京都ツウのススメ
第五十四回 京の城
- 其の一、
- 山城(やましろ)・平城(ひらしろ)・平山城(ひらやましろ)の3つに分類され、平城は政庁としても使われました
- 其の二、
- 戦国時代の京都には20以上の城がありました
- 其の三、
- 唯一市内に現存する二条城は、江戸時代の都の動乱を見守った城です
城の役割や種類
城は、敵の襲来を防ぐ役割を持つことはもちろん、君主の生活の場になることも多かったようです。柵や土で築いた砦で囲っただけのものから、濠(ほり)・天守閣を設けたものまで形は様々。立地の条件から、山上にある山城、平地の平城、平地でも丘などに築かれた平山城の3種類があり、戦国時代初期までの主流は砦(とりで)である山城でした。京都にも如意岳城(にょいがたけじょう)や中尾城など多くの山城がありましたが、やがて戦乱が収まるにつれ政庁として利用しやすい二条城や聚楽第(じゅらくだい)などの平城が増えていきました。
洛中の城 二条城の歴史
二条城は、徳川家康が京都における拠点として1603(慶長8)年に築いた城。大坂冬・夏の陣ともに、家康はここから出陣しました。現在の規模になったのは3代将軍・家光の時代。後水尾天皇の行幸に備えて大増築が行われ、完成した二の丸御殿の障壁画は、若き狩野探幽率いる狩野派が描きました。探幽が手掛けたと言われる大広間は、江戸時代の終わりに15代将軍・慶喜が大政奉還を宣言した歴史の大舞台に。その後二条城は明治天皇の離宮となりますが、昭和に入り宮内省から京都市へ下賜。1994(平成6)年には、ユネスコの世界遺産に登録されています。
“二条城”と呼ばれた城は複数ありました。足利尊氏が二条通に室町幕府を開いて以来、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康がそれぞれ独自に築いています
最後の将軍・慶喜は、通用門である西門から城を去りました。西門近くの休憩所では、天下統一を目前にした織田信長が築いた二条城の石垣の一部を見ることができます。
築城時には天守閣の一部があった場所とされ、幕末までは役人の屋敷が並びました。大正天皇即位式では饗宴会場、終戦後は進駐軍のテニスコートになったことも。1965(昭和40)年に造園された庭が現在の清流園です。
京都は北極星(真北)に対して碁盤の目に造られた町ですが、二条城の敷地は少しズレています。これは、築城時の測量に方位磁石を利用したという説が有力。磁石が示す北(磁北)は真北と少し誤差があるためです
3代将軍・家光の時代、本丸は5層の天守閣と4棟の御殿で構成されていましたが、いずれも焼失。現在の建物は、京都御所の北にあった旧桂宮御殿を移築したものです。
上洛時、将軍が滞在したり諸大名と面会したのが二の丸御殿。大名に徳川家の威厳を示す大広間などにはダイナミックな障壁画が、対して将軍の私的な部屋には、落ち着いた淡彩の山水画などが描かれています。約800枚にものぼる襖絵は、狩野探幽が狩野派のリーダーとして初めて任された大仕事でした。部屋によって雰囲気がガラリと変わる点に注目を。
小堀遠州作庭と伝わる武家好みの書院庭園。仙人が住むという蓬莱島など不老長寿の象徴が据えられ、徳川家が栄えることへの願いがみてとれます。
江戸時代初期の唐門では最大級と言われ、徳川家の権力がしのばれます。しかし明治維新後、二条城は天皇の離宮となり、唐門の紋も葵から菊に変えられました。
<元離宮二条城>
地下鉄二条城前駅下車すぐ
写真提供:元離宮二条城
※唐門は現在修復工事中です
安土桃山時代、豊臣秀吉が関白となって初めて築いた城。「第」には“邸宅”の意味があり、絵画史料などからは天守閣があったことも明らかで、立派な城であったことが分かります。今でも城跡近くには聚楽第ゆかりの町名が残っています。
<聚楽第>
祇園四条駅から市バス12 堀川中立売下車 西へすぐ
<伏見城>
丹波橋駅下車 東へ徒歩約20分
大坂と京都を結ぶ重要地点であった伏見にも、秀吉は城を築きました。豊臣家が滅びた後、城跡が桃園になったことから一帯は桃山と呼ばれ、「桃山時代」の語源となったと言われています。現在は、伏見城をモデルにした昭和の天守閣が立っています。
五山の送り火で知られる大文字山の山頂にも城がありました。本格的に建物が築かれたわけではなく、陣所としての意味合いが強かったと考えられています。造られた時期は定かではありませんが、室町時代に起こった応仁の乱以降、度々、陣が敷かれたようです。
如意岳城のあった大文字山は、京都から東国に通じる要所。この重要ポイントを抑える砦としての役割がありました
<如意岳城>
出町柳駅から京都バス 51 56
または市バス17 102 203
銀閣寺道バス停下車 南東へ徒歩約50分
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