京都ツウのススメ
第四十八回 京友禅
- 其の一、
- 国が指定する伝統工芸品のひとつで、江戸時代に考案された染色技術です
- 其の二、
- 筆で色を入れる「手描き友禅」と、型紙を使って模様を入れる「型友禅」があります
- 其の三、
- 仕上げに、金箔(きんぱく)や刺繍(ししゅう)を施す優美な意匠が特徴です
京友禅の歴史
江戸時代の元禄年間(1688~1704年)に、京都で活躍した扇絵師・宮崎友禅斎が確立したことから、「友禅染め」の名称が定着したとされています。当時は、奢侈(しゃし)禁止令というぜいたくを制限する法律が幕府から出されていたため、金や銀の刺繍や総絞り染めなどの豪華な着物が禁じられていました。そのなかで、絵筆で色鮮やかな図柄を描いた友禅染めの美しさが評判を呼び、裕福な町人の間に広がりました。奢侈禁止令が解かれた後は、それまでの友禅染めに金箔をはったり刺繍をしたりするなどの装飾が加わり、一層華やかなものへと発展します。
「友禅染め」は、京都・知恩院門前に住んでいた友禅斎の人気に注目した呉服屋が、小袖の図案(ひな形)を依頼したことから始まったといわれています
職人による分業の世界
京友禅は、図案の製作から仕上げに至るまで20近くもの工程があり、各工程は、下絵描きや色挿(さ)しなど、専門技術を持った職人によって行われています。そのため、工程全体を悉皆(しっかい)屋と呼ばれる、プロデューサー的な役割の人が管理しています。悉皆屋は、注文主のイメージ通りに仕上げるため装飾の入れ方などを決めるとともに、大勢の職人に適切な指示を出し、必要に応じて調整を行います。徹底した分業制によって高められた技術が集結することによって、世界的に見ても非常に優れた染色技術を持つ京友禅は完成するのです。
図案家によって描かれた絵をもとに、白い生地に下絵を写し、図柄ごとに色を染め分けていきます。色使いの多彩さ、仕上がりの華やかさから、染色美術の最高級品と言われ、京都は今も日本有数の産地です。
友禅染めの特色でもある多色染めのポイントとなるのが、色挿しと呼ばれる工程です。糸目糊(いとめのり)で絵の輪郭をなぞって、色が混ざらないようにした後、その内側に筆で丁寧に色を入れていきます。糊を洗い落とすと、その跡が白い線として残り、模様がはっきりと表現されます。
生地のベースを染める作業。柄の部分に色が入り込まないようにする伏糊(ふせのり)をした後、広い面積を大きな刷毛(はけ)で塗っていきます。ムラのない美しい仕上がりは、まさに職人技。
糊と余分な染料を水で洗い落とします。京都の川は良質の軟水だったので、明治時代以降は川で水洗いが行われていました。
かつては鴨川や堀川などで行われており、「友禅流し」と呼ばれる京都の風物詩でした。しかし、水質汚染が問題となり、昭和40年代半ばに姿を消しました
最後に金銀の箔を置いたり刺繍を施したりすることで、華やかで立体的な京友禅が完成します。
型紙を使って図柄を染める「写し友禅(現在の型友禅)」は、明治時代初期に手描き友禅の名匠・広瀬治助によって考案されました。量産化が可能になったことで、庶民にも広く「友禅染め」が普及しました。小さな文様からなる「京小紋」も「型友禅」の一種です。
明治時代以降、従来の草木染めにはない発色の化学染料が輸入されるようになりました。これに糊を混ぜて色糊を作ったことで、型紙による多色染めが可能になりました
図柄や染め分ける色の数により、型紙の枚数が変わります。複雑な図柄になると1,000枚もの型紙が使われることも。
御所車や扇など平安時代の文学をイメージさせる御所解き文様や、遠目にも映える図柄が好んで描かれます。
牛車をモチーフにした京友禅を代表する伝統文様。品格の高さを表す文様として、振袖や留袖などに用いられます。
宮中で用いられた木製の扇をかたどっています。優美な形と扇面の絵の美しさに加えて、末広がりの縁起の良い文様です。
複数の熨斗を和紙で束ねた文様は気品があり華やか。吉祥文様として振袖などに好まれます。
江戸時代の小袖や図案集など、京友禅の老舗・千總が所有する貴重なコレクションを展示。併設ショップ「SOHYA TAS」は和小物の販売も。
- ● 10時~19時 水曜休館
- ● 075-221-3133(SOHYA TAS)
- ● www.chiso.co.jp
- ● 三条駅下車 西へ徒歩約20分
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