京都ツウのススメ
第百二十四回 京の六地蔵めぐり
家内安全・無病息災を祈る六地蔵めぐり毎年8月に行われる六地蔵めぐりについて、らくたびの山村純也さんが紹介します。
基礎知識
其の一、
- 京都では、毎年8月に地蔵菩薩を参拝する六地蔵めぐりが行われます
其の二、
- 平安時代に、小野篁(おののたかむら)によって1本の木から6体の地蔵が彫られました
其の三、
- 疫病や災厄から都を守るため、6体の地蔵を街道の入り口に安置しました
地獄で出会った地蔵菩薩を彫る
平安時代初期、熱病を患い仮死状態となった公卿(くぎょう)・小野篁が、地獄に落ちて苦しむ人々を六道を巡って救済している地蔵菩薩に出会います。その地蔵菩薩から「地獄の苦しみと私のことを人々に伝えてほしい」と告げられた篁は、その後生き返ります。そして、1本の桜の木から六道にちなんで6体の地蔵を彫り、木幡の里(現在の六地蔵付近)に収めました。
京の六口に地蔵を安置
平安時代後期になると地蔵信仰が高まります。1157(保元2)年に都を病魔や魔物から守るため、後白河法皇の命を受けた平清盛は、西光法師に都の出入り口となる6カ所に六角形のお堂を建てさせました。そして篁が彫った地蔵菩薩をそれぞれのお堂にまつりました。これが六地蔵めぐりの始まりと言われています。現在、地蔵菩薩は6つの寺院に安置され、地蔵盆の行われる8月22日・23日にそれらを巡って無病息災を祈願し、お幡(はた)と呼ばれるお札を授かる六地蔵めぐりが行われます。
8月22日・23日に、京都の6街道の入り口(六口(ろくくち))に配された
地蔵菩薩を巡り、無病息災を祈る行事です。
地蔵菩薩
地蔵菩薩は、いずれも白塗りで鮮やかな装飾が施されて、現在は6つの寺院に安置されています。六地蔵めぐりの2日間のみ、地蔵菩薩が安置されている地蔵堂の戸板が外され、直接参拝することができます。
お幡
六地蔵めぐりでは、各寺に用意されている「お幡」(有料)と呼ばれるお札を集めます。6枚まとめて玄関に吊るすと、厄病退散や福徳招来のご利益があるとされています。前年のお幡は、各寺境内に用意された紐に結んだり、古札箱に収めます。
京の六口
各地から京都へ続く街道は、時代によって街道の数や道筋が変わっています。平安時代の主な街道は、奈良街道・西国街道・山陰街道・周山街道・鞍馬街道・東海道の6つで、その京の出入り口は六口と呼ばれています。
上善寺(じょうぜんじ)〔北区〕
863(貞観5)年に千本今出川に創建、1594(文禄3)年に現在の地へ。鞍馬口地蔵は明治時代の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)により、深泥池(みぞろがいけ)の畔にあった鞍馬街道近くから移されました。
鞍馬口地蔵
浄禅寺(じょうぜんじ)〔南区〕
文覚(もんがく)上人が開基。鳥羽地蔵の高さは約2.3mで、平安京のメインストリートだった朱雀大路から続く鳥羽街道に安置されました。
浄禅寺では、8月22日・23日のみ京都市の指定文化財である平安時代作の十一面観音像を特別公開しています
鳥羽地蔵
源光寺(げんこうじ)〔右京区〕
嵯峨天皇の第3皇子で左大臣の源常(みなもとのときわ)が創建したとも、源義経の母・常盤(ときわ)御前が居住した常盤院が起源とも伝わります。常盤地蔵は6体の中で一番小さな地蔵菩薩です。
鞍馬口地蔵が姉子地蔵と呼ばれるのに対し、一番小さな常盤地蔵は、乙子(おとご)地蔵と呼ばれています。乙子とは末っ子の意味です
常盤地蔵
地蔵寺(じぞうじ)〔西京区〕
桂大納言と呼ばれた源経信(みなもとのつねのぶ)の別邸が寺に改められたとされています。木の最下部から彫られた桂地蔵は、室町時代中期に七条通西の山陰街道口から現在の地へ移されました。
桂地蔵は、高さ約2.65mもある一番大きな地蔵です。そのことから「大きい=お姉さん」といった意味で「姉井地蔵」とも呼ばれています
桂地蔵
大善寺(だいぜんじ)〔伏見区〕
六地蔵発祥の地
705(慶雲2)年に法雲寺として創建。852(仁寿2)年に篁が彫った6体の地蔵を安置したことから、六地蔵と呼ばれるようになりました。伏見六地蔵は、真綿が蚕から作られることから、虫の供養の意味を込めて綿をかぶっています。
伏見六地蔵
徳林庵(とくりんあん)〔山科区〕
1550(天文19)年に創建。山科地蔵は東海道の守護仏として慕われてきました。
山科地蔵
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