
第120回
京の襖絵(ふすまえ)

第120回
京の襖絵(ふすまえ)

狩野甚之丞 遠侍 三の間『竹林群虎図』(部分)元離宮二条城
京阪的京都ツウのススメ
第120回 京の襖絵(ふすまえ)
空間を区切る壮大な絵画
様々な絵師によって描かれた襖絵について、らくたびの山村純也さんが紹介します。
京の襖絵の基礎知識
其の一、
書院造りの室内を装飾する障壁画(しょうへきが)のひとつが襖絵です
其の二、
その時代の権力者に仕えた絵師が、寺院や城の襖絵を手掛けました
其の三、
狩野派をはじめ多くの絵師が活躍しました
室内装飾として描かれた襖絵
寺院や城を訪れた際に、建築や庭園などとともに楽しみたいのが襖絵です。平安時代の貴族の住まいのような、間仕切りのない寝殿造りの建物が変化し、室町時代後期から江戸時代初期にかけて、襖などで仕切られた書院造りへと発展する中で、襖や衝立(ついたて)、壁面などに装飾を施す障壁画が生まれました。そのひとつが襖絵です。主人が客をもてなす空間を演出する目的だけでなく、自らの権威を表現する役割もありました。
画僧や狩野派の絵師たちが活躍
襖絵を手掛けたのは画僧や絵師です。幕府が禅宗を支持した室町時代は、寺院の画僧や、後に日本画史上最大の画派となる狩野派の初代正信が将軍家に仕えました。安土桃山時代に入ると狩野永徳や長谷川等伯、海北友松が登場します。江戸時代初期、後水尾天皇を迎えるための改修が行われた二条城二の丸御殿では、狩野探幽率いる狩野派が障壁画を描きました。画法も様々で、日本の美術史上、高い価値を持つ作品も数多くあります。
京都で見る襖絵
襖絵が盛んに描かれた安土桃山時代から江戸時代にかけての作品を紹介します。
襖絵を楽しむキーワード
題材
松・梅・桜などの花や草木を描いた花鳥画や、風景を描いた山水画のほか、文人など歴史上の人物や動物も登場します。
画法
中国から伝わった水墨画や、金箔(きんぱく)を貼った上に群青や緑青などの鮮やかな岩絵具で描いた金碧障壁画があります。
御用絵師
江戸幕府や大名家に仕えた絵師のこと。室町幕府に仕えた画僧や、織田信長や豊臣秀吉の命で活動した絵師を指すこともあります。
重文松孔雀図(まつくじゃくず)/元離宮二条城
狩野探幽(かのうたんゆう)/1602~1674年
将軍が大名と対面した大広間の襖絵
二条城二の丸御殿の障壁画の中でも、将軍が大名と対面する公式の場であった大広間一の間と二の間は狩野探幽が手掛けました。二の間には将軍との対面を厳かなものに演出する『松孔雀図』が描かれています。

襖や壁を使い、不老不死の象徴である大きな松や、吉祥を表す孔雀を描いています
重文雲龍図(うんりゅうず)/建仁寺
海北友松(かいほうゆうしょう)/1533~1615年
墨一色で描き上げた迫力の龍
武家に生まれ狩野派に学んだ海北友松は、建仁寺の方丈の襖絵50面を手掛けました。そのひとつ『雲龍図』に描かれた阿吽(あうん)の龍は、墨一色ながら迫力に満ちています。

龍は仏の教えを守る守護神とされています
重文群仙図(ぐんせんず)
狩野永徳(かのうえいとく)/1543~1590年
仙人が描かれた金碧障壁画
南禅寺の大方丈は1611(慶長16)年、御所から移築したものとされています。その御昼の間の襖絵には、仙人が描かれています。
写真:京都国立博物館
織田信長や豊臣秀吉に重用された狩野永徳は安土桃山時代を代表する絵師。安土城や聚楽第の障壁画も手掛けましたが、建物ごと焼失したため残された作品はごくわずかです
重文冬の絵/圓徳院
長谷川等伯(はせがわとうはく)/1539~1610年
絵師の熱意から生まれた雪景色
能登(石川県)出身で、30代で上洛した長谷川等伯の50歳頃の作品。大徳寺三玄院に襖絵を描きたいと懇願するも許されず、住職の留守を狙って描き上げたそうです。襖に貼った唐紙(からかみ)に施されていた桐紋を雪に見立てています。

狩野永徳が活躍していた京都に乗り込んだ等伯。千利休の後ろ盾もあって世間に名が知られるようなり、その才能は永徳を脅かすほどであったと言われます
重文牡丹図(ぼたんず)/大覚寺
狩野山楽(かのうさんらく)/1559~1635年
寝殿造りにふさわしい優雅さ
江戸時代に後水尾天皇から与えられた寝殿造りの建物・宸殿(しんでん)には、狩野山楽による牡丹や紅梅を描いた襖絵があります。

写真:旧嵯峨御所 大覚寺
戦国大名・浅井長政の家臣の家に生まれ、後に秀吉の命によって狩野永徳の養子となった狩野山楽。狩野探幽らは江戸に移りますが、山楽は京都で活動を続け「京狩野」と呼ばれるようになりました
京都ゆかりの現代作家による襖絵
青蓮院では、絵師・木村英輝がアクリル絵具で描いた、色鮮やかな蓮の襖絵が鑑賞できます。また、隨心院にある『極彩色梅匂小町絵図』は、京都の絵描きユニット・だるま商店によるもので、紅色を中心にした極彩色で小野小町の生涯が描かれています。重森三玲庭園美術館の茶席・好刻庵では、作庭家・重森三玲が手掛けた東福寺方丈庭園の市松模様を思わせる、斬新な襖絵を見ることができます(見学は要予約)。

木村英輝『蓮-青の幻想 生命賛歌 極楽浄土』
青蓮院
※襖絵は複製の場合もあります

ナビゲーターらくたび 山村 純也さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2018年4月

