京都ツウのススメ
第八十三回 京都の湯
- 其の一、
- 京都では、奈良時代から温泉や風呂の文化がありました
- 其の二、
- 鎌倉時代、禅寺には蒸し風呂式の浴堂が造られました
- 其の三、
- 江戸時代、湯船に浸かる入浴法が広まり、季節湯などが生まれました
京の名湯と時代の流れ
京都最古の木津温泉(京丹後市)では、疫病が流行した奈良時代に僧侶の行基が村人に入浴するように説いたところ、病気が治ったという伝説が残っています。平安時代には湯屋と呼ばれる銭湯が既に存在していたことが、平安時代後期に中御門藤原宗忠(なかみかどふじわらのむねただ)が書いた「中右記(ちゅうゆうき)」に残されています。また、戦国時代には、刀傷を負った武将が亀岡にある温泉で治療したという話が伝わります。そして江戸時代、京都市街と鞍馬寺を結ぶ鞍馬街道を往来する人たちが体を癒やす目的でくらま温泉(京都市左京区)が開湯され、今も人々が入浴しに訪れています。
京都人は風呂好き
京都では、鎌倉時代から室町時代にかけて、娯楽用の銭湯が盛んに造られました。1467(応仁元)年の応仁の乱の頃には「一条の風呂」や「五条堀川風呂」などの銭湯が公家や民衆に人気だったそうです。開店を知らせる合図の声が町中に響き、湯銭を払って毎日のようにお風呂を楽しんだと言います。京都では多い時に約600軒の銭湯があり、今も登録有形文化財に指定された船岡温泉(京都市北区)などの老舗が営業しています。
京都の湯文化の始まりは、医療知識が不十分であった奈良時代。木津温泉の源泉でシラサギが傷を癒しているのを見た僧侶の行基が、温泉にはケガや病気に効能があることを発見したと言われています。当時は、治癒を目的として多くの人が京都各地の温泉を訪れました。平安時代には蒸し風呂が主流となり、禅寺では体の汚れを洗い流すだけでなく、修行として入浴を取り入れました。湯船に浸かる入浴法は江戸時代に広まり、娯楽として季節湯などの文化が定着しました。
奈良時代から京都の温泉には歴代の天皇や戦国武将が訪れており、各地にゆかりの湯が存在しました。また、彼らが残した伝説も語り継がれています。
かま風呂は、日本古来のサウナです。約1300年前、壬申の乱で流れ矢を背に受けた大海人皇子(後の天武天皇)が京都・八瀬で傷を癒やすために利用したと言われています。
かま風呂を利用するときに湯帷子(ゆかたびら)という単衣を着用したことから浴衣という言葉が生まれました。また、浴室は床の隙間から蒸気が出るサウナ式となっており、直接座ると熱いため、床上に敷いた布が後に風呂敷の語源となりました
安土桃山時代の1594(文禄3)年、豊臣秀吉の命により、京都の三条河原で、盗賊の石川五右衛門とその母、子供を釜ゆでの刑に処しました。その時に使った風呂桶が名前の由来だと伝わります。鉄製の桶の底は直火のため、触れると火傷することから、木の踏み板を敷いたり、げたを履いて入浴したそうで関西で普及しました。
禅寺では、食堂や禅堂と並び浴堂が境内に造られ、僧侶の修行が行われました。浴堂は、沸かした湯を浴室へ注いで蒸し風呂として利用し、浴室内では身分は関係なく、鐘の音を合図に入浴したそうです。入浴中は坐禅を組み、私語は厳禁でした。また、民衆にも浴堂を開放して、禅の教えを広める役割も果たしていたと言われています。
妙心寺の「明智風呂」
1587(天正15)年、今は廃寺となった妙心寺塔頭・太嶺院の僧侶で、明智光秀の叔父・密宗が、光秀の菩堤を弔うために建てたとされることから、別名・明智風呂と呼ばれています。昭和初期まで使われており、京都で唯一、年間を通じて見学ができる浴堂です
古来より、京都発祥の柚子湯をはじめ、健康を願い旬の自然のものを風呂に入れて楽しむ季節湯がありました。京都では今もなお、こうした湯文化の伝統が習慣として受け継がれています。
天皇も愛した「柚子湯」
柚子湯の起源は古く、聖武天皇や清和天皇が好んで入浴したとされています。江戸時代には、冬至に入ると年中風邪を引かないといわれた柚子湯をはじめ、端午の節句に無病息災を願う菖蒲(しょうぶ)の根や葉を入れた菖蒲湯などの季節を楽しむ湯文化が定着しました
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- 第六十三回 京の町名
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- 第六十一回 京の伝説
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- 第二十五回 葵祭
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- 第二十三回 涅槃会
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- 第十九回 京のお豆腐
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- 第十六回 京のお盆行事
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- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方