京都ツウのススメ
第四十九回 大原女
- 其の一、
- 平安時代、大原は若狭湾と京を結ぶ中継地点として発展しました
- 其の二、
- 比叡山延暦寺の麓(ふもと)に位置し、三千院や勝林院(しょうりんいん)など、天台宗の寺院が点在します
- 其の三、
- 独特の衣装を着た女性たちが京の町へ出向き、薪炭(しんたん)を行商する風習がありました
大原の歴史と地理
京都市中心部から15kmほど北に位置する大原は、のどかな田園風景が今も残る自然豊かな山里です。その地名は、平安時代初期の僧・慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)が修練道場として開山した大原寺(たいげんじ)に由来し、付近には皇族が代々住職を務めてきた天台宗三門跡寺院のひとつ三千院をはじめ、お経に節をつけた仏教音楽・天台声明(しょうみょう)の根本道場である勝林院などが立ち並びます。
舌がうまく動かないことを指す「呂律(ろれつ)が回らない」という言葉は、声明の音階である「呂」と「律」をうまく使い分けられないことから生まれました
大原女のふるさと
平安時代、平安京から遠く離れた大原は、文徳(もんとく)天皇の第一皇子でありながら皇位継承争いに破れた惟喬(これたか)親王や、平清盛の娘・建礼門院徳子、歌人・西行らが過ごした隠棲地でもありました。炭や薪(まき)などを頭にのせて京の町で売り歩く大原女の装束は、平家滅亡後、寂光院に身を寄せていた建礼門院の侍女・阿波内侍(あわのないじ)の着物姿が原型とも言われています。その存在は京都の風俗を記した江戸時代後期の書物「都名所図会」に描かれたり、壬生(みぶ)狂言の演目になったりするほど広く親しまれてきました。しかし時代とともにその役目を終え、昭和30年代には姿を消しました。
大原女とは、大原でとれた柴や薪、農作物などを頭にのせて京の町まで売りに歩いた行商の女性のことで、鎌倉時代から昭和初期まで、約800年にわたって続いてきた大原の風習です。時代とともに少しずつ装いに変化はありましたが、紺色の着物に赤いたすきを掛けた独特の装束で知られています。
彼女たちは往復20数kmもの道のりを歩くだけでなく、頭の上には通常で30~40kg、多い人では50kgにもなる荷物をのせて運んだと伝わります。
背中ではなく、頭に荷物をのせて運んだのは、柴など長さがあるものを進行方向と平行にのせることで、細く険しい山道を少しでも歩きやすくしたためと考えられています
5月に大原で行われる祭り。12日(土)の大原女時代行列では、室町時代・江戸時代・明治時代から昭和30年代に至る間、それぞれの時代に着用されていた衣装をまとった大原女姿の女性が、勝林院から寂光院までを練り歩きます。期間中は前日までの予約で大原女衣装が無料で貸りられ、誰でも行列に参加することが可能です。
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●5/1(火)~15(火)
大原女時代行列:12(土) 13時~15時頃
※ 雨天時は翌日 -
●075-744-2148(大原観光保勝会)
(日・祝・休日を除く10時~14時) - ●www.kyoto-ohara-kankouhosyoukai.net
- ●出町柳駅から京都バス 10・16・17系統、または叡電八瀬比叡山口駅から京都バス 10・16~19系統 大原下車
大原観光保勝会では、1年を通じ、大原女姿の体験が行われています。近隣のお寺や店舗などに大原女姿で訪れると割引などの特典を受けることができます。
- ●10時~14時 日・祝・休日休業
- ●2,000円 ※要予約
- ●予約・問い合わせは上記電話番号と同じ
京都には、大原女以外にも地元の産物を売り歩いた女性たちがいました。現在の左京区北白川周辺の「白川女(しらかわめ)」は、頭に切り花などをのせて行商していたことで知られ、西京区桂川周辺の「桂女(かつらめ)」は桂川でとれたアユなどを売り歩いていました。
- 白川女
- 紺木綿の着物の肩に手ぬぐいをかけ、友禅のたすきをかけた清楚な姿です。
- 桂女
- 髪を布で包んだ桂包(かつらづつみ)と呼ばれる髪型が特徴。
毎年10月22日に行われる時代祭では、大原女と桂女は中世婦人列で、白川女は白川女献花列で見ることができます
- 第百九十五回 京都の巨木
- 第百九十四回 京都と将棋(しょうぎ)
- 第百九十三回 秋の京菓子
- 第百九十二回 京都の植物
- 第百九十一回 京都の風習
- 第百九十回 幻の巨椋池(おぐらいけ)
- 第百八十九回 京都と魚
- 第百八十八回 京都とお花見
- 第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
- 第百八十六回 京都の地ソース
- 第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
- 第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
- 第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
- 第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
- 第百八十一回 京都の中華料理
- 第百八十回 琵琶湖疏水と京都
- 第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
- 第百七十八回 京都と徳川家
- 第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
- 第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
- 第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
- 第百七十四回 京の難読地名
- 第百七十三回 京の縁日
- 第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
- 第百七十一回 京都の通称寺
- 第百七十回 京都とキリスト教
