京都ツウのススメ
第七十回 天神さん
- 其の一、
- 「天神さん」とは、菅原道真(すがわらのみちざね)をまつる神社のことです
- 其の二、
- 道真が優秀な学者だったため、学問の神様として信仰を集めています
- 其の三、
- 北野天満宮は、全国にある天満宮・天神社の総本社です
天満宮・天神社とは
全国におよそ1万2千あると言われる天満宮や天神社。神として菅原道真をたたえ、その神霊をまつった社を、天にいる神・天あまつ神から天満・天神と呼ぶようになりました。現在、京都や大阪では、道真のことを親しみを込めて「天神さん」と呼び“学問の神様”として敬っています。中でも上京区にある北野天満宮は、全国にある天満宮・天神社の総本社であり、「北野の天神さん」として広く信仰を集めています。
信仰される菅原道真
菅原道真は、平安時代に優秀な学者・政治家として活躍した人物でした。しかし、晩年には大宰府(現・福岡県)に左遷され、不運のうちに生涯を終えます。その後、宮中に災いが相次いだことが道真の怒りではないかと京の人々に恐れられるようになります。やがて朝廷から神としての称号が与えられるとともに、京都の北野に古くよりまつられていた雷神の信仰とも結び付き、天神様としてあがめられます。そして優れた才能の持ち主であったことから、学問の神様として信仰されるようになりました。
「御神像」 北野天満宮蔵
道真は幼少の頃から文才に優れており、5歳で和歌を詠み、11歳で漢詩を作るなど、優れた能力を発揮しました。18歳で当時の国家公務員試験のひとつ「進士」に最年少で合格。順調に出世し、55歳の時に右大臣に任命され、左大臣の藤原時平と並んで国家の政務を統括しました。
901(昌泰4)年、対立していた時平の謀略により大宰府へ左遷され、2年後、59歳でその生涯を終えます。やがて都では、道真を陥れた人物たちが相次いで亡くなったり、御所の清涼殿に雷が落ちたりするなどの災いが続いたため、人々はこれは道真の怒りだと恐れるようになりました。
「北野天神縁起絵巻・承久本」(国宝)北野天満宮蔵
京が雷雨に襲われた際、道真の屋敷があった桑原町(中京区)には雷が落ちなかったため、雷除けのまじないとして手を合わせて「くわばら、くわばら」と唱えるようになったと伝わります
清涼殿に落雷してから約40年後、道真の乳母をしていた多治比文子(たじひのあやこ)の夢枕に道真の霊が立ち「われを北野の右近の馬場にまつれ」と告げます。文子の家は貧しかったため、自宅の庭に小さな社を建てました。その後、近江神職の子である太郎丸にも同様のお告げがあったとされます。
道真を天神様として最初にまつったことから、天神信仰発祥の神社と言われています。
文子と太郎丸は、北野朝日寺の僧・最珍と相談して北野に小さな社を設けました。元々、この地には火雷天神という雷神をまつったお社があり、道真の御霊(みたま)はこの雷神の信仰とも結び付き、天神様として信仰されるようになりました。
全国の天満宮・天神社の総本社。国宝の本殿を含む社殿は、豊臣秀頼が造営したもので、当時のままに絢爛豪華な桃山文化を今に伝えています。
天皇をまつる神社に付けられる「宮」の位を、天皇ではない人物としては初めて、道真をまつる神社である北野に授けられました
平安時代から鎌倉時代初期には雨と水をもたらす雷神と重なって農耕の神や慈悲の神として信仰されました。江戸時代には学問や詩歌に優れた道真の人物像が注目されるようになり、学問の神様として庶民にも広まりました。寺小屋には道真の像が掲げられ、入学する子とその親が天神さんに参拝するという風習も広がりました。
梅の花をこよなく愛した道真。大宰府に左遷される直前、屋敷の梅に向かって和歌を詠んだと伝わります。この梅が道真を慕って一夜で京都から大宰府まで飛んで行ったという“飛梅伝説”も残ります。
道真が丑(うし)年生まれ、命日も丑の日であることから、牛は天神さんとゆかりの深い動物。道真のなきがらを運ぶ途中、車を引く牛が座り込んで動かなくなり、その付近で埋葬したなどの伝承も残ります。
この故事により、北野天満宮にある牛の像の多くが座った姿ですが、拝殿欄間の彫刻のみが立ち姿であるため、北野天満宮の七不思議のひとつとされています
菅原院天満宮(上京区)
道真が生まれた地と伝えられています。
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