京都ツウのススメ
第八十回 義士ゆかりの地・山科
- 其の一、
- 山科は京都の東の玄関口として栄え、忠臣蔵の舞台にもなりました
- 其の二、
- 赤穂義士たちは、吉良(きら)邸討ち入りまでの間、山科に隠れ住んでいました
- 其の三、
- 京都には、大石内蔵助(おおいしくらのすけ)(良雄)をはじめ義士ゆかりの地が数多く残ります
忠臣蔵のモデル・元禄赤穂(げんろくあこう)事件とは
1701(元禄14)年3月14日、天皇の使者を迎える儀式の日に江戸城松の廊下において、播州(現・兵庫県)赤穂藩主・浅野内匠頭(たくみのかみ)(長矩(ながのり))が名門出身の旗本・吉良上野介(こうずけのすけ)(義央(よしひさ))に短刀で斬りかかる事件が起きました。当時、城内で刀を抜くことは御法度(ごはっと)であったため、内匠頭はその日のうちに切腹を命じられました。そして赤穂藩は領地を没収され、浅野家は断絶となりました。これに対して、上野介はおとがめなしだったため、不服とする赤穂義士たちは主君の敵討ちを決意。事件から1年9カ月後の12月14日、真夜中に吉良邸に討ち入り、上野介の首を取りました。その後、幕府が義士たちを切腹に処したこの出来事を「元禄赤穂事件」と言います。
現在「忠臣蔵」と呼ばれるのは、この事件を題材にした浄瑠璃・歌舞伎の演目「仮名手本忠臣蔵」の影響とされています
赤穂義士たちが暮らした山科
山科は小さな盆地で、その中央に川が流れる自然豊かな地域。奈良街道と東海道につながる交通の要所として栄えました。江戸城での事件後、吉良邸への討ち入りを実行するまでの間、義士たちはこの地に隠れ住んでいました。
1701(元禄14)年の夏、吉良邸討ち入りの決意を胸に秘め、赤穂から山科へ移った大石内蔵助と一部の義士たち。この地を選んだのは、交通の良さと山科出身の赤穂藩士・進藤源四郎の縁故により、多くの土地を手に入れ住むことができたからと言われています。江戸へ出発するまでの1年余り、各地に住んでいた仲間も集まって秘策を考えながら、その時を待ちました。山科をはじめ京都には、討ち入りの密談をした寺院、あだ討ちの成就を願った神社などが現在も残っています。

赤穂藩の家老で、本名は大石良雄。浅野家断絶後は、再興と名誉回復に尽くしました。吉良邸討ち入りの際には、義士たちの指導者に。
- 毘沙門堂 びしゃもんどう
- 討ち入り後の義士たちの処分について、5代将軍・徳川綱吉は、毘沙門堂の僧侶・公辧法親王(こうべんほっしんのう)に相談します。そして切腹を命じたと伝えられています。
彼らが義士と称され慕われているのは、法親王が「望みを遂げた武士が切腹することは、人生の終え方として美しい」と武士の美学を語ったからだとも言われています
- 瑞光院 ずいこういん
- 浅野内匠頭の正室・阿久里ゆかりの寺。境内には、内蔵助が建立した内匠頭の墓や義士たちの遺髪を埋めた遺髪塚があります。
- 花山稲荷神社 かざんいなりじんじゃ
- 討ち入り成功を祈願したとされる神社。内蔵助が寄進した鳥居や、仲間の決意を試すために血判を押させた石など、ゆかりの物が残ります。
- 極楽寺 ごくらくじ
- 内蔵助が浅野内匠頭の位牌を納めた寺。義士の遺品も残されており、庭にある五輪塔は遺髪塚と伝えられています。
- 岩屋寺 いわやじ
- 山科を一望できる場所にあり、内蔵助が家を建て暮らしていました。本堂にまつられた大聖不動明王は彼がそばに置いて拝んだ仏像と伝わり、遺品も数多く残されています。
境内には、内蔵助が手植えしたとされる梅の木や、住んでいた家の古材で建てられた茶室・可笑庵があります
- 来迎院 らいごういん(東山区)
- 境内に独鈷水(どっこすい)という名水が湧くと知った内蔵助は、茶室・含翠軒(がんすいけん)を建てました。茶の湯を楽しむと同時に、ここで討ち入りの秘策を考えたと言われています。
- 法住寺 ほうじゅうじ(東山区)
- 仲間たちに連絡をする場所としても使われました。47人の義士たちと浅野内匠頭の木像が安置されています。毎年12月14日には「義士会法要」が行われます。
- 聖光寺 しょうこうじ(下京区)
- 討ち入りに必要な武器や資金を調達し、義士たちを援助した商人・天野屋利兵衛と、身を案じてここにかくまわれていた内蔵助の実母・池田熊子の墓があります。
- 第百九十八回 京都の山
- 第百九十七回 京都と豆腐
- 第百九十六回 南座と歌舞伎
- 第百九十五回 京都の巨木
- 第百九十四回 京都と将棋(しょうぎ)
- 第百九十三回 秋の京菓子
- 第百九十二回 京都の植物
- 第百九十一回 京都の風習
- 第百九十回 幻の巨椋池(おぐらいけ)
- 第百八十九回 京都と魚
- 第百八十八回 京都とお花見
- 第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
- 第百八十六回 京都の地ソース
- 第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
- 第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
- 第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
- 第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
- 第百八十一回 京都の中華料理
- 第百八十回 琵琶湖疏水と京都
- 第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
- 第百七十八回 京都と徳川家
- 第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
- 第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
- 第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
- 第百七十四回 京の難読地名
- 第百七十三回 京の縁日
- 第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
- 第百七十一回 京都の通称寺
