京都ツウのススメ
第百五回 京の門前菓子
- 其の一、
- 平安時代の菓子には、宮中などに献上するものと庶民が食べるものがありました
- 其の二、
- 社寺の参道などで売られる菓子を門前菓子と呼びます
- 其の三、
- 門前菓子には、それぞれの社寺の縁起やご利益などが込められています
門前菓子とは
門前菓子とは、神社や寺院のそばに店を構えて社寺と深い関係を持ち、参拝者がその場で食べたり土産にできる菓子のこと。平安時代、京都では菓子と言えば、宮中や公家、社寺などに納める貴重な上菓子と、庶民が日常的に食べる餅菓子がありました。その後、両方の菓子が門前菓子として売られ始め、誰もが気軽に食べられるようになりました。社寺が多い京都では、門前菓子を食べることのできる老舗和菓子店や茶屋がよく見られます。
門前菓子の由来
門前菓子の由来は様々です。例えば、伏見稲荷大社の「いなり煎餅」や三宅八幡宮の「鳩餅」は、神の使いとされる動物をモチーフにしています。また、「幽霊子育て飴」は、赤ん坊のために母親が幽霊となって飴を買いに来たという逸話が題材です。このようないわれを含め、門前菓子は社寺を訪れる楽しみのひとつとして長年愛されています。
スサノオノミコトがまつられている今宮神社。平安遷都後に流行した疫病や、災厄を鎮めるために創祀されました。名物のあぶり餅は、きな粉をまぶしたひと口大のお餅を、今宮神社に奉納された串に刺して炭火で焼いて白みそのタレをかけたもので、厄除けのご利益があるそうです。参道に2店舗あり、そのひとつの「一文字屋和輔(一和)」は創業約千年の日本最古の和菓子屋です。
神山の頂きに賀茂別雷神(かもわけいかずちのかみ)が降臨し、その後に社殿が造営されたと伝わる上賀茂神社。参道にはやきもちを名物とする2店舗があり、「神馬堂」では粒あん入りの餅を鉄板で手焼きしています。正式名称は葵餅と言い、毎年5月に行われる葵祭などでも食べられていました。
平安時代以前からあると伝わる下鴨神社。境内にある糺(ただす)の森の御手洗池(みたらしいけ)に湧く水の泡をかたどって作られたのが「加茂みたらし本舗」のみたらし団子です。みたらし団子発祥の地としても知られています。
鎌倉時代、後醍醐天皇が御手洗池の水をすくうと大きな泡がひとつ、続いて4つの泡が浮いたため、1番上の団子は少し隙間を空けて串に刺しています
学問の神様・菅原道真をまつる北野天満宮。平安京の北西の守り神として創建。厄除けや災難除けとして信仰されています。薄い餅皮にこしあんが入った長五郎餅は、1587(天正15)年に豊臣秀吉がこの地で催した北野大茶湯の際に出された菓子です。
全国の稲荷神社の総本宮である伏見稲荷大社。境内には、神の使いであるキツネの石像が多くあります。「総本家いなりや」のいなり煎餅は、鳥居の上をキツネが跳ねている柄で、生地には白みそとゴマが入っています。
いなり煎餅と同じ材料で作るきつね煎餅は、伏見稲荷大社御鎮座1300年祭のお供え物に選ばれ、縁起物としてご利益があると言われています
“お西さん”の名で親しまれる、浄土真宗本願寺派の本山・西本願寺。松風は、小麦粉や砂糖、麦芽飴に白みそを合わせて焼き上げた菓子です。1570(元亀元)年から11年間続いた織田信長と石山本願寺の合戦の中で、「亀屋陸奥」の三代目が顕如上人(けんにょしょうにん)に献上したという菓子が由来です。
この菓子は合戦の際に食料とされ、信長との和睦に力を注いだ顕如上人が詠んだ歌から松風と名付けられたと伝わります
- 第百九十八回 京都の山
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- 第九十六回 京の仏師
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- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
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- 第五十二回 京の塔
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- 第三十回 京ことば
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- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
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- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方