京都ツウのススメ
第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
西国三十三所観音霊場 第十番札所 三室戸寺
京都から広がる巡礼の文化願い事の成就を目指して霊場を巡る巡礼。
寺院の多い京都には様々な巡礼路が定められています。
そのいくつかを「らくたび」の谷口真由美さんがご紹介します。
基礎知識
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其の一、
- 霊験あらたかな場所を巡って参拝することを巡礼と言います
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其の二、
- 巡礼は平安時代、京都に住む貴族などの上流階級が行っていました
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其の三、
- 巡礼は「札所巡り」とも呼ばれ、寺院の多い京都には様々なものがあります
平安時代にはすでにあった巡礼の文化
巡礼とは、社寺など霊験のある場所を参拝してまわること。巡礼を行うことで、信仰を深めたり、ご利益を得られると言われています。巡礼の文化は世界中にありますが、日本では平安時代に京で暮らす貴族など上流階級の間で行われていたようです。江戸時代には庶民も行うようになり、参拝の証として自身の名前や参拝日を記した木札を寺院の天井や柱に打ち付ける風習が生まれます。このことから、巡礼するお寺を「札所」、巡礼のことを「札所巡り」とも呼ぶようになりました。
京都市内に札所がそろう巡礼も
札所巡りは日本各地にありますが、その中で最も古いのが西国三十三所観音霊場です。奈良時代に開創され、平安時代中期の花山法皇によって再興されました。札所巡りで有名なのは、「お遍路さん」で知られる四国八十八ヶ所霊場。京都・仁和寺にはその写しである御室八十八ヶ所霊場のほか、様々な札所巡りがあります。そのいくつかをご紹介しましょう。
最古の札所巡りと言われる西国三十三所観音霊場のほか、
いろいろな巡礼路があります。
日本最古の観音霊場
西国三十三所観音霊場
日本最古の札所巡りである西国三十三所観音霊場は、奈良時代の僧侶・徳道(とくどう)上人が718(養老2)年に開創したと言われています。その後衰退していたものを再興したのは平安時代の花山法皇。寵愛していた后(きさき)の菩提を弔うために三十三所の観音巡りを復活させたと言われています。範囲は2府5県にわたり、そのうち最も札所が多いのが京都府で、11カ所あります。


第十五番
今熊野観音寺
東福寺駅下車

第十六番
清水寺
清水五条駅下車
西国三十三所観音霊場には33に含まれない、花山法皇にちなんだ「番外札所」が定められています。そのうちのひとつである元慶寺(山科区)は、花山法皇が出家した場所です
後白河法皇による京都での札所巡り
洛陽三十三所観音霊場
西国三十三所観音霊場より身近な場所で巡礼できるようにと後白河法皇によって平安時代末期に定められたと言われています。室町時代には33カ所の寺院が定着していましたが、応仁の乱などで衰退。2005(平成17)年、100年以上の年月を経て復興されました。全ての札所が京都市内にあるので、短期間で「満願」を達成することもできます。

第二番
誓願寺
祇園四条駅・三条駅下車
現世救済を願う薬師霊場
京都十二薬師霊場
現世救済の仏様として信仰されていた薬師如来を巡ります。江戸時代後半に現在の形に定められました。一時中断しましたが、2012(平成24)年に復興されました。

第十二番
永福寺 (蛸薬師堂)
祇園四条駅・三条駅下車
京都十二薬師霊場にまつられている薬師如来の多くは秘仏。そのため、各札所では薬師如来を写実的に描いた「おみえ」が授与されています(有料)
先祖の成仏を願って13の仏を巡礼
京都十三佛霊場
仏教では死後、初七日から三十三回忌までに計13回の追善供養を行い、それぞれの供養に守護仏が定められています。その13の守護仏を巡るのが十三仏巡り。巡礼の中でも比較的新しいもので、1981(昭和56)年に創設された京都十三佛霊場が国内最古と言われています。

第一番
智積院
七条駅下車
京都十三佛霊場は現世救済のご利益で知られる寺院が多いことから、巡礼することで先祖の供養と共に自身の安穏のご利益もあると言われています
札所巡りにはどのようなルールがあるのでしょう。
心得
お参りする本尊とご縁を結ばせていただくという気持ちが大切です。
持ち物
数珠と御朱印帳を持っていきます。その場で購入できる寺院もあります。
服装
白衣の上に経文の書かれた笈蔓を身につけ、菅笠を被るのが伝統的な姿ですが、華美でなければ服装は自由だとされています。

順路
各札所には番号がついていますが、その順序にこだわる必要はありません。大切なのは、全ての霊場を巡ること。それを「満願」といい、願いがかなうとされています。
御朱印とは
御朱印とは参拝の証となるもので、札所の本尊を記したものを受けます。御朱印は必ず参拝後に受けましょう。
※多くの場合、有料です

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