- 第百七十回 京都とキリスト教
- 第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
- 第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
- 第百六十七回 京の城下町 伏見
- 第百六十六回 京の竹
- 第百六十五回 子供の行事・儀式
- 第百六十四回 文豪と京の味
- 第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
- 第百六十二回 京都のフォークソング
- 第百六十一回 京と虎、寅
- 第百六十回 御火焚祭
- 第百五十九回 鴨川の橋
- 第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
- 第百五十七回 京都とスポーツ
- 第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
- 第百五十五回 京都の喫茶店
- 第百五十四回 京の刃物
- 第百五十三回 京都の南蛮菓子
- 第百五十二回 京の社家(しゃけ)
- 第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
- 第百五十回 京のお雑煮
- 第百四十九回 京の牛肉文化
- 第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
- 第百四十七回 明治の京都画壇
- 第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
- 第百四十五回 ヴォーリズ建築
- 第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
- 第百四十三回 京の人形
- 第百四十二回 京の社寺と動物
- 第百四十一回 鳥居(とりい)
- 第百四十回 冬の食べ物
- 第百三十九回 能・狂言と京都
- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
- 第百三十六回 京都とビール
- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
- 第百三十四回 精進料理
- 第百三十三回 明治時代の京の町
- 第百三十二回 皇室ゆかりの建物
- 第百三十一回 京の調味料
- 第百三十回 高瀬川
- 第百二十九回 蹴鞠
- 第百二十八回 歌舞伎
- 第百二十七回 京都に残るお屋敷
- 第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
- 第百二十五回 京の学校
- 第百二十四回 京の六地蔵めぐり
- 第百二十三回 京の七不思議<通り編>
- 第百二十二回 京都とフランス
- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
- 第百十八回 京都の路面電車
- 第百十七回 神様への願いを込めて奉納
- 第百十六回 京の歴食
- 第百十五回 曲水の宴
- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
- 第百十三回 パンと京都
- 第百十二回 京に伝わる恋物語
- 第百十一回 鵜飼(うかい)
- 第百十回 扇子(せんす)
- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
- 第百七回 幻の京都
- 第百六回 京の家紋
- 第百五回 京の門前菓子
- 第百四回 京の通り名
- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
- 第百回 夏の京野菜
- 第九十九回 若冲と近世日本画
- 第九十八回 京の鍾馗さん
- 第九十七回 言いまわし・ことわざ
- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
- 第九十一回 京の庭園
- 第九十回 琳派(りんぱ)
- 第八十九回 京の麩(ふ)
- 第八十八回 妖怪紀行
- 第八十七回 夏の京菓子
- 第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
- 第八十五回 新選組
- 第八十四回 京のお弁当
- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
- 第八十回 義士ゆかりの地・山科
- 第七十九回 京の紅葉
- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
- 第七十六回 京のお地蔵さん
- 第七十五回 京の名僧
- 第七十四回 京の別邸
- 第七十三回 糺(ただす)の森
- 第七十二回 京舞
- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
- 第六十回 京狩野派
- 第五十九回 京寿司
- 第五十八回 京のしきたり
- 第五十七回 百人一首
- 第五十六回 京の年末
- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
- 第五十三回 観月行事
- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
- 第五十回 京の暖簾
- 第四十九回 大原女
- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
- 第三十六回 京都御所
- 第三十五回 京の通り
- 第三十四回 節分祭
- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
- 第二十七回 京の納涼床
- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
- 第八回 顔見世を楽しむ
- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方