アートを感じる建物探訪
Vol.16
アサヒグループ
大山崎山荘美術館

京都西部の天王山の麓に位置し、木津川・宇治川・桂川の三川合流地を望むアサヒグループ大山崎山荘美術館。実業家・加賀正太郎が大正から昭和初期に築いた別荘で、木骨を見せるチューダー・ゴシック様式を取り入れたイギリス風の山荘意匠を今に伝えています。


証券業で成功した加賀正太郎が大山崎に惚れ込み
約20年かけて築いた、この地の象徴的存在
関西を拠点に証券業などで活躍した実業家の加賀正太郎が1912(大正元)年、24歳で別荘として建設に着手した大山崎山荘。若き日に訪れたイギリスのウィンザー城から眺めたテムズ川の記憶を重ね、3つの川が合流する景色が見られる京都・大山崎に土地を求めました。
館長の大西隆宏さんは、当時の加賀の心境をこう推測します。「山荘の背後には豊臣秀吉の天下取りのきっかけになった山崎の戦いゆかりの宝積寺があり、向かいには石清水八幡宮が鎮座する男山も望めます。家業を継ぎ、さらに事業を大きくしようと、縁起の良い場所としてこの地を選んだのではないでしょうか」。
本館完成は1932(昭和7)年。この時、加賀は44歳、約20年の歳月をかけて建てました。館内には加賀のこだわりが随所に見られ、ヨーロッパから取り寄せたという金が練り込まれたステンドグラスや、中国・後漢時代に墳墓を飾った画像石を使用した暖炉、京都府乙訓郡名産のタケノコを彫刻した室内装飾など、様々な意匠が施されています。タイルにも注目してほしいと大西館長は話します。「玄関ホールの暖炉や2階貴賓室のバスルームなど、珍しいものが使用されているようで、専門家も見学に来られます」。
加賀の没後、1989(平成元)年に山荘を取り壊す、大規模マンション建設計画が浮上。しかし、地元有志を中心に保存運動が展開、アサヒビール株式会社が行政と連携を取り復元整備に向けて動きました。
「大山崎小学校に寄付したり、町に桜を植えて景観を整えるなどした加賀は町民に相当慕われていました」と大西館長。大山崎の地を愛した加賀は、いつしか町からも愛される存在に。修復工事を経て1996(平成8)年に美術館として開館、さらに多くの人々に親しまれる場所となりました。

加賀が趣味の蘭栽培をしていた温室に続く廊下は、2012(平成24)年新設された新棟「夢の箱」への通路となっています。 
加賀夫妻の寝室は、現在は喫茶室に。テラスからは、八幡市の男山、京都南部から奈良の山々まで、雄大なパノラマを楽しめます。 
美術館として再生する際、建築家・安藤忠雄設計による新棟「地中の宝石箱」を増設。クロード・モネの『睡蓮』連作を常設展示しています。

2階喫茶室のテラスからの眺めがお気に入りです。どの時間帯も趣がありますが、朝日に照らされた川面がキラキラと輝く景色が好きです。
館長 大西 隆宏(おおにし たかひろ)さん
東京都出身。アサヒビール株式会社に入社後、営業や秘書などを経て、公益財団法人アサヒグループ財団で美術館の運営管理を担当。2024年6月より館長に着任。スタッフ全員で美術館の魅力や価値を生み出したいと意気込む。

アサヒグループ
大山崎山荘美術館
- 10時~16時30分(入館)
月曜(祝日は翌日)、
12/9(火)~19(金)・30(火)~1/3(土)休館 - 075-957-3123(総合案内)
- 京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3
- 枚方市駅からバス
JR高槻駅のりかえJR山崎駅下車
北西へ徒歩約10分 ※無料送迎バスあり
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KYOTO 大山崎店
ハーミット グリーン カフェ
キョウト おおやまざきてん

古民家を改装したカフェ。パスタやピザ、オムライスなどのほか、ウイスキーやビールといったアルコール類も充実。彩り豊かなフルーツが乗ったショートケーキやショコラムースなど、自家製スイーツも豊富です。
- 11時~21時30分(L.O.)
※月曜は16時(L.O.)
火曜、12/31(水)~1/3(土)休業 - 075-468-8737
- 京都府乙訓郡大山崎町大山崎明島15
- 枚方市駅からバス JR高槻駅のりかえ
JR山崎駅下車 南東へ徒歩約5分
SHIPPO COFFEE Yamazaki
シッポウ コーヒー ヤマザキ

住宅街の一角にたたずむ隠れ家のようなコーヒーショップ。豆は直火式の焙煎機で自家焙煎。深煎りのネルドリップコーヒーや「ワイニー水出し珈琲/650円」などで豆の旨味をじっくり味わうことができます。
- 7時30分~11時 15時~20時30分
※日曜は17時まで
不定休、1/1(木・祝)休業 - 京都府乙訓郡大山崎町大山崎高麗田6-8
- 枚方市駅からバス JR高槻駅のりかえ
JR山崎駅下車 南東へ徒歩約5分