京都ツウのススメ
第百五十九回 鴨川の橋
京都・鴨川に架かる橋京都の街を南北に流れる鴨川に架かるたくさんの橋。それぞれに歴史や特徴があるのをご存知でしょうか。今回は、らくたびの森明子さんが、その歴史とともに話したくなるマメ知識をご紹介します。
基礎知識
其の一、
- 京都の市街地を流れる鴨川には25以上の橋が架かっています
其の二、
- 鴨川に架かる橋が初めて史料に登場するのは平安時代です
其の三、
- 京都三大橋である三条大橋と五条大橋は豊臣秀吉の命で架けられました
京都らしい景観を生む鴨川の橋
京都の市街地を流れる鴨川。出町柳駅付近で賀茂川と高野川が合流し、その辺りから中書島駅の西側で桂川と合流するまでが一般に鴨川と呼ばれます。賀茂川と高野川との合流地点に架かる橋が賀茂大橋で、そこから桂川に合流する手前の京川橋までの約12kmに25以上の橋が架けられています。鴨川に架かる橋は、人々の日常にとって欠かせないものであるとともに、街なかでは京都らしい景観を作り出しています。
本格的な架橋は室町時代頃
鴨川に架けられた橋として初めて史料に登場するのは「辛橋(からはし)(韓橋)」です。すでに879(元慶3)年には架かっていたと言われ、その後この橋の記述は見られなくなります。史料に頑丈そうな橋が見られるようになるのは室町時代以降。さらに、豊臣秀吉の時代に入ると、都市改造の一環として盛んに橋が整備されました。三条大橋と五条大橋はその代表で、特に三条大橋は我が国初の石柱橋だと言われています。今回は鴨川の橋について解説します。
鴨川に橋が登場するのはいつ頃のことなのでしょう。
最初の橋は平安時代
鴨川に架けられた橋が初めて史料に登場するのは平安時代。901(延喜元)年に完成した歴史書『日本三代実録』に鴨川の「辛橋(韓橋)」が879(元慶3)年に焼け落ちたという記録があります。そもそも当時の鴨川は川魚を捕るなどの生活の場であり、あまり渡らなかったようです。氾濫しない限り水位も低く、渡りたい場合にも歩いて渡れたので橋は必要なかったと考えられます。
頑丈な橋が増えるのは室町時代頃から
三条大橋が初めて架けられたのは室町時代のことでした。室町時代の都の様子を描いた『洛中洛外図屏風』を見ると、鴨川にはしっかりとした橋が架かっているのがわかります。その後、戦国時代に入って、三条大橋を架け替えたのは豊臣秀吉。秀吉が63本の切石(きりいし)を用いて架橋したその橋は日本初の石柱橋だと言われています。
左下が室町時代の三条大橋
洛中洛外図屏風(歴博甲本・部分)
国立歴史民俗博物館所蔵
20世紀以降は永久化へ
明治時代に入ると、川や橋は京都府や京都市によって管理されるようになります。また、土木技術も飛躍的に発達し、老朽化したものから順に鋼材やコンクリートなどを用いた橋に架け替えられるようになりました。七条大橋が架けられたのは1913(大正2)年。日本初の鉄筋コンクリート造のアーチ橋で、約82mの長橋を横から見ると5連の美しいアーチが見られます。
人にちょっと話したくなる
鴨川の橋のマメ知識を集めました!
鴨川でも見られる飛び石は「帯工(おびこう)」と呼ばれるもので、河床を安定させるために 設置されています。水位の低い時には渡ることもできるように作られています。
橋の欄干の擬宝珠(ぎぼし)は格の高い建造物に付ける装飾品。豊臣秀吉の命により架けられた三条大橋にも付けられました。現在の三条大橋は1950(昭和25)年のものですが、いくつかの擬宝珠は再利用されており、「豊臣」の刻印が見られます。
2022〜23年度には三条大橋の上部の改修工事が行われる予定ですが、「豊臣」の刻印のある擬宝珠や飾り金具は再利用される予定です
三条大橋と五条大橋が公儀(朝廷や幕府などが管理する)の橋だったのに対して、四条大橋は祇園社(現在の八坂神社)の氏子の寄付・奉仕によって架けられてきました。四条大橋に擬宝珠がないのは、公儀橋でなかったからだとも言われています。
1142(永治2)年に僧侶によって四条通の橋が架け替えられたことがわかっています。当時は「祇園橋」と呼ばれていたそうです
今では車1台がやっと通れる小さな橋ですが、元の五条橋はこの場所にありました。五条大橋を現在の場所としたのは豊臣秀吉。方広寺大仏殿の造営に合わせて石柱橋を架橋しました。
日本で初めて鉄筋コンクリートを素材に用いたアーチ橋である七条大橋と四条大橋。これは橋の上に路面電車を走らせるためでした。現在の七条大橋は架橋当初のもので、鴨川に架かる橋の中で最古のものです。
現在の七条大橋の高欄は1987(昭和62)年改修のもので、三十三間堂で行われる「通し矢」がモチーフです
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