京都ツウのススメ
第百十八回 京都の路面電車
京都の近代化のシンボル市電明治時代初期、京都は近代化を始めます。
その象徴とも言うべき路面電車「京都市電」をらくたびの山村純也さんが紹介します。
基礎知識
其の一、
- 京都は、日本で最初に路面電車が走った町です
其の二、
- 京都の路面電車には琵琶湖疏水による水力発電が用いられていました
其の三、
- 路面電車の普及は、京都の近代化に貢献しました
日本初の路面電車
日本で初めて路面電車が走った町・京都。最初の路線は、1895(明治28)年に、現在の京都駅付近にあたる七条停車場と伏見区下油掛町の約6kmを結んだ伏見線でした。開通当初は民営でしたが、1918(大正7)年に京都市による運営となり「市電」と呼ばれ親しまれました。ピーク時の1963(昭和38)年には1日当たり約60万人が利用し、輸送機関の利用割合の約50%を占めていました。市電は出発する際に鐘を2回鳴らしたことから「チンチン電車」とも呼ばれ、市民の足として活躍しました。
京都の近代化を支えた琵琶湖疏水
明治時代初期、東京遷都(せんと)により京都の町は活力を失っていました。その状況を打破し、京都の近代化・産業化を進めるために建設を計画された琵琶湖疏水は1890(明治23)年に完成。翌年には蹴上に水力発電所が建設され、路面電車の動力として利用されました。京都の近代化の象徴であった路面電車の走る風景を振り返ってみましょう。
はじめて路面電車が走った町
日本で初めて路面電車が走った1895(明治28)年は、京都・岡崎で第4回内国勧業博覧会が開催された年。路面電車は来場者を運ぶ手段として活躍しました。開通からおよそ60年後の1958(昭和33)年まで市電は延伸し続け、最盛期の路線長は約74kmに。京都市内を網羅した市電は、人々の生活を快適にしました。しかし、1960年代後半に入ると、自家用車やバスなど車が増加。1978(昭和53)年9月30日、市電は開通から83年でその役割を終えました。
電車を走らせるための電力は琵琶湖疏水の水力発電で供給されていたため、天候による水量の制限などで疏水の流れが止まるたびに電車は運休となりました。また、路面電車の運行当初、毎月1日と15日は疏水の水路に生えた藻を刈る日に当たるため運休していました
市電のエピソードあれこれ
京都らしい停留所名
「四条烏丸」のように、停留所名は縦横に交わる通りの名を座標軸のように用いたものが多く見られました。また「銀閣寺道」など、名所・旧跡に「道」や「前」を付けたものもあります。「道」は「~の近く」を表しており、京都ならではの表現です。
祇園祭の際には架線を切断
祇園祭の山鉾巡行の際、四条通や烏丸通では高さが約30mにも達する山や鉾を通すために一時的に電車に電気を送る架線を切断。その場を通行する電車は、手前で勢いをつけて切断された区間を通過していました。
勢いが足りず電車が止まってしまうことも。そんな時は周囲の職員が総出で電車を押して通過させていたそうです
多くの受験生をサポート
京都市内には大学がたくさんあり、特に受験シーズンには全国から多くの受験生が集まります。入学試験の終了時刻になると大学の前から次々と学生たちを乗せて走る市電の姿は京都の冬の風物詩でした。
市電の面影
京都市民に愛された市電はその役割を終え、市内の公園や幼稚園・学校などで大切に保管されています。また、広島電鉄と愛媛県・伊予鉄道にも車両が譲り渡され、現在でも路面電車として使用されています。
平安神宮
南神苑には、国内初の電車として、当初の車両がそのまま保存されています。
※見学には要入苑料
梅小路公園
公園内には、京都市電の車両を活用した休憩所「市電ひろば」があります。車両が4両置かれ、鉄道グッズのショップやカフェとして利用。また土・日・祝日には園内を実際に走るチンチン電車に乗ることもできます(有料)。
哲学の道(左京区)、二年坂、産寧坂、石塀小路(東山区)などの石畳は、京都市電で敷石として使われていた御影石を移設したものです
- 第百九十五回 京都の巨木
- 第百九十四回 京都と将棋(しょうぎ)
- 第百九十三回 秋の京菓子
- 第百九十二回 京都の植物
- 第百九十一回 京都の風習
- 第百九十回 幻の巨椋池(おぐらいけ)
- 第百八十九回 京都と魚
- 第百八十八回 京都とお花見
- 第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
- 第百八十六回 京都の地ソース
- 第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
- 第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
- 第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
- 第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
- 第百八十一回 京都の中華料理
- 第百八十回 琵琶湖疏水と京都
- 第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
- 第百七十八回 京都と徳川家
- 第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
- 第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
- 第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
- 第百七十四回 京の難読地名
- 第百七十三回 京の縁日
- 第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
- 第百七十一回 京都の通称寺
- 第百七十回 京都とキリスト教
- 第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
