が菊を好み愛用していたことから、菊紋が皇室の紋様となったと言われています
梅紋(うめもん)

平安時代の右大臣・菅原道真が梅を愛でたことから、道真ゆかりの北野天満宮では梅紋を用いました。また、天神信仰のある多くの家が梅紋をモチーフにした家紋を使っています。
木瓜紋(もっこうもん)

木瓜紋は子孫繁栄の意味を持つ鳥の巣をかたどっていると言われています。社寺で多く用いられる御簾(みす)の紋様であることから、縁起が良いとされています。
祇園地域では木瓜紋がキュウリの切り口に似ていることから、祇園祭の間は口にしない習わしです
葵紋(あおいもん)

葵は賀茂神社の神草で、祭器などに付けられ神紋として扱われました。毎年5月に行われる葵祭では、葵紋が付いた冠・牛車・桟敷(さじき)の御簾などが使われます。のちに、賀茂神社の氏子や信仰する家の家紋になりました。
上賀茂神社と下鴨神社の紋は二葉葵で、別名・賀茂葵とも呼ばれています。葵は「あふひ」と読み、「ひ」は神霊のことから「神と逢う」の意味で神紋となったとされています
※由来や分類には諸説あります
※掲載している紋章は代表的な形で、本文中の社寺などのものとは異なる場合があります

ナビゲーターらくたび 若村 亮さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2017年2月

