
第168回
お精霊(しょらい)さんのお供え

第168回
お精霊(しょらい)さんのお供え

五山の送り火「大文字」
京阪的京都ツウのススメ
第168回 お精霊(しょらい)さんのお供え
ご先祖様を思う京都人の心
京のしきたりのひとつである、お盆のお供えについて「らくたび」の谷口真由美さんがご紹介します。
お精霊(しょらい)さんのお供えの基礎知識
其の一、
京都ではご先祖様の霊を「お精霊さん」と呼びます
其の二、
家では「お精霊さん」をおもてなしする特別な食事をお供えします
其の三、
4日間の献立は、お精霊さんに合わせて精進料理が基本となります
ご先祖様を供養する行事
ご先祖様を供養する伝統行事の中でも、8月13日から16日のお盆は特別なもの。京都では、ご先祖の霊やお盆のことを親しみを込めて「お精霊さん」と呼びます。お盆の前には「迎え鐘」をつき、家の門口で「迎え火」を焚くなどしてお迎えし、4日間おもてなしをして、16日の夜に矢田寺(中京区)の「送り鐘」や家の門口での「送り火」などであの世に送り出します。16日には「五山の送り火」も行われます。
お精霊さんをおもてなし
家にお迎えしたお精霊さんへのお供えと家の献立は、湯葉・麩・小芋・ずいき・あらめ・ぜんまい・夏野菜を使った精進料理が中心となります。だしを取る際も、鶏やカツオなどの生き物は「生臭(なまぐさ)もの」と呼んで使わず、お団子など、その日の決まった料理をご先祖様にお供えする習慣があります。また同じ料理が家庭の夕食にも並びます。ご先祖様を思う気持ちを込めた料理であり、各家庭で代々の献立を引き継いでいます。
お精霊さんをお迎えする習慣
平安時代から中世にかけて、死者を葬る風葬地がありました。
平安京の頃より、貴族は火葬されていましたが、一般の人が亡くなると鳥辺野など都の郊外へと運び、風葬であの世へと送っていました。やがてお盆の時期には、ご先祖様の霊を風葬地の入り口近くまで迎えに行き、樹木を手で折ってそこに霊を乗せて家に連れて帰るように。その後風葬地の入り口にお寺とお墓が建てられるようになると、お寺に迎えに行くようになりました。
京都三大風葬地と入り口のお寺
東/鳥辺野(とりべの)
清水寺南側から泉涌寺付近。
六道(ろくどう)さん〈六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)〉/東山区
西/化野(あだしの)
嵐山の北・嵯峨野にある嵯峨鳥居本地区付近。
化野念仏寺(あだしのねんぶつじ)/右京区
北/蓮台野(れんだいや)
船岡山の北西から紙屋川までの一帯。
千本ゑんま堂(せんぼんえんまどう)〈引接寺(いんじょうじ)〉/北区
お精霊さんをお迎えするお供えもの
8月の前半は、お精霊さんをお迎えし、おもてなしをする期間。精進料理と特別な料理を作ってお供えします。
家庭や宗派によって違いはありますが、この期間の食事は、精進料理であることが基本です。生臭さを避けるために、だしは昆布だけで取り、四ツ足(動物)のものは食べず、ナスのおひたしや夏野菜の天ぷら・煮物など、薄味でやわらかく、さっぱりしたものを作ります。そして8月13日から16日のお供えの料理は、その日の家族の食事に。お精霊さんのお下がりをいただく意味があります。
また、「ご先祖様は常に家にいる」とする浄土真宗の家など、お迎え・送りのしきたりのない家もあります。
7日~12日
お精霊迎え
六道さん(六道珍皇寺)や千本ゑんま堂(引接寺)では、参拝者は迎え鐘をついてお精霊さんを家へとお迎えします。家に帰られたお精霊さんは、井戸などの涼しいところで待っていただき、その間に仏壇やお墓をきれいにして整えます。
夜になると、火を付けたろうそくを持って、家の近くの辻や玄関先までお精霊さんを迎えに行く家もあります。ろうそくの火が消えるまで待って家に戻ります。
13日

お迎え団子
餅粉で作り、丸く整えたお団子。お精霊さんにあの世からの道中の疲れを癒してもらうためという意味で供えます。
かつての京都は職人の家や商いをする家が多く、その忙しさから、おばんざいなど家庭で食べるおかずを店で買っていました。お盆にお供えする団子やおはぎ、白蒸しも、作るより買うのが当たり前。そのため、お盆前になると、京都の餅屋さんの店先にはお迎え団子などの品書きが並び、夏の風物詩のひとつになっています。
14日

おはぎ
小豆の魔除け効果と、もち米の五穀豊穣を祈願する意味を込めてお供えします。お供え団子から派生しました。
15日

白蒸しのおこわ、そうめんなど
餅米だけの場合と黒豆や五穀を混ぜて炊く場合があります。
16日

送り団子、あらめとお揚げさんのたいたん(あらめと油揚げの煮物)
送り団子はお迎え団子と同じですが、道中やあの世で食べてもらうという意味があります。
16日の朝、あらめ(昆布の仲間)の黒くなったゆで汁を、玄関先や家の門口に撒きます。そうすることで、お精霊さんが未練を残さず無事にあの世に帰れるとされます。このことから、ゆで汁そのものと門口にまく行為を「追い出しあらめ」と呼びます。
京都では食の名付け方も独特です。3時にお供えするお精霊さんのおやつを、食事が朝・夕の2回だった頃の間食に由来する京ことばで、「間水(けんずい)」と言い、ご先祖様や仏様にお供えする白餅のことを「おけそくさん」と呼んでいます。

仏前にお供えものを置く際の足の長い台を「華〈花〉足(けそく)」と言います。この器の名前から、上に盛る餅を「おけそくさん」と呼ぶようになりました。

ナビゲーターらくたび 谷口 真由美さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2022年8月