- 第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
- 第百六十七回 京の城下町 伏見
- 第百六十六回 京の竹
- 第百六十五回 子供の行事・儀式
- 第百六十四回 文豪と京の味
- 第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
- 第百六十二回 京都のフォークソング
- 第百六十一回 京と虎、寅
- 第百六十回 御火焚祭
- 第百五十九回 鴨川の橋
- 第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
- 第百五十七回 京都とスポーツ
- 第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
- 第百五十五回 京都の喫茶店
- 第百五十四回 京の刃物
- 第百五十三回 京都の南蛮菓子
- 第百五十二回 京の社家(しゃけ)
- 第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
- 第百五十回 京のお雑煮
- 第百四十九回 京の牛肉文化
- 第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
- 第百四十七回 明治の京都画壇
- 第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
- 第百四十五回 ヴォーリズ建築
- 第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
- 第百四十三回 京の人形
- 第百四十二回 京の社寺と動物
- 第百四十一回 鳥居(とりい)
- 第百四十回 冬の食べ物
- 第百三十九回 能・狂言と京都
- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
- 第百三十六回 京都とビール
- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
- 第百三十四回 精進料理
- 第百三十三回 明治時代の京の町
- 第百三十二回 皇室ゆかりの建物
- 第百三十一回 京の調味料
- 第百三十回 高瀬川
- 第百二十九回 蹴鞠
- 第百二十八回 歌舞伎
- 第百二十七回 京都に残るお屋敷
- 第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
- 第百二十五回 京の学校
- 第百二十四回 京の六地蔵めぐり
- 第百二十三回 京の七不思議<通り編>
- 第百二十二回 京都とフランス
- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
- 第百十八回 京都の路面電車
- 第百十七回 神様への願いを込めて奉納
- 第百十六回 京の歴食
- 第百十五回 曲水の宴
- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
- 第百十三回 パンと京都
- 第百十二回 京に伝わる恋物語
- 第百十一回 鵜飼(うかい)
- 第百十回 扇子(せんす)
- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
- 第百七回 幻の京都
- 第百六回 京の家紋
- 第百五回 京の門前菓子
- 第百四回 京の通り名
- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
- 第百回 夏の京野菜
- 第九十九回 若冲と近世日本画
- 第九十八回 京の鍾馗さん
- 第九十七回 言いまわし・ことわざ
- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
- 第九十一回 京の庭園
- 第九十回 琳派(りんぱ)
- 第八十九回 京の麩(ふ)
- 第八十八回 妖怪紀行
- 第八十七回 夏の京菓子
- 第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
- 第八十五回 新選組
- 第八十四回 京のお弁当
- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
- 第八十回 義士ゆかりの地・山科
- 第七十九回 京の紅葉
- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
- 第七十六回 京のお地蔵さん
- 第七十五回 京の名僧
- 第七十四回 京の別邸
- 第七十三回 糺(ただす)の森
- 第七十二回 京舞
- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
- 第六十回 京狩野派
- 第五十九回 京寿司
- 第五十八回 京のしきたり
- 第五十七回 百人一首
- 第五十六回 京の年末
- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
- 第五十三回 観月行事
- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
- 第五十回 京の暖簾
- 第四十九回 大原女
- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
- 第三十六回 京都御所
- 第三十五回 京の通り
- 第三十四回 節分祭
- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
- 第二十七回 京の納涼床
- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
- 第八回 顔見世を楽しむ
- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方