京都ツウのススメ

第百七回 幻の京都

[歴史に残る幻の京都を探る] かつて京都に存在し、今は見ることのできない歴史に残る重要な建築物をらくたびの山村純也さんが紹介します。

基礎知識

其の一、
平安時代より、都として栄えた京都には様々な建築物が建てられました
其の二、
各時代の最先端技術で造られた華やかな装飾の建物は、権力の象徴にもなりました
其の三、
多くの史跡が、時代の流れや体制の変化により姿を消しました

現存しない幻の京都とその史跡

京都には、歴史上に登場する様々な史跡があります。現在見ることができるものは一部のみで、地震や雷などの自然災害、戦乱による倒壊、時代の変遷などで姿を消した建築物が多くあることが書物や発掘調査によって確認されています。

時代を彩る華やかな建築

平安時代より、政策や都市計画などのため、天皇や名将たちは自身の権力の象徴となる建築物を次々と造りました。白河天皇が院政の拠点とした大規模な寺院群の六勝寺や織田信長がわずか70日間で造営した二条城、豊臣秀吉が政務を行うために建てた聚じゅ楽らく第だい、奈良・東大寺よりも大きい方ほう広こう寺じの大仏などは、金きん箔ぱくを使った装飾で彩られていました。きらびやかなその姿は、時代ごとに京のシンボルとして人々に知られていました。歴史上の人物たちによって築き上げられ、表舞台から姿を消した幻の建築物を紹介します。

[表舞台から姿を消した京都の史跡]京都に存在し、再建されず幻となった数々の史跡から、歴史に登場する 京都建築物がある場所をたどります。

北山大塔 詳細

花の御所 詳細

西寺 詳細

旧二条城 詳細

平安宮大極殿 詳細

聚楽第 詳細

法勝寺 詳細

方広寺 詳細

羅城門 詳細

[北山大塔]室町時代、足利義満が金閣寺の北山殿内に建てた七重塔
[花の御所]同志社大学内に発掘史跡が残る、室町時代に足利義満が造営した足利家の邸宅
[西寺]度重なる火災で消失した羅城門の東西に、東寺と対にして建立された官寺
[旧二条城]足利義輝や織田信長など多くの権力者が築き直した
[平安宮大極殿]795(延暦14)年、平安宮(大内裏)内に天皇の即位式などが行われた朝堂院の正殿である大極殿が完成。屋根は鮮やかな緑の瓦で縁取られ、室内の中央には天皇が公務で座る玉座が置かれた、壮麗な平安宮最大の建物でした。何度も火災に遭い、1177(治承元)年に焼失した後は再建されず、儀式は紫宸殿で行われるようになりました。
[聚楽第]1586(天正14)年、豊臣秀吉が絢爛豪華な城郭風の政庁兼邸宅として建設。その規模は東西約600m、南北約700mに及び、翌年には完成させ大坂城から移り住みました。1595(文禄4)年、関白職を譲り渡した甥・秀次を謀反の疑いで追放した際、当時、秀次の邸宅となっていた聚楽第は徹底的に取り壊されました。
[法勝寺 八角九重塔]六勝寺とは、寺院名に「勝」という字が付く6つの寺院(法勝寺、尊勝寺、最勝寺、円勝寺、成勝寺、延勝寺)のことで、平安時代後期に白河天皇や皇族よって現在の岡崎に建てられました。1075(承保2)年、六勝寺の中では最大規模となる法勝寺が造営され、当時では最高の建築技術を結集して建てられた高さ約80m・9層の巨大な八角九重塔がシンボルでした。しかし、木造の八角九重塔は何度も地震や落雷などに遭い、その度に修理・再建されましたが、1342(康永元)年の火事で焼失しました。
[方広寺の大仏]豊臣秀吉が関白となった翌年1586(天正14)年に、奈良・東大寺の大仏に倣い建立。1595(文禄4)年、高さ18mの日本一とされる木製で金漆塗りの大仏が方広寺に安置されましたが、翌年の大地震で大破。秀吉没後に秀頼が金銅造で大仏を再建しました。豊臣家が滅亡した後、徳川政権下で大仏は維持されますが、1798(寛政10)年の落雷で炎上し姿を消しました。大仏は、京都の人々に親しまれ「京の大仏つぁん」と呼ばれていました。
[羅城門]平安京の中心を南北に通るメーンストリート・朱雀大路の南端に、正門として794(延暦13)年に建設、北端の朱雀門と相対していました。幅約36m、奥行き約10mの大きさを誇り、この門を境に洛中と洛外とが区別されていました。度重なる自然災害に遭い、980(天元3)年に起きた暴風雨によって倒壊。その後、この界隈の治安は悪化し、衰退していきました。
制作:2017年3月
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第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方