
第217回
京都の廃寺(はいじ)

第217回
京都の廃寺(はいじ)

樫原廃寺の調査の様子
京阪的京都ツウのススメ
第217回 京都の廃寺(はいじ)
廃寺となった京の古代寺院
京都には、たくさんの寺院がありますが、その陰にはすでに役割を終え、痕跡だけを残すものも数多くあります。
今回は、「らくたび」の若村 亮さんが失われた寺院の記憶に迫ります。
京都の廃寺の基礎知識
其の一、
廃寺とは、火災や経営難などで維持できなくなり廃止された寺院のことです
其の二、
京都には古代に創建され、廃寺となった寺院が多くあります
其の三、
京都の廃寺の中にはその遺跡を見ることができるものもあります
廃寺となった京都の古代寺院
火災や戦災、経営難などが原因で維持できなくなってしまった寺院のことを廃寺と言います。明治時代に仏像や寺院を破壊する「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」が行われたため、日本の多くの寺院が廃寺となりました。その一方で、京都にはこれとは別の理由で廃寺となった寺院もあります。仏教伝来以降、豪族は一族の精神的なよりどころとして寺院を建立しましたが、平安時代の中頃にはその勢力は衰退。それとともに廃寺となった豪族の氏寺が多くあります。
廃寺の遺跡が見られる場所も
桓武天皇による奈良の平城京から京都の平安京への遷都の理由のひとつは、奈良の仏教勢力から離れるためと言われています。平安京内に建立されたのは、都の鎮護のために朝廷が造営した東寺と西寺のみ。また、遷都以前に都の外に創建された豪族の寺院は存続が許されました。そのため、平安時代に廃寺となった寺院は平安京の域外に立っているものが多いと言えます。今回は京都の廃寺の中からいくつかをご紹介しましょう。
平安京の周辺にあった豪族の氏寺

たくさんの寺院が立ち並ぶ京都ですが、中には794(延暦13)年の平安京遷都以前に建立された寺院もあります。それらの多くは豪族の氏寺ですが、平安時代の中頃になると豪族の勢力は衰退。法観寺〈東山区〉や広隆寺〈右京区〉のように現存する寺院もありますが、これらの寺院の多くは荒廃し、やがて廃寺となりました。
北野廃寺(秦氏)
北区北野上白梅町
出雲寺(出雲氏)
上京区上御霊竪町付近
北白川廃寺(粟田氏)
左京区北白川山田町・大堂町
六道珍皇寺(鳥部氏)
東山区小松町
法観寺(八坂氏)
東山区八坂上町
樫原廃寺(秦氏)
西京区樫原内垣外町
古代豪族の寺院は、京都盆地を見下ろす山裾に建てられました。それは水はけが良く、聖地のように見られたからではないかと考えられています
北野廃寺(きたのはいじ)
現在の北野白梅町の交差点を中心に約200m四方の広大な寺域を保有していたとされる寺院で、京都では最古級とされています。奈良・法隆寺との関係を示す土器も出土しており、平城京との関わりが深い重要な寺院だったと考えられています。広隆寺の前身である秦氏の氏寺・蜂岡寺であったという説や、『日本後紀』に記載がある常住寺(野寺)だったという説があります。

現在の北野白梅町の交差点を中心に約200m四方の広大な寺域を保有していたとされる寺院で、京都では最古級とされています。奈良・法隆寺との関係を示す土器も出土しており、平城京との関わりが深い重要な寺院だったと考えられています。広隆寺の前身である秦氏の氏寺・蜂岡寺であったという説や、『日本後紀』に記載がある常住寺(野寺)だったという説があります。
北白川廃寺
(きたしらかわはいじ)
京都盆地の北側を見渡せる北白川の地に建てられていた北白川廃寺は、古代よりこの地に住んでいた粟田氏の氏寺とされます。出土した軒瓦から7世紀末に創建されたと考えられています。大きなお堂があったのが特徴で、その基壇※は東西約36m、南北約23mにもなりました。

梶川敏夫 作画
京都盆地の北側を見渡せる北白川の地に建てられていた北白川廃寺は、古代よりこの地に住んでいた粟田氏の氏寺とされます。出土した軒瓦から7世紀末に創建されたと考えられています。大きなお堂があったのが特徴で、その基壇※は東西約36m、南北約23mにもなりました。
北白川廃寺の発掘をきっかけに、周辺の地名は大堂町と名付けられました。また基壇※の外装の瓦積みが京都大学構内に移築されています

※建物の土台として周囲より高く造られた壇
樫原廃寺(かたぎはらはいじ)
京都市の西部、樫原。周辺には複数の古墳があり、かつて豪族の拠点であったと推察されます。当時、国内では見られなかった八角形の塔があったことから、朝鮮半島から渡ってきたとされる秦氏との関係が有力視されています。

梶川敏夫 作画
京都市の西部、樫原。周辺には複数の古墳があり、かつて豪族の拠点であったと推察されます。当時、国内では見られなかった八角形の塔があったことから、朝鮮半島から渡ってきたとされる秦氏との関係が有力視されています。
遺跡から出土した瓦には8枚の花びらがめぐるハスの花が刻まれていました。京都市考古資料館(上京区)ではそのデザインをあしらった「廃寺印」が販売されています(なくなり次第終了)


ナビゲーターらくたび 若村 亮さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2026年09月
