京都ツウのススメ

第百回 夏の京野菜

[みずみずしい夏の京野菜で暑気払い] 平安時代より盛んに栽培された京野菜。京都の食生活の中心となり、健康祈願や年中行事にも使う夏の京野菜をらくたびの森明子さんが紹介します。

夏の京野菜の基礎知識

其の一、
海から遠い京都の中心地では、平安時代から野菜作りが盛んでした
其の二、
社寺へ献上される野菜が品種改良され、多くの京野菜が生まれました
其の三、
野菜を食べて健康祈願をするなど、野菜が主役の行事があります

旬の野菜にこだわる京都の食文化

京都の中心地は海から遠く、海産物が手に入りにくかったため、平安時代から盛んに野菜の栽培が行われていました。昼夜の気温の差が大きく、豊かな地下水に恵まれていることから、栄養価が高く、風味の良い野菜が生産されるようになりました。また、朝廷や社寺へ献上する野菜が全国から集まり、その野菜を品種改良した京野菜も登場。季節ごとに旬の野菜が使われ、野菜を中心とした食文化が育まれました。

野菜は夏の風物詩のひとつ

京都では、無病息災や家内安全などの願いを込めて、京野菜が主役となる年中行事が多くあります。7月には健康祈願のための「かぼちゃ供養」や「きゅうり封じ」が社寺で行われます。
また、暦や行事に合わせて旬の京野菜を使った料理を食べる行事食の習慣が残るほか、お盆には先祖の霊があの世とこの世を移動する乗り物・精霊馬(しょうりょううま)を野菜で作るなど、野菜は夏の風物詩に欠かせない存在です。

京都には、平安時代より朝廷の宮廷料理や社寺の精進料理、町衆のおばんざいなど、野菜中心の豊かな食文化がありました。上流階級へ献上する良質な野菜が求められ、農家では様々な改良や工夫を凝らして味の優れた京野菜を栽培しました。

京都には、平安時代より朝廷の宮廷料理や社寺の精進料理、町衆のおばんざいなど、野菜中心の豊かな食文化がありました。上流階級へ献上する良質な野菜が求められ、農家では様々な改良や工夫を凝らして味の優れた京野菜を栽培しました。

野菜のかご盛り

鹿ヶ谷かぼちゃ

万願寺とうがらし

賀茂なす

伏見とうがらし

京山科なす

伏見とうがらし

トウガラシの中では最も細長い品種で、別名「ひもとう」とも呼ばれています。古くから伏見を中心に作られ、江戸時代の書物に「山城の国、伏見辺りで作られたものが有名」との記述があります。辛みがなく栄養豊富で、夏バテを解消してくれる野菜としても知られています。

鹿ヶ谷かぼちゃ

文化年間(1804~18年)の頃、京都・東山の百姓が東北旅行の土産に菊かぼちゃを持ち帰り、鹿ヶ谷に住む農家へ渡して栽培するうちに、突然変異で今のひょうたんのような形になったと言います。煮物としてよく使われます。

ココがツウ 別名「おかぼ」と呼ばれ、明治時代中頃までは京都で食べられるカボチャの大半は鹿ヶ谷かぼちゃだったそうです

鹿ヶ谷かぼちゃの煮物
京山科なす

1865(慶応元)年頃に山科区で栽培され始め、明治時代には山科の特産品となりましたが、栽培が難しいことから、一時期は姿を消しました。近年、改良され、再び市場に出回るようになってからは京都でナスと言えばこれを指すほど、主流を占めています。皮が薄く、みずみずしくてがやわらかな肉質が特徴です。

万願寺とうがらし

大正時代に京都北部の舞鶴市万願寺地域で生まれたため「万願寺甘とう」という名が付き、伏見とうがらしと大型ピーマンを交雑して生まれたと言われています。辛みがなく肉厚で甘みがあり、焼き物・煮びたしに使われます。

賀茂なす

上賀茂地域の特産品。ヘタが3つのものが良いとされ、丸ナスの中では最大。煮炊きしても崩れにくく、賀茂なすの田楽は、京料理を代表する一品です。

ココがツウ 当初は京都市左京区で栽培していましたが、北区上賀茂、西賀茂の周辺でも作るようになり、その後主産地となった賀茂という地名が名前の由来とされています

鹿ヶ谷かぼちゃの煮物
まだある夏の京野菜ばなし ココがツウ
京みょうが

江戸時代後期、桃山江戸町(現・伏見区桃山)の農民・茗荷屋平兵衛が、地下水の湧き出ている所で野菜を見つけ、栽培したことから、ミョウガと名付けられました

聖護院きゅうり

天保年間(1830〜44年)以前から栽培されていたキュウリから発展した品種と言われています

お盆の京野菜
行事食

お盆には二汁五菜の精進料理を食べます。約300年前より栽培され仏前に供えられていた、柊野(ひいらぎの)ささげを使った「ささげとナスのごま和え」や「鹿ヶ谷かぼちゃの煮物」など旬の京野菜を調理したものが出されます。

柊野ささげ
行事食

お盆は、先祖の霊を迎えるための精霊馬をお供えします。4本の割り箸を足に見立て、馬で早く帰ってくるように「きゅうり馬」を、お供えものを積んで楽にゆっくり戻れるように足の遅い牛を表す「茄子牛」を作ります。

お盆は、先祖の霊を迎えるための精霊馬をお供えします。4本の割り箸を足に見立て、馬で早く帰ってくるように「きゅうり馬」を、お供えものを積んで楽にゆっくり戻れるように足の遅い牛を表す「茄子牛」を作ります。
制作:2016年8月
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第七回 特別拝観の楽しみ方
第六回 京都の着物
第五回 仏像の見方
第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方