京都ツウのススメ
第八十八回 妖怪紀行
- 其の一、
- 妖怪は、人間とは違う姿をし、不思議な現象を起こす存在とされています
- 其の二、
- 平安時代、鬼や物の怪(もののけ)と呼ばれた多くの妖怪が出没したと言われます
- 其の三、
- 古道具の妖怪が行列をなす百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)は、京都の一条通に伝わる話です
怪奇の舞台・京都に潜む妖怪
中国の都をモデルに造られた平安京は、南を九条大路、北を一条大路、東西を京極大路で囲まれた洛中と、その外側にあたる洛外から成る都市です。都の造営には風水が取り入れられ、北東の鬼門からは、人々を苦しめる邪悪な鬼や物の怪が来ると考えられていました。鬼門から程近い一条大路(現・一条通)界隈では、多くの妖怪が目撃されたと言われています。
一条通を行進する妖怪たち
平安京の北端にあった一条通は、洛中と洛外の境界で、この世とあの世を結ぶ鬼門のある方角から近いため、妖怪伝説が数多く残ります。
平安時代の康保年間(964~968 年)、人間に捨てられた古道具が、魂を得て恨みを晴らすために、妖怪・付喪神(つくもがみ)に化けて出没。鬼や狐、狼など様々な姿をし、船岡山(京都市北区)に住んで人間や家畜を襲って食べていたそうです。また、妖怪たちが深夜に一条通を行列をなして歩き、それを目撃した人は死んでしまうという百鬼夜行の伝説も語り継がれています。室町時代に登場した「百鬼夜行絵巻」には、行列の様子が滑稽に描かれています。
古道具の妖怪である付喪神たちは、自らを神の国に住むものとして神社を造り、一条通を行進する祭礼を行いました。これを百鬼夜行と言い、夜な夜な練り歩くようになったそうです。ある日、妖怪たちは関白の行列と鉢合わせし、関白が持っていた護符の力を恐れて逃げていったという話が残ります。それを聞いた天皇の命により、その護符を作った僧侶をはじめとする人々が妖怪たちのすみかに攻め入り退治したと言われています。
釜や下駄などの道具類は100年経つと魂を得て妖怪となり、人間に悪行を働くと言われます。その妖怪たちを総称して付喪神と呼びます。
人々は百鬼夜行に遭遇すると死んでしまうとされ、夜の外出を避けたり、妖怪に効くという呪文を唱え、魔除けの護符を持ち歩いたりしました
殺生を禁じられた僧侶が虫を追い払うために使用した法具。妖怪になった後、迷える生き物すべてを導くように後ろの妖怪たちを確認しながら歩きます。
昔は最も一般的な履物だった草履。履き古され妖怪になった草履は、歩かずに馬にまたがり行進をしています。
平安時代に中国から持ち込まれた楽器・琵琶。その音色を気に入った鬼が天皇が住む平安京内から盗み出します。時を経て琵琶は付喪神となり、琴の妖怪を引き連れて音を奏でながら行列を歩きます。
扇子は、平安時代に日本で生まれた道具です。和歌が書かれ、人の思いを宿した扇子は、この世とあの世の境界に出没する妖怪に変化し、風のごとく舞い踊ります。
東寺や北野天満宮で行われている古道具市は、付喪神になる前に捨てられた古道具を集めて神社仏閣で転売したのが始まりです
鬼の顔、虎の胴体、蜘蛛の足を持ち、口から糸を出して人をからめ捕って食べる土蜘蛛。京都には巣となる蜘蛛塚が3つあったとされています。武将・頼光が退治するために刀で斬りつけると、傷口から死人の首や無数の小さい蜘蛛が出てきたそうです。
頼光の家来・綱は、一条堀川の戻橋で夜遅くにひとりで歩く美女に出会い、馬に乗せてほしいと頼まれます。すると突然、女は鬼に姿を変えて襲ってきました。綱は少しも動じずに、鬼の腕を刀で斬り落とし、助かったと言われています。
正暦年間(990~995年)に、都では酒呑童子という鬼による誘拐事件が相次ぎ、朝廷から源頼光ら5人の武士が退治するため、鬼の住む大江山へ。そこで首領の酒呑童子が多くの鬼を従えて酒宴をしていたところを退治したとされています。
酒呑童子とは、平安時代に京都で暴れまわったとされる、日本の中で最大最強の鬼だそうです
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