京阪沿線でお気に入りのアートを見つけよう!
アートと巡る建物探訪
Vol.12
福田美術館
伊藤若冲や横山大観など、江戸時代から近代にかけての日本画家のコレクション約2,000点を有する福田美術館。建物は京町家のエッセンスを取り入れた日本建築で、神奈川県のポーラ美術館などを手掛けた安田幸一が設計しました。
展示室はコレクションを守る“蔵”をイメージ
大堰川のほとりに佇む和モダン建築の日本画美術館
嵐山や渡月橋が見渡せる絶好のロケーションに立つ福田美術館。建物は展示棟とカフェ棟がL字型に配され、敷地内の庭園と水盤に面した壁面は全面ガラス構造に。ここでは貴重な日本画はもちろん、嵐山を借景にした四季折々の自然の風景をガラス越しに楽しめます。
嵐山は京都市の景観規制が最も厳しい地区です。「建物に対する透明ガラスの割合は3割と規制されていますが、網代模様を施した白い部分を壁とみなすことで全面ガラスの建物が実現しました。これだけガラスを使った建物は、近隣ではここだけです」と副館長の竹本理子さん。展示室の出入り口の前のガラスはコレクションを守るために、自然光が差し込まないよう模様を密にするなど、網代模様もガラス1枚ごとにデザインが異なります。
展示室の壁に据えられた展示ケースは、1枚約4m幅の大きなガラスを使用。屏風や巻物もガラスの継ぎ目が気になりません。室内のライティングは光に弱い日本画に配慮し、明度はやや抑え気味。日本画鑑賞にふさわしい明るさで、障子に透ける光のような趣もあります。
そんな展示室は「大事なコレクションを守る」という意思を込めて蔵をイメージ。この意思は建物の随所に見られると竹本さんは続けます。「川のそばは本来美術館を建てるには不向きですが、水害対策として基礎を約1.5mかさ上げし、より高い位置に1階の展示室が来るよう設計しました。門扉の下には可動式の止水壁を埋設しています」。
美術館としての使命感に忠実でありながら、イタリア産の天然大理石を網代模様に組んだ室内壁など細部まで美しい意匠の福田美術館。「100年続く美術館」をコンセプトに、歴史ある景勝地に溶け込んでいます。
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6段からなる段差を水が流れる水盤。庭園にはモミジやアカマツなど、嵐山をはじめ京都の山に生える樹木や草花が植えられています。
カフェから嵐山の景色を見るのが好きです。美術館内はとても静かなので、観光地の喧騒とは無縁の別世界でお過ごしいただけるのでは。
福田美術館 副館長
竹本 理子(たけもと あやこ) さん
大阪大学文学部美学科卒業。外資系コンサルティング会社など経て現職。「自分の育った京都に美術館を建てて恩返しをしたい」というオーナーの思いに共感し、2016(平成28)年に福田美術館・嵯峨嵐山文華館に参画。
「京都の嵐山に舞い降りた奇跡!!伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!」
1月19日(日)まで
福田美術館
- 10時~16時30分(入館)
12/3(火)・30(月)~1/1(水・祝)休館 - 075-863-0606
- 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
- 嵐電(京福)嵐山駅下車 南西へ徒歩約5分
福田美術館周辺のアートの余韻を楽しむスポット
パンとエスプレッソと嵐山庭園
『エスプレッソと』パンとエスプレッソとあらしやまていえん
エスプレッソと
茅葺(かやぶき)屋根が目を引く築約210年の旧小林家住宅と、その周辺の建物を改修したベーカリーカフェ。古民家の雰囲気を感じながら、こだわりのパン5種類が味わえる「プレートセット/2,500円」などが楽しめます。
- 8時~17時(L.O.)
不定休 - 075-366-6850
- 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町45-15
- 嵐電(京福)嵐山駅下車 西へ徒歩約5分
儘まま
イタリア製の薪窯で香ばしく焼き上げたピッツァが人気の一軒家レストラン。賀茂ナスや京都ポークを使ったパスタ、ちりめん山椒や白味噌でアレンジした前菜など、京都産の食材を使ったメニューがそろいます。
- 11時~14時30分(L.O.)
18時~20時(L.O.)
※金~日・祝日の夜は17時から
不定休 - 075-366-3885
- 京都市西京区嵐山西一川町1-5
- 嵐電(京福)嵐山駅下車 南東へ徒歩約10分