アートを感じる建物探訪
Vol.14
大阪市立
東洋陶磁美術館

1982(昭和57)年に開館した大阪市立東洋陶磁美術館は、中国・韓国陶磁を中心に第一級の東洋の陶磁器を展示しています。2024年4月に約2年間の工期を経てリニューアルオープン。中之島公園の新たなシンボルとなりました。
稀代のコレクター・安宅英一の精神を継承
東洋陶磁が最も美しく輝く光を求めて
かつて大阪に存在した総合商社・安宅産業株式会社。会長の安宅英一氏(1901~94年)が会社の事業の一環として1951(昭和26)年から約25年にわたって収集した東洋の陶磁器の一大コレクションが、大阪市立東洋陶磁美術館の根幹をなす「安宅コレクション」です。その数は中国陶磁144件、韓国陶磁793件を主軸に965件に及び、国宝2件、重要文化財12件を含みます。
類まれなる審美眼を持っていたことで知られ、収集はもとより作品の見せ方にも細心の注意を払っていたという安宅氏。納得がゆくまで追求する姿から「1mm単位のディスプレイ」と称されていました。
そんな安宅氏の精神を受け継ぐ大阪市立東洋陶磁美術館。展示室は作品の性質により見せ方を変えていると、学芸員の因幡聡美さんは話します。「中国陶磁は力強くダイナミックな作品が多いことから、天井の高い展示室を使い開放感を演出しています。一方、韓国陶磁は自然で素朴な雰囲気のものが多く、作品に集中してもらうために不要な光をカットして、展示室内をやや暗くしています」。天窓から自然光を取り込んだ世界初にして唯一の自然採光展示室もあり、陶磁器本来の色合いや輝きを楽しむことができます。
この度のリニューアルですべての展示ケースの照明も一新。「自然の光に近い紫励起(むらさきれいき)LED照明を導入しました。陶磁器を見る環境としてはおそらく最も優れているのではないでしょうか」と自信をのぞかせます。
また、常滑(とこなめ)焼の焼締めタイルが貼られた外観の一部も改修し、ガラス張りのスタイリッシュなエントランスホールが誕生しました。太陽光が燦燦と降り注ぎ、すり鉢状の壁面に取り付けられた美しい弧を描く階段もひとつのアート作品のよう。新たな光を取り入れた東洋陶磁美術館の新時代が幕を開けました。
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内装は1982(昭和57)年の開館当時のまま、シックで上品なインテリアが印象的です。格子窓からは堂島川や遊歩道の木立が見えます。
天窓から外の光が差し込む2階ロビー。大理石張りの壁面の上部にあるのは韓国・三国時代(4~6世紀)に焼かれた「鴨形土器」です。 併設された「café KITONARI」では、ドリンク「紫紅釉盆(しこうゆうぼん)/1,000円」や「陶片クッキー/500円」など展示会とのコラボメニューも。
エントランスホールには、陶芸家の橋本知成さんが製作された陶磁製の椅子を設置しています。こちらもぜひ座ってみてください。
学芸員
因幡 聡美(いなば さとみ) さん
岡山県生まれ。筑波大学大学院修了、専攻は中国仏教美術史。2023年から現職につき、広報業務も担当。おすすめの所蔵品は「MOCO(美術館の略称)のヴィーナス」とも呼ばれる「加彩婦女俑(かさいふじょよう)」。
特別展
「CELADON―東アジアの青磁のきらめき」
11月24 日(月・休)まで
大阪市立東洋陶磁美術館
- 9時30分~16時30分(入館)
月曜(祝日は翌日)休館 - 06-6223-0055
- 大阪市北区中之島1-1-26
- なにわ橋駅下車すぐ、北浜駅下車 北西へ、
淀屋橋駅下車 北東へ徒歩約5分
大阪市立東洋陶磁美術館周辺の人気スポットでブレイクタイム
中島大祥堂 淀屋橋店なかじまたいしょうどう よどやばしてん

兵庫県丹波市の食材を使用したスイーツが楽しめる1912(大正元)年創業の老舗。大きな丹波栗をサクサクのパイ生地で包み、店内で焼く「くりまる/660円」をはじめ、小豆や黒豆などを使った和スイーツがそろいます。
- 10時~18時(L.O.)
不定休 - 06-6926-8152
- 大阪市中央区北浜3-2-23
- 淀屋橋駅下車 東へ徒歩約5分
cafe moonカフェ ムーン

築約100年の蔵を改装し、月をモチーフにしたインテリアが素敵なカフェ。「たまごサンド/300円」や「BLTEサンド/450円」など、ボリュームたっぷりの具材が特徴的。「揚げたてポテト/150円」とのセットもおすすめです。
- 10時~17時45分(L.O.)
不定休 - 06-6867-7006
- 大阪市北区菅原町7-2
- なにわ橋駅下車 北東へ徒歩約5分、
北浜駅下車 北東へ徒歩約10分