京都ツウのススメ
第百六十五回 子供の行事・儀式
写真協力:神谷 潔
子供の成長を願う行事や儀式虚空蔵菩薩にお参りする十三まいりなど、子供の成長過程の中で行われる行事や儀式を「らくたび」の谷口真由美さんが紹介します。
基礎知識
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其の一、
- 京都には、子供の成長を祝う行事や儀式が多く伝わります
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其の二、
- 「十三まいり」や成人の儀式など年齢の節目に行うものがあります
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其の三、
- 夏にはお地蔵様に町内や子供の無事を願う「地蔵盆」が行われます
数え年13歳で虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)にお参り
七五三や端午の節句のような子供の成長を祝う行事は全国にありますが、京都には古くから伝わる行事がほかにもあります。年齢の節目に行われるものとしては、数え年で13歳になった子供が虚空蔵菩薩にお参りし、智恵や福徳を授けてもらう「十三まいり」が知られています。また、数え年で15〜16歳を迎えた男子が、大人の仲間入りをしたことを氏神様に報告し祝ってもらう、昔ながらの成人の儀式が伝わる地域もあります。
子供の健やかな成長を祈願
8月の「地蔵盆」では、お地蔵様に町内や子供の安全を祈願します。お地蔵様にお化粧し、ほこらの周囲を飾り付け、福引きなどの遊びを楽しむ夏の風物詩です。また、生後100日頃に、赤ちゃんが一生食べ物に困らないようにと行う「食べ初め」は、平安時代にも行われていた儀式。京都では「先に延ばした分だけ長生きできる」という言い伝えから、生後120日以降に行うこともあります。大人が子供の成長を願うのは、昔も今も同じです。
仏様や神様にお参りして智恵を授けてもらったり、
大人の仲間入りを報告する風習が受け継がれています。
数え年で13歳を迎えた子供が、智恵と福徳の神様である虚空蔵菩薩にお参りします。嵐山の法輪寺では春と秋に十三まいりが行われ、お参りの後に渡月橋を渡る際には、渡り切るまで振り返ってはいけないとされます。振り返ると授かった智恵が逃げると言われています。
平安時代、清和天皇が数え年で13歳になった時、成人の証として法輪寺で法要を催したのが、十三まいりの始まりと伝わります
法輪寺
お地蔵様をまつり、地域の子供の成長を願う地蔵盆は、地蔵菩薩の縁日である8月24日頃に行われます。ほこらを飾り付け、読経に合わせて大きな数珠を回す「数珠回し」を行ったり、子供のための福引きなどが用意されます。江戸時代に形成された京都の町では、それぞれの町を見守るお地蔵様がまつられました。そのため、地蔵盆の多くが町内の行事として開催されています。
明治時代にはお地蔵様の縁日「地蔵会」が盛んに。その時期がお盆の後に当たったことから、やがて「地蔵盆」と呼ばれるようになりました
子供が3歳までにお参りすると、一生火除けのご利益があると伝わるのが、標高約924mの愛宕山の山頂に立つ愛宕神社。古くから火伏せや防火にご利益があると信仰を集め、7月31日夜から8月1日早朝にかけて参拝し、千日分の火伏せ・防火のご利益を求める「千日詣り」が有名です。
三歳詣りは、特に決まった日は設けられていません。
愛宕神社
2月に行われる幸在祭は、数え年で15歳になる男子が大人の仲間入りをしたことを祝う、江戸時代初期からの伝統行事です。上賀茂地域では数え年で15歳になる男子を「あがり」と言い、農作業や地域の行事などで一人前の大人として扱われました。「あがり」となった男子は大島紬の着物に袖を通し、上賀茂神社など3つの社を参拝します。
左京区の静原や木野には「烏帽子儀(えぼしぎ)」という成人儀礼が伝わります。数え年16歳の男子が大人の仲間入りをする木野愛宕神社の烏帽子儀は、京都市指定・登録の無形民俗文化財です
京都をはじめ関西では、お宮参りをする際、赤ちゃんの額に男児は「大」、女児は「小」の字を書く風習があります。平安時代に行われていた厄除けのおまじないに由来し「×」や「犬」と書かれることもありました。
平安時代、生後50日目や100日目に、市比賣(いちひめ)神社〈下京区〉から五十日之餅(いかのもち)や百日之餅(ももかのもち)を授かり、赤ちゃんの口に含ませる儀式「五十日百日之祝(いかももかのいわい)」が行われました。健やかな成長を祈るこの儀式は、現在の食べ始め(お食い初め)の発祥と伝わります。市比賣神社では、今でもこの祝いの餅が授与されています。
明治天皇が幼少期に病にかかった際、三宅八幡宮に祈願したおかげで病から回復したことから子供の守り神として信仰を集めています。お宮参りの際に、神鳩であるつがいの鳩を授けてもらい、成人などの節目にお返しするという風習があります。
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