
第215回
神泉苑

第215回
神泉苑

京阪的京都ツウのススメ
第215回 神泉苑
祇園祭の発祥地・神泉苑
平安時代に宮中の禁苑として造営された神泉苑は7月1日から1カ月にわたり行われる祇園祭と深いゆかりをもちます。
今回は「らくたび」の森明子さんが神泉苑をご紹介します。
神泉苑の基礎知識
其の一、
神泉苑は平安時代、天皇や貴族以外は立ち入れない「禁苑(きんえん)」として造営されました
其の二、
神泉苑で、空海や小野小町など、歴史上の偉人たちが降雨を祈願したと伝わります
其の三、
平安時代中期、神泉苑で行われた厄払いの儀式が祇園祭の起源となりました
第50代桓武(かんむ)天皇が造営した「禁苑」
神泉苑は、794(延暦13)年、平安京を開いた第50代桓武天皇によって大内裏に隣接する「禁苑」として造営されました。「禁苑」とは、文字通り立ち入りが禁止された庭園のこと。つまり、天皇や貴族など高貴な人々以外は入れない特別な庭園でした。平安時代初期には、歴代天皇が行幸(ぎょうこう)や遊宴を行った歴史もあり、現在は、東寺真言宗のお寺になりました。洛中において東寺とともに平安京の創建当初から現存する、国指定の最古の史跡です。
京の夏の風物詩、祇園祭始まりの地
平安時代、弘法大師空海が神泉苑の池の畔で降雨祈願を成功させたと言われ、それ以来、神聖な場所に。863(貞観5)年、都の人たちを苦しめる元凶とされた“御霊”を鎮めるための「御霊会」を神泉苑で執り行いました。その6年後、神泉苑に祇園社<八坂神社>から神輿を送って厄払いを願ったのが、祇園御霊会(ごりょうえ)<現在の祇園祭>の起源となりました。今回は、祇園祭の始まりの場所と言える神泉苑をご案内しましょう。
祇園祭始まりの地への変遷
貴族のための優美な庭園から降雨を祈る霊場を経て、祭りの発祥地へ。神泉苑の歴史の変遷を見てみましょう
詩歌管弦を楽しむ舞台
794(延暦13)年、平安京大内裏の南東に造営された神泉苑。池や小川、木々が織りなす豊かな自然の中に宮殿が立ち、南北4町東西2町におよぶ広さを誇りました。40回以上も行幸したと伝わる第52代嵯峨天皇は、神泉苑で初めて桜の花見と詩宴の「花宴の節」を開催。以降、天皇や貴族たちは、舟遊び、魚釣り、鷹狩り、詩歌などの宮中行事や華やかな宴を神泉苑で楽しむようになりました。
池で羽を休めていた一羽のサギが、神泉苑に行幸していた第60代醍醐天皇の前でひれ伏したとか。それを喜んだ天皇から五位の位を授かったことが、「五位鷺(ゴイサギ)」の名の由来です

五位鷺

霊剣「鵜丸」の逸話を描いた都林泉名勝図会
『神泉苑御遊』
国際日本文化研究センター蔵
池で羽を休めていた一羽のサギが、神泉苑に行幸していた第60代醍醐天皇の前でひれ伏したとか。それを喜んだ天皇から五位の位を授かったことが、「五位鷺(ゴイサギ)」の名の由来です

五位鷺
降雨を祈った神聖な地
第53代淳和天皇の頃、都に日照りが続いたため、天皇の勅命を受けた弘法大師空海が神泉苑の池の畔で降雨を祈願。法力により雨を司る神・善女龍王を呼び寄せると、見事雨が降り出したと伝わります。以降、龍神が宿る神泉苑は、名僧たちが祈雨修法を行う国家的な祭祀の霊場に。苑内にある「法成就(ほうじょうじゅ)池」「法成(ほうじょう)橋」の名は法力が成功したこの逸話に由来します。歌人・小野小町も神泉苑に召され、雨乞いの歌を奉納しました。
室町時代初めの軍記物語『義経記』には、神泉苑での降雨祈願の際、100番目に登場した白拍子の静御前が見事な舞を披露すると、雨が降り出したと綴られています。美しい静御前の舞姿に見とれたのが、源義経(牛若丸)でした


室町時代初めの軍記物語『義経記』には、神泉苑での降雨祈願の際、100番目に登場した白拍子の静御前が見事な舞を披露すると、雨が降り出したと綴られています。美しい静御前の舞姿に見とれたのが、源義経(牛若丸)でした
祇園祭の始まり
都に疫病が蔓延した863(貞観5)年、朝廷は人々を苦しめる元凶と考えられていた御霊を鎮める御霊会を行いました。その6年後には、全国的に相次いだ疫病や天災を鎮めるため、当時の国の数と同じ66本の矛<剣鉾>を立て、祇園社<八坂神社>から神泉苑に神輿を送って厄払いをしました。これが祇園祭の起源で、後に山鉾が登場し、祭りが絢爛豪華になっていきました。現在では、祇園祭の還幸祭において八坂神社の宮司と神輿1基が神泉苑で拝礼を行います。
剣鉾は、疫病や厄災を招く神を宿して鎮める役割を持ちます。毎年5月はじめの神泉苑祭で境内に立てられる3本の剣鉾が、祇園祭の起源を今に伝えています

神泉苑の剣鉾 写真提供:神泉苑

祇園祭の山鉾
剣鉾は、疫病や厄災を招く神を宿して鎮める役割を持ちます。毎年5月はじめの神泉苑祭で境内に立てられる3本の剣鉾が、祇園祭の起源を今に伝えています

ナビゲーターらくたび 森 明子さん
らくたびは、京都ツアーの企画を行うほか、京都学講座や京都本の執筆など、多彩な京都の魅力を発信しています。
制作:2026年07月
