京都ツウのススメ
第百八十回 琵琶湖疏水(びわこそすい)と京都
琵琶湖疏水(第1トンネル東口付近)
琵琶湖疏水が京都にもたらしたもの滋賀・大津から、京都・伏見や北白川へ流れる琵琶湖疏水。
疏水沿いの見どころや歴史的なエピソードを「らくたび」の森明子さんがご紹介します。
基礎知識
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其の一、
- 琵琶湖疏水は、びわ湖の水を京都へ引くための人工の運河です
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其の二、
- 明治時代に作られ、京都の近代化に大きく貢献しました
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其の三、
- 琵琶湖疏水の水は水力発電や上水道などに使われています
京都の近代化を目指して建設
1869(明治2)年の東京遷都で、京の町は人口減少や産業衰退に直面しました。復興を目指す政策として計画されたのが琵琶湖疏水。びわ湖の水を引き、水車の動力や舟運などに活用しようとしたのです。この大事業を推進したのが第3代京都府知事・北垣国道(きたがきくにみち)。若き土木技術者・田邉朔郎(たなべさくろう)らを登用し、1890(明治23)年に滋賀・大津から京都・蹴上を経て鴨川に合流する第1疏水と、蹴上から東山山麓沿いに北へ流れる疏水分線を完成させました。
水力発電、上水道などで京都を支える
第1疏水の工事期間中にアメリカで水力発電を視察した田邉朔郎は、琵琶湖疏水でも水力発電を行うことを決意。1891(明治24)年、蹴上に日本初の事業用水力発電所が造られました。発電量の増加や上水道整備の必要性が高まると、さらに第1疏水とほぼ並行して流れる第2疏水も建設され、1912(明治45)年に完成しました。琵琶湖疏水が送る1日あたり最大200万m³の水は25mプール約4,000個分に相当し、今も京都の人の暮らしを支えています。
東京遷都で活気を失った京都を復興させるため、
第3代京都府知事の北垣国道を中心に、
びわ湖の水を京都へ引く琵琶湖疏水が計画されました。
第1疏水
大津取水口~蹴上~鴨東運河~鴨川運河~伏見 [鴨川運河~伏見は1894(明治27)年に完成]
疏水分線
蹴上~南禅寺水路閣~北白川
第2疏水
大津取水口~蹴上[全線がトンネル]
地図はピンチイン・アウトで確認できます。
若い技術者を登用
当時の土木工事は外国人技師の下で行われていました。しかし北垣国道は、工部大学校(現東京大学工学部)を卒業したばかりの田邉朔郎を登用するなど、若い日本人主導で工事を行いました。
北垣国道
京阪電車と並行する鴨川運河
疏水を滋賀と大阪を結ぶ舟運に利用するため、第1 疏水と鴨川の合流点から伏見区堀詰町まで全長 約9 kmの鴨川運河が作られました。運河は京阪電車とほぼ並行しており、七条駅から南は地上を 流れているのを見ることができます。
【 日本初の事業用水力発電所 】
第1疏水で京都に供給された水は発電に使われ、紡績やタバコ産業などの動力に利用されました。1895(明治28)年には、日本初の水力発電の電気で走る電気鉄道も開通しました。
琵琶湖疏水は京都御苑の防火用水にも使われました。水は第3トンネル西口そばにある旧御所水道ポンプ室で汲み上げられ、1992(平成4)年まで送水が行われました
【 トンネルと扁額(へんがく) 】
トンネル工事には、山の上から垂直に穴を掘り下げる日本初の「竪坑(たてこう)工法」が採用されました。トンネルの出入り口や内部には、当時の政治家や工事関係者の言葉が刻まれた扁額が掲げられています。
【 高低差を解消するインクライン 】
インクラインとは高低差がある場所で舟を運ぶ傾斜鉄道。蹴上インクラインは水力発電の動力が使われました。伏見にもインクラインがあり、1943(昭和18)年まで使われていました。
【 水泳場にもなった船溜(ふなだまり) 】
荷物の揚げ降ろしや、人が乗降する場所を船溜と言い、山科や蹴上、南禅寺、夷川(えびすがわ)などに設けられました。1965(昭和40)年頃までは水泳場として使われたところもあります。
昭和40年代、疏水分線の一部区間に水道の原水を送る導水管を埋設する工事が行われました。これを機に、疏水分線沿いの道が整備され誕生し たのが「哲学の道」です
【 明治時代の建築物 】
琵琶湖疏水の工事とともに作られた建築物を今も見ることができます。
南禅寺水路閣
疏水分線が流れる水路閣は、南禅寺の境内に作られた全長約93 mの水道橋。設計者は田邉朔郎。
蹴上発電所
1912(明治45)年完成の第2期蹴上発電所の建物が保存され、毎週金曜日に見学会が行われています。
水のある眺め
山縣有朋の別荘・無鄰菴(むりんあん)に代表される東山の別荘群、永観堂や平安神宮などの社寺に、琵琶湖疏水の水を引き込み、庭園が造られました。
京都市動物園では琵琶湖疏水の水を園内に引き、動物たちのプールや噴水などに利用しています。
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