祝儀袋や結納飾りなど、冠婚葬祭につきものの水引。その起源は古く、盛んに用いられるようになったのは室町時代と言います。水引館では江戸時代から主に髷（まげ）を結うひもを製作してきましたが、明治時代以降、髷を結わなくなったことから新たな使用法として現在のような創作性に富む水引細工が考案されました。

そもそも水引は、細い和紙をこより状にして糊（のり）で固めたもの。現在は機械によって作られることがほとんどですが、水引館では昔ながらの方法で縒（よ）った和紙に、細い色糸を巻き付けて色鮮やかに仕上げているのが特徴です。

細工を手掛けるのは、この道一筋60余年になる伊予水宝（いよゆいほう）さん。先代の父のもとで10代から水引細工を作りはじめ、今では松竹梅などの定番飾りから、ハートやおひな様といったオリジナリティーあふれるデザインのものまで、多彩な細工を手掛けています。1本90cmの水引を巧みに操り、見る見るうちに立体的に編み上げていく様子はまるで魔法のよう。

儀礼の簡略化が進む現代にあっても、一点ずつ丁寧に作り上げられる水引細工は「真心がこもった贈り物を」と考える人から変わらぬ支持を受け続けています。