京都ツウのススメ
第百九回 京の社寺と山
- 其の一、
- 日本では、古くから山を信仰の対象としていました
- 其の二、
- 京都には、山全体を神域・寺域とする社寺が多くあります
- 其の三、
- 山内を巡ることにより、様々なご利益が得られるとされています
山岳信仰とは
自然の中に神が宿ると考える自然崇拝のひとつで、山を神が宿る場所として神聖視するのが山岳信仰です。山麓(さんろく)に暮らす人々は、山の実りは神によってもたらされた恵みである一方、災害などは神の怒りだと考えてきました。こういった信仰は、日本だけでなく世界各地でも見られます。京都では、山頂に愛宕神社のある愛宕山と延暦寺のある比叡山が古くから信仰の対象とされ、今なお、多くの人の心のよりどころとなっています。
神秘的な「山」
古来、日本では木々の生い茂る山奥は神聖な場所として扱われてきました。そのため、山に囲まれた京都は、社寺の発祥の地が山中であることが多く「山頂に神が降臨した」「神仏のお告げがあった」などの言い伝えが多く残されています。また、いくつものお堂やお社が建てられている山もあり、例えば、多くの人が訪れる伏見稲荷大社では、それらを巡ることで様々なご利益があると信じられています。
京都には、山に関わる神仏のお告げや不思議な出来事が、その起こりとなった社寺があります。
京都で裕福な暮らしをしていた豪族の棟梁・秦伊呂具(はたのいろぐ)が餅で作った的に矢を射たところ、餅が白い鳥に姿を変え、遠くの山へ飛んで行ってしまいました。不思議なことにその山に稲が生えたことから、神をまつったとされています。
奈良・大安寺の行教(ぎょうきょう)和尚が、九州の宇佐八幡宮で祈祷をしていた時、八幡大神から「京の都を守るため、私を男山にまつってほしい」とのお告げを受けたことが始まりだと伝えられています。
理源大師が笠取山(醍醐山)に五色の雲がたなびくのを見て山に登ると、老翁の姿をしたこの地の神・横尾明神が「醍醐味なるかな」と言った泉を譲り受け、草庵を結んだのが始まりと言われます。
理源大師が草庵を結んだ地で、霊泉・醍醐水が今も湧いています
古くから日本には、山には神が宿るという考え方があり、その自然崇拝が起源となった社寺があります。
酒の神様として知られる西京区の松尾大社は、松尾山のふもとに住んでいた人々が山頂近くの巨石をまつっていたことが神社の起こり。現在でも、この巨石は「磐座(いわくら)」と呼ばれ、信仰されています。
松尾大社の旧神蹟・磐座
西の霊山として古くから信仰を集めており、修験者たちが、現在本殿のある山頂にお社を建てたことが始まりとされています。
本殿背後の神山に雷をも支配する賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)が降臨したことが起源。山全体がご神体として信仰されてきました。
上賀茂神社の境内にある「立砂」という円錐形の砂山は、神山を模したもの。祭神の依り代であるとされています
稲荷山を巡拝する「お山巡り」は平安時代から行われており、
『枕草子』にも登場します。千本鳥居からスタートし、
約4kmの道のりをゆっくり歩いて約2時間で回ることができます。
眼の病気が良くなる、先見の明を授かると言われています。頭に霊力の象徴である宝珠をのせた狐の像も見られます。
山頂へ上がる道や東福寺方面へ抜ける道など、4本の道が交差します。四ツ辻から、山に向かって時計回りに一ノ峰、二ノ峰、三ノ峰と巡拝することで縁結びや子宝繁栄などのご利益があると言われています。また、山中でも指折りの絶景スポットです。
稲荷山にある無数の「お塚」。お塚とは、稲荷大神に別名を付けて信仰する人々が石にその名を刻み、お山に奉納したもの。また、一ノ峰、二ノ峰など、稲荷大神が降臨した場所を「神蹟」と言い、「お塚」や「神蹟」を巡ることを「お山する」とも言います
稲荷山の頂上で、標高は約233m。お参りすると末広がりに商売が繁昌すると信仰されていることから、末広大神と呼ばれています。
別名・谺ケ池(こだまがいけ)とも呼ばれ、人探しの際、池に向かって手を打ち、こだまする方角にヒントがあると言われています。
奉拝所の右奥にある石灯ろうの上部の石は「おもかる石」と呼ばれています。願いを念じてから、石を持ち上げ、軽く感じれば、願いが叶うと言われています。
参拝者の願いが「通りますように」、または「通りました」という御礼に奉納された鳥居がずらりと並びます。「千本」は実際の数ではなく、たくさんあることを表します。
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- 第百五十回 京のお雑煮
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- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
- 第百三十六回 京都とビール
- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
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- 第百三十回 高瀬川
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- 第百二十八回 歌舞伎
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- 第百二十三回 京の七不思議<通り編>
- 第百二十二回 京都とフランス
- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
- 第百十八回 京都の路面電車
- 第百十七回 神様への願いを込めて奉納
- 第百十六回 京の歴食
- 第百十五回 曲水の宴
- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
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- 第百十二回 京に伝わる恋物語
- 第百十一回 鵜飼(うかい)
- 第百十回 扇子(せんす)
- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
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- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
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- 第九十九回 若冲と近世日本画
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- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
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- 第八十七回 夏の京菓子
- 第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
- 第八十五回 新選組
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- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
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- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
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- 第七十五回 京の名僧
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- 第七十二回 京舞
- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
- 第六十回 京狩野派
- 第五十九回 京寿司
- 第五十八回 京のしきたり
- 第五十七回 百人一首
- 第五十六回 京の年末
- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
- 第五十三回 観月行事
- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
- 第五十回 京の暖簾
- 第四十九回 大原女
- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
- 第三十六回 京都御所
- 第三十五回 京の通り
- 第三十四回 節分祭
- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
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- 第二十五回 葵祭
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- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
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- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
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- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方