京都ツウのススメ
第百三十九回 能・狂言と京都
京都に残る能楽の舞台京都の社寺・史跡には、能楽の舞台となっている場所がたくさんあります。らくたびの若村亮さんとともに巡ります。
基礎知識
其の一、
- 室町時代に大成した能・狂言は、合わせて能楽と呼ばれています
其の二、
- 能楽を大成させた能役者の観阿弥(かんあみ)・世阿弥(ぜあみ)は多くの演目を作りました
其の三、
- 京都の名所や名跡の多くが、能楽の舞台として使われてます
民俗芸能から芸術性の高い能楽へ
能楽の始まりは、奈良時代以降に大陸から伝わった散楽(さんがく)という物真似芸で、それが発展し、平安時代に田楽(でんがく)や猿楽(さるがく)と呼ばれるようになって全国に広まります。室町時代になると、将軍・足利義満の庇護(ひご)を得た観阿弥によって芸術的に高められました。父・観阿弥とともに能楽を大成させた世阿弥は、当時の将軍や公家らに愛され、文化的な環境の中で育ったため、王朝文化に関する教養を身に付け『古今和歌集』や『源氏物語』『平家物語』を題材にした能楽の作品を作り上げました。
京都は物語の舞台の宝庫
世阿弥は、幽玄(ゆうげん)という美意識を基にした、歌と舞いを主体とする能楽を磨き上げ、数多くの作品を残しました。能は面(おもて)と呼ぶ仮面を付けて、主に歴史上の人物を演じます。能と同じく猿楽から発展した狂言は、直面(ひためん)と言って素顔で登場し、喜劇を演じるのが特徴です。京の町を歩くと、神社・寺院・公家の邸宅跡などで、能楽の世界に触れることができます。
京都の至る所が物語の舞台です!
鉄輪[かなわ]

鉄輪の井戸[下京区]
ある女が、自分を捨て別の女と結婚した元夫を恨み、呪い殺すために丑の刻参りをするという話。鬼と化した女は、結果的には安倍晴明によって打ち破られ、鉄輪の井戸のそばで息絶えたと言います。
恋重荷[こいのおもに]

白河院庭園[左京区]

白河院の庭で菊の世話をする老人が、身分違いの女御に恋心を抱きます。「この荷物を持ち運べたら思いを叶えよう」と言われたものの余りの重さに運べず、男は絶望して死んでしまいます。恋をした老人の恨みと悲哀を描いた作品。白河院があった岡崎に、当時を彷彿とさせるような庭園があります。

土蜘蛛[つちぐも]

蜘蛛塚[上京区]
病気で伏せていた源頼光の所へ1人の僧が訪ねて来ます。僧は蜘蛛の化け物となって襲いかかりますが、刀で切り付けられ退散。頼光の家臣が化け物の血の跡を追い、古い塚の中に隠れていた土蜘蛛を退治します。
蜘蛛塚は最初、一条七本松の清和院の隣側にありました。明治時代の地域開発により移転がくり返され、現在は東向観音寺に移されています
融[とおる]


渉成園(しょうせいえん)(枳殻邸[こくてい])[上京区]
都を訪れた東国の僧が、六条河原院で出会った老人から、かつて河原左大臣と呼ばれた源融(みなもとのとおる)の話を聞きながら仲秋の名月を愛でます。実は老人は融の亡霊で、演目の後半では、在りし日の融が現れ、月夜の下で舞に興じます。
渉成園(枳殻邸)は東本願寺の飛地境内地で、嵯峨天皇の第12皇子で左大臣の源融が奥州塩釜(岩手県千賀ノ浦の塩釜湾)の景色を模して作った邸宅・六条河原院の遺跡と言われています
因幡堂[いなばどう]

因幡堂(平等寺)[下京区]
大酒飲みの妻に愛想をつかした男が、妻に離縁状を送りつけ、新しい妻を求めて因幡堂を訪れ祈願し、一夜を過ごします。男は夢のお告げで聞いた新しい妻を迎えに行きますが、そこにいたのは離縁したはずの妻でした。
萩大名[はぎだいみょう]

清水寺[東山区]
京を訪れていた遠国の大名が、帰国前に家来と清水寺を訪れます。立ち寄った茶屋で萩の花を楽しんでいると、店の主人から歌を詠むよう催促されます。しかし大名は歌を詠むことができず、不作法を繰り返してしまい、主人に追い出されてしまいます。
都であった京には地方から訪れる人が多く、様々なトラブルにまきこまれたりする様子がおもしろおかしく狂言で演じられています
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- 第百九十一回 京都の風習
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- 第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
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- 第百七十回 京都とキリスト教
- 第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
- 第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
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- 第百六十回 御火焚祭
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- 第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
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- 第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
- 第百五十回 京のお雑煮
- 第百四十九回 京の牛肉文化
- 第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
- 第百四十七回 明治の京都画壇
- 第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
- 第百四十五回 ヴォーリズ建築
- 第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
- 第百四十三回 京の人形
- 第百四十二回 京の社寺と動物
- 第百四十一回 鳥居(とりい)
- 第百四十回 冬の食べ物
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- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
- 第百三十六回 京都とビール
- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
- 第百三十四回 精進料理
- 第百三十三回 明治時代の京の町
- 第百三十二回 皇室ゆかりの建物
- 第百三十一回 京の調味料
- 第百三十回 高瀬川
- 第百二十九回 蹴鞠
- 第百二十八回 歌舞伎
- 第百二十七回 京都に残るお屋敷
- 第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
- 第百二十五回 京の学校
- 第百二十四回 京の六地蔵めぐり
- 第百二十三回 京の七不思議<通り編>
- 第百二十二回 京都とフランス
- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
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- 第百十七回 神様への願いを込めて奉納
- 第百十六回 京の歴食
- 第百十五回 曲水の宴
- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
- 第百十三回 パンと京都
- 第百十二回 京に伝わる恋物語
- 第百十一回 鵜飼(うかい)
- 第百十回 扇子(せんす)
- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
- 第百七回 幻の京都
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- 第百五回 京の門前菓子
- 第百四回 京の通り名
- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
- 第百回 夏の京野菜
- 第九十九回 若冲と近世日本画
- 第九十八回 京の鍾馗さん
- 第九十七回 言いまわし・ことわざ
- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
- 第九十一回 京の庭園
- 第九十回 琳派(りんぱ)
- 第八十九回 京の麩(ふ)
- 第八十八回 妖怪紀行
- 第八十七回 夏の京菓子
- 第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
- 第八十五回 新選組
- 第八十四回 京のお弁当
- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
- 第八十回 義士ゆかりの地・山科
- 第七十九回 京の紅葉
- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
- 第七十六回 京のお地蔵さん
- 第七十五回 京の名僧
- 第七十四回 京の別邸
- 第七十三回 糺(ただす)の森
- 第七十二回 京舞
- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
- 第六十回 京狩野派
- 第五十九回 京寿司
- 第五十八回 京のしきたり
- 第五十七回 百人一首
- 第五十六回 京の年末
- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
- 第五十三回 観月行事
- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
- 第五十回 京の暖簾
- 第四十九回 大原女
- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
- 第三十六回 京都御所
- 第三十五回 京の通り
- 第三十四回 節分祭
- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
- 第二十七回 京の納涼床
- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
- 第八回 顔見世を楽しむ
- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方