- 第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
- 第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
- 第百六十七回 京の城下町 伏見
- 第百六十六回 京の竹
- 第百六十五回 子供の行事・儀式
- 第百六十四回 文豪と京の味
- 第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
- 第百六十二回 京都のフォークソング
- 第百六十一回 京と虎、寅
- 第百六十回 御火焚祭
- 第百五十九回 鴨川の橋
- 第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
- 第百五十七回 京都とスポーツ
- 第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
- 第百五十五回 京都の喫茶店
- 第百五十四回 京の刃物
- 第百五十三回 京都の南蛮菓子
- 第百五十二回 京の社家(しゃけ)
- 第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
- 第百五十回 京のお雑煮
- 第百四十九回 京の牛肉文化
- 第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
- 第百四十七回 明治の京都画壇
- 第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
- 第百四十五回 ヴォーリズ建築
- 第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
- 第百四十三回 京の人形
- 第百四十二回 京の社寺と動物
- 第百四十一回 鳥居(とりい)
- 第百四十回 冬の食べ物
- 第百三十九回 能・狂言と京都
- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
- 第百三十六回 京都とビール
- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
- 第百三十四回 精進料理
- 第百三十三回 明治時代の京の町
- 第百三十二回 皇室ゆかりの建物
- 第百三十一回 京の調味料
- 第百三十回 高瀬川
- 第百二十九回 蹴鞠
- 第百二十八回 歌舞伎
- 第百二十七回 京都に残るお屋敷
- 第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
- 第百二十五回 京の学校
- 第百二十四回 京の六地蔵めぐり
- 第百二十三回 京の七不思議<通り編>
- 第百二十二回 京都とフランス
- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
- 第百十八回 京都の路面電車
- 第百十七回 神様への願いを込めて奉納
- 第百十六回 京の歴食
- 第百十五回 曲水の宴
- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
- 第百十三回 パンと京都
- 第百十二回 京に伝わる恋物語
- 第百十一回 鵜飼(うかい)
- 第百十回 扇子(せんす)
- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
- 第百七回 幻の京都
- 第百六回 京の家紋
- 第百五回 京の門前菓子
- 第百四回 京の通り名
- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
- 第百回 夏の京野菜
- 第九十九回 若冲と近世日本画
- 第九十八回 京の鍾馗さん
- 第九十七回 言いまわし・ことわざ
- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
- 第九十一回 京の庭園
- 第九十回 琳派(りんぱ)
- 第八十九回 京の麩(ふ)
- 第八十八回 妖怪紀行
- 第八十七回 夏の京菓子
- 第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
- 第八十五回 新選組
- 第八十四回 京のお弁当
- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
- 第八十回 義士ゆかりの地・山科
- 第七十九回 京の紅葉
- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
- 第七十六回 京のお地蔵さん
- 第七十五回 京の名僧
- 第七十四回 京の別邸
- 第七十三回 糺(ただす)の森
- 第七十二回 京舞
- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
- 第六十回 京狩野派
- 第五十九回 京寿司
- 第五十八回 京のしきたり
- 第五十七回 百人一首
- 第五十六回 京の年末
- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
- 第五十三回 観月行事
- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
- 第五十回 京の暖簾
- 第四十九回 大原女
- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
- 第三十六回 京都御所
- 第三十五回 京の通り
- 第三十四回 節分祭
- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
- 第二十七回 京の納涼床
- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
- 第八回 顔見世を楽しむ
- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方