京都ツウのススメ
第五十二回 京の塔
- 其の一、
- 仏教の伝来とともに、インド、中国、朝鮮を経て、日本にもたらされた建築物です
- 其の二、
- 仏教信仰のための塔は、次第に権力の象徴としても建てられるようになりました
- 其の三、
- 高い建物のなかった時代、塔はランドマークとしての役割も担っていました
塔の成り立ち
日本における「塔」の起こりは、古代インドの仏塔であるストゥーパだと言われています。ストゥーパとは、釈迦(しゃか)の仏舎利(ぶっしゃり)(遺骨)を納めたもので、寺の建築物の中でも特に重要なものでした。仏教は6世紀、インドから大陸を渡って日本に伝えられますが、塔が日本にやってきたのもこの頃。京都には長く都が置かれていたため、寺と同様、数多くの塔が建てられました。伝来当初は三重塔や五重塔のような中国の建築様式を取り入れた多層塔が多く建てられましたが、平安時代に密教が伝わると、円形の建物に四角い屋根の付いた宝塔や多宝塔が建てられるようになり、塔の形状も時代とともに移り変わります。近代以降は、都市のシンボルとして、宗教的な背景を持たないタワーも新たに登場しました。
ストゥーパは、中国では「卒塔婆(そとば)」、略して「塔婆(とうば)」と呼ばれていました。これが日本語の「塔」の語源とされています
塔の果たす役割
もともと仏舎利を納めた塔は、信仰のための建築物でした。時代とともに権力の象徴としての意味合いも持つようになり、天皇や将軍といった、時の権力者たちが自分の力を示すために、こぞって高い塔を建て始めたのです。昭和に入ると、京都タワーが登場。今では、京都のシンボルとして人々に親しまれています。また、背の高い建物がなかった頃、遠くからでも見える塔は、当時の人々にとって、目印となるランドマークとしても認識されていた、特別な存在だったに違いありません。
「八坂の塔」の名で親しまれる法観寺の五重塔は、聖徳太子が如意輪観音(にょいりんかんのん)のお告げによって建てたと言われています。幾度かの火災に遭い、1440(永享12)年、室町幕府第6代将軍・足利義教によって再建されました。現在の塔は、この時のものです。
高さ約55m、木造の塔としては日本一の高さを誇るこの塔は、嵯峨天皇より東寺を賜った弘法大師・空海が建立。落雷などで度々焼失し、現在のものは1644(寛永21)年に江戸幕府第3代将軍・徳川家光によって再建された5代目です。塔には空海が唐から持ち帰った仏舎利が納められているそうです。
平安京の南北に延びるメーンストリート・朱雀大路(現・千本通)を挟み、東側に建てられた東寺。対する西側には、西寺もありました。西寺にも同様の五重塔があったと言われ、この2つの五重塔は、都の入り口に立つシンボルだったと言えます
京都随一の観光名所である清水寺に立つ三重塔は、坂上田村麻呂の孫にあたる葛井(かどい)親王によって創建されました。高さは約31m、内部には大日如来がまつられています。度重なる火災に遭っていますが、その度すぐに建て直されたとみられ、古式を今に伝える重要な建造物です。
塔には、三重、五重、十三重など、奇数の層を持つものが多くあります。これは東洋の思想で、奇数が「陽=縁起の良いもの」とされているためです
室町幕府第3代将軍・足利義満が、自らの修行道場として建立した相国寺には、かつて七重塔がありました。高さは約109mと東寺の五重塔の約2倍もあったと言われ、将軍家の権勢を表すに足るものでした。1403(応永10)年に落雷により焼失し、再建後の1470(文明2)年にも焼失。現在は「塔之段」という地名のみが残っています。ほかにも、消失後再建されなかった塔として、後に衰退する法勝寺の九重塔(高さ約81m)がありました。1083(永保3)年に白河天皇が建立した、権力の象徴とも言える存在でした。
歴史ある京都の新しいランドマークと言える京都タワーは、海のない京都の街を照らす灯台をイメージして建てられました。京都市内の町家の瓦ぶきを波に見立て、京都を照らし続けるシンボル的な存在として人々に親しまれています。
京都タワーの高さは131mですが、建設当時、市が定めた建物の高さ制限(31m)があり様々な議論が起こりました。そこで、ビルの上に建物以外のもの(工作物)として100mのタワーをのせる形で、制限をクリアしました
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