京都ツウのススメ
第九十一回 京の庭園
- 其の一、
- 奈良時代に誕生した自然の風景を模した庭が起源です
- 其の二、
- 「池泉式庭園」「枯山水庭園」「露地庭園」の3つの様式があります
- 其の三、
- 鎌倉時代から現代まで、優れた作庭家たちが次々に現れています
庭の起源と変遷
庭は、奈良時代に自然の風景を模して造られたのが起源と言われます。平安時代前期には天皇や貴族が舟遊びなどを楽しむ寝殿造庭園が誕生し、後期には極楽浄土を表現した浄土庭園が流行しました。これらが池泉式庭園の原型と言えます。室町時代になると禅宗の教えが庭園の造り方に大きな影響を与え、水を使わずに白砂や石のみで構成した枯山水庭園と呼ばれる庭園が造られるようになり、京都の庭園史におけるひとつの頂点を極めました。一方、茶室を持つ住居には茶の湯の発展とともに露地庭園が登場します。そして安土桃山時代から江戸時代にかけて、建物の中からの庭の見え方に重きを置いた書院造庭園が造られるようになり、池泉式庭園の典型的な様式が武家社会に定着します。
作庭家に受け継がれて現代へ
京都に名庭が多い理由のひとつは、各時代の優れた作庭家の存在です。鎌倉時代の僧・夢窓疎石、江戸時代前期の茶人・小堀遠州、明治時代から昭和に活躍した小川治兵衛、昭和の重森三玲などが有名で、彼らの庭造りの精神や技術が後世に受け継がれているのです。
奈良時代に作られた大自然を模した広大な庭園は、池を中心とした池泉式でした。安土桃山時代や江戸時代になると、池の周囲に巨石や石組を配した豪華な庭園が武家の間でもてはやされるようになります。さらに明治時代にまでこの作風は受け継がれ、小川治兵衛ら近代庭園の流れを作った作庭家により、自然をそのまま背景とする借景庭園が多く生み出されました。
池泉庭園の楽しみ方には、池に浮かべた舟から鑑賞する舟遊式、庭の中を歩いて回る回遊式、建物から眺める鑑賞式などがあります
座禅によって自分の内なる心に向き合い、悟りを求めるという禅宗の教え。その修行の空間にふさわしい、高い精神性と芸術性が凝縮された庭が枯山水庭園です。白砂や石のみで構成された“無我の境地”のような空間を、海と島に見立てたり、空と雲に見立てたりと、観る人の感性ひとつで感じ方が異なるところが枯山水庭園鑑賞の魅力のひとつです。
仏教では、世界の中心にそびえる山を「須弥山(しゅみせん)」と言い、周囲を山と海が囲みます。枯山水庭園の石の配置は、それらを表したものです
室町時代、茶室を持つ住居へ通じる通路を露地と表記しました。つまり露地庭園とは、茶室に付属して設けられた庭のことであり、千利休は「露地はただ浮世の外の道なるに心の塵(ちり)をなぞ散らすらむ〈茶室への通路は現実から離れる道なのに、そこになぜ俗世間の妄念をまき散らしてしまうのだろう〉」と詠み、雑念を払って茶の湯を楽しむことを呼びかけました。そのため、静かな風情を残した飾らない庭園となりました。
池泉庭園の楽しみ方には、池に浮かべた舟から鑑賞する舟遊式、庭の中を歩いて回る回遊式、建物から眺める鑑賞式などがあります
枯山水庭園における最も重要な要素。石組の仕方には、各時代の宗教観が強く反映されていると言われます。
元は参道や境内を照らす役割でしたが、茶の湯の発展とともに庭園内の鑑賞物としての位置付けが強くなりました。
神前や仏前で口をすすいで身を清めるためのものでしたが、造形の要素として、庭園内に置かれるようになりました。
庭園の外にある山や竹林など、自然の風景を背景に取り込むことを言います。例えば、天龍寺の庭園は嵐山を借景としています。